英国事情

予算、金融問題で騒ぎすぎる英メディア

 22日、ダーリング財務大臣が下院で予算案を発表した。成長率や財政赤字見通しを述べたほか、超リッチな人々への課税額を50%にまで上げるなど、もろもろの案があった。今日までに、メディアはほぼこの件で持ちきりだ。どこもトップニュース扱い。しかし、テレビやラジオにひんぱんに目・耳を傾ける自分が悪いのか、どうもなんだか騒ぎすぎている感じがする。

 予算案の発表後、メディアがかなりの紙面・放送時間を割くのは毎度のことなのだが、今回は、やれ赤字が増えた、成長率見通しが前と全く変わったなどなど、ここぞとばかりに野党・保守党が攻撃することに加え、ブラウン政権+金融危機の影響に不満を持つ国民におもねようというのか、批判のオンパレードだ。昨日も、BBCの朝のラジオ番組「TODAY」で、司会のエバン・デービスがダーリング氏に質問をし、じっくり聞かずに反論ばかりする。これはTODAYのスタイルではあるのだけれど、「生煮えの予算案ですな」と言い出し、ばかばかしくて、スイッチを切ってしまった。デービス氏は元々経済記者で、知識が豊富なのは分かるが、財務省もかなり時間をかけて予算案を作っているはずで、ジャーナリストであるだけで、けんもほろろに斬ってしまうのは、なんだか傲慢な感じがした。「本当に分かって言っているのだろうか?」と。

 夜はBBCのテレビ「ニューズナイト」で、経済専門記者が、いかに赤字が増えて、将来の世代が苦労するかを説明する。口からつばでも飛んできそうな勢いで、数字を連呼する。今晩の「ニューズナイト」でも、司会のカーシティー・ウオークが、ある議員に、予算案の細かい部分や、財務相の予想の数字がおかしい、「これでは誰も信用できない」とするのに、相手は一生懸命答えようとしていた。この議員が「今、重要なことは、経済が大変な状態にあること、そしてここからどうやって抜け出せるかだ」と言っても、どうも話が通じない。「予想はあくまで予想」という議員の説明が、すっと通じないのだ。

 「誰も将来のこと(経済の行き先)はわからない」-この単純なことを、どうして一部のメディアが分かろうとしないのか、不思議である。揚げ足取りばかりに熱中している。

 日本では経済に強い人が多いだろうから、こんなばかばかしいことは起きてはいないとは思うけれど、英国では、ついこの間まで(昨年秋以前)、金融+経済はほとんどトップニュースにはならなかった。現在のような事態が生じるとは誰もわからなかったし、予測していた人は「口を封じられていた」のである(英中央銀行の幹部が、チャンネル4「ディスパッチ」で証言、20日放送)。現在も、「本当は誰も予測できないだろう。これが本音だ。でも、何とか来年までにはかなり持ち越しているはずだ」ということを、データか、直観かで「感じている」人は結構いるのかもしれない。でも、そう言う人の声は、表に出てこないのだ。メディアの一部が過度にヒステリックだから。
 
 テレビやラジオを消して、一人でじっくり経済関連の本を読んだり、周りの人の雇用状況を静かに観察したり、ショッピングに出かけて売れ行き状況を見る・・・そんな行動のほうがよっぽど真実に近づけるのだろう。
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Commented by T-DOI at 2009-04-25 08:11 x
経済「学」とは、「支配者と労働組合の指導者」の「双子」のためにあると規定したのは吉本隆明です。では、「大衆の経済」とは何か?吉本は、「生活の中の実感」に従うことが、生活の経済を教えてくれると言う。金本位制およびその後継者としての米ドルの金兌換本位制は「各国政府が自由にマネーサプライをふやすことができない」という理由で、1970年代初めに廃棄された。だが、その後自由にマネーサプライを増やすことができて何かいいことがあったのだろうか。国際的な金融危機が発生する頻度は、明らかにドルだけが金との兌換性を維持していたころに比べて「ドル刷り放題」体制に移行してからのほうが高まっている。まさに、金本位制の「不自由さ」こそが高く評価される時代になりつつあるのかもしれない。大衆へ存在理由をプロパガンダする為の階級社会エリートの「政策論」だから反乱がおきても当然でしょうね。
Commented by elmoiy at 2009-04-26 08:29 x
>「誰も将来のこと(経済の行き先)はわからない」-この単純なことを、どうして一部のメディアが分かろうとしないのか、不思議である。

クリントン時代にアメリカでつくられた国際会計基準、あれも奇妙なシステムでしたね。
時価とは現在時点での将来予測に過ぎないわけですから。
土地でも株でも、みんながいっせいに売ろうとすると ものすごい暴落をするし、反対にみんながいっせいに購入しようとするとものすごい金額になります。唯一目安になりそうな金額は、固定資産税評価額と帳簿価格だけですが、そんな幻の数字を基に金の貸し借りをして経済をまわしていると、統計自体が信用できなくなるのではないでしょうか。
(かつて、社会主義国が出す統計は疑ってかかるというのが常識だった)
Commented by polimediauk at 2009-04-30 06:32
「かつて、社会主義国が出す統計は疑ってかかるというのが常識だった」・・直接関係があるわけではないのですが、この間、日本語が分かる英国人(元特派員)に、「日本の政府統計はでたらめだ」と言われました。あまりにも漠とした話に聞こえるかもしれませんが、その時は具体的に話してくれたのですが、頭が熱くなって、どれだったか忘れてしまいました(!!)。統計はどれも「しょせんは・・・」という部分があるのでしょうが、ひとからげに言われて、非常にどきっとしました。
by polimediauk | 2009-04-25 07:07 | 英国事情 | Trackback | Comments(3)

ジャーナリズムの話いろいろ+欧州事情も


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