放送業界

BBCとNHK


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(BBCの人気報道番組「TODAY]のスタジオ風景)


等身大で見ると・・・

 一部従業員によるスキャンダル事件、受信料不払い運動、政治権力の介入問題など、NHKが日本で大きな話題になってから数ヶ月が過ぎた。

 時の権力の介入をどうするか?という観点から、メディア論、ジャーナリズム論、日本社会の構造にまで話は広がっているようだ。

 そんな中で、NHKとイギリスのBBCとの比較がなされることがある。同様に受信料(視聴料あるいはイギリスではテレビ・ライセンス料)が主な収入源であること、公共放送であること、など、確かに共通点が多い。

 しかし、NHKとの比較に限らず、BBCというと、日本では随分持ち上げられているような気がしてならない。確かに多くの優れた番組を放映、放送しているが、「日本と比べてことさら優れているのか?」というと、日本でも随分質の高い報道、ドラマなどがあり、甲乙つけがたい。嗜好の問題もあるだろう。

 日本では(あるいはイギリス以外の国で)神格化されているようなBBC。

 イギリスに住んでみると、全く別の側面が見えてくる。

 確かに、BBCは英国民から愛され、支持されてはいる。しかし、一方では、受信料という安定した収入源に支えられているという点をいいことに、例えばデジタル放送の分野にお金を使いすぎている、視聴率が低くても収入は変わらないのに商業放送でもできるような大衆受けする番組を作りすぎている、人気番組の亜流ばかり作っている、他のテレビ局の営業を規模で圧迫している、キリスト教徒に批判的過ぎる、政治・政治家を馬鹿にしている、メディアであるのに野党として振舞っている、傲慢だ、などの批判がある。それぞれに、真実をついている。

 視聴者がこうした様々な批判をするのに加え、シンクタンクなども、十分な調査の上に、BBCの「欧州連合に関する報道は否定的なものが多く、十分とはいえない」と結論づけた。BBCのイラク戦争の報道が偏っていた、とする調査結果まである。他のテレビ局のイラク報道とを比較したとき、英政府から出た情報を基にして報道をする割合がBBCの場合最も多かったそうである。

 ただし、政府の方は、BBCのイラク報道が政府寄りだったとは、思っていない。イラク人側の声を報道し続けたジャーナリストらを英国に帰すよう、プレッシャーをかけた、といわれている。辞任したBBCの元会長グレッグ・ダイク氏の著書「インサイド・ストーリー」によれば、ブレア首相自身もBBCのイラク報道に満足しておらず(政府側からすると、反政府、反イラク戦争過ぎるということらしい)、何とかして欲しいとコンタクトを取った、という。

 また、幻想化・神格化の1例として、BBCがいかに政府から独立しているかを過剰に強調する場合がある。

 確かに、BBCは「編集上」時の政府から独立し、時には対立することも辞さない。しかし、BBCの受信料の値上げ率、BBCの活動内容を規定する設立許可状、放送内容の自主チェックを行うBBC経営委員会及び経営委員長の人選など、様々な骨組み部分は、政府が決定している。

 また、通常の企業の社長職にあたる会長職は、政府とうまくコミュニケーションを取れる人であることが望ましいとされる。

 最終的に、BBCは及び時の政府は、英国のためにあるいは英国人のために良かれと思うことをやるわけだから、協力関係にあっても不思議はない。

 ・・と言った後で何だが、また別のレベルでは、BBCと時の政府はライバルでもある。BBCというよりも、新聞を含めたメディアが、といったほうが正確も知れないが。

 イギリスのメディアは、一種の野党の役目を果たしている。英メディアの中でも最大のパワーを持つのがBBCだ。つまり、政府とBBCの闘いは(闘いがあるとすれば、だが)、イギリスの2大パワーの権力争いでもある。

 イギリスのメディア・パワーは非常に強く、ちょっとでも政府があるいは他の権力団体が干渉、影響を与えようとすると、猛烈な抵抗にあう。おいそれとはいかない。

 BBCの話に戻る。

 1927年創立のBBCだが、現在は大きな変革期にいる。その資金調達体制、英テレビ界での位置が、これまでにないほど変わってしまうかもしれない時期に入りつつある。

 BBCの現状とそれに派生した事柄を、現場訪問、インタビュー、などからたどってみる。
by polimediauk | 2005-03-14 03:30 | 放送業界

ジャーナリズムの話いろいろ+欧州事情も


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