新聞業界

テレグラフ紙が火をつけた政治とカネリスト、英地方メディア②新聞(下)

 テレグラフ紙が閣僚の経費に関わる情報が入ったリストを入手し、これを数日前から報道し、英メディアでは連日、政治とカネの問題が大きく取り上げられているようだ。テレグラフとガーディアンのサイトを見ても、報道合戦が続いている。英国にいる知人によれば、「毎日何かしらの暴露がある」。

 政治とカネ問題がクローズアップされる中で、一体どうやってテレグラフ紙がこのリストを入手したのか、入手時、情報の提供者にお金を払ったのかどうか(払ったとすればけしからんなど)に関しても議論が起きている。

 入手方法に関して特別な情報があるわけではないが、著名政治ブログに情報を出す人(金銭の支払いを要求したかどうかに関わらず)はたくさんいるようであるし、起きるべくして起きた感じもする。不景気で政治家のお金の使い方に不満を持つ人はたくさんいるから、どんな情報も「公益を満たす」と新聞が判断すれば、出せるし、部数も増やせる。
 
 今のところ、テレグラフ紙が情報提供者にかなりのお金を払ったという噂がある(ガーディアン紙など報道)。テレグラフ紙は富豪バークレー兄弟が所有者で、マルチメディア・ルームなど、かなりお金を投資してきた。お金のあるところが勝つのかな(部数を伸ばすという意味で)、とちらっと思ったりする。マードックしかり、である。

 最初、このニュースが大きく出たと聞いた時、「選挙戦が本格化しているな」と思った。保守党は今度の総選挙で勝つために、かなりの情報合戦をやっているのではないかと思う。「スピン(情報操作)はやめろ」と与党・労働党に言いながら、保守党は保守党でかなりやっている、と。もちろん、きれいごとではないのである。世論調査では保守党のリードが続いているが、まだまだどちらが勝つかは分らない。

 この件に関し後でも触れたいが、今日は、地方メディアに関して書いた記事(新聞協会報4月28日号掲載)に若干付け加えたものを出したい。地方メディアの危機は日本にもある。広告収入が減り、読者もネットに流れているしで、地方メディアは日英で苦しい状況にある。

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存続の危機―英地方メディア②
新聞(下):政府に異例の支援要請―広告出稿など提言 独立性を危ぶむ声も



 ジョンソン・プレス社のパリー元会長は2月26日付のフィナンシャル・タイムズ紙で「地方紙の凋落は広告収入の減少だけでなく、経営戦略の怠慢と、時代の変化を察知できなかった地方紙自体の責任でもある」と述べた。

 1990年代以降、好景気の英国では地方自治体の求人広告が地方紙に殺到し、住宅市場の拡大で不動産広告も急増した。この2つの市場がしぼみ始めた2007年、地方紙は「代わりになる収入源を考えていなかった」(パリー氏)。

 パリー氏はまた、①読者が新聞を毎日買う習慣をなくしている、②24時間更新されるウェブサイトでニュースを得ている、③より生活に密着したトピックを欲しているーといった環境の変化やニーズの変化に、「地方紙は気付かず、対応が遅れた」と指摘する。

 3月末、メディア編集団体ソサエティー・オブ・エディターズと地方新聞協会は、バーナム文化・メディア・スポーツ相に書簡を送り、国や自治体に対し、地方紙の本紙とサイトに広告を出すことなどを含む地方メディアへの支援策を提言した。

 独立独歩を信条とし、経営判断の結果を市場に任せることを慣例としてきた英新聞業界では異例の「政府頼み」だった。

ー「なくなっても構わない」か?

 4月8日ロンドン市内で開催された地方紙の将来をめぐるイベントで、イングランド地方南西部カンブリアのノースウェスト・イブニング・メール紙など、複数の地方紙の編集長だったサットン紙は「新聞の独立性に疑問が出る」と述べ、助成金という形での政府からの支援策には反対する姿勢を示した(筆者注:この点についてバーナム文化・メディア・スポーツ相は、政府による直接の財政支援は論外だとしている)。

 メディア評論家のグリーンスレード氏は、政府のプロパガンダ紙となる危険性はあるとしながらも、地方紙の発行停止で、地方自治体の議会の様子や裁判報道が消えた地域が複数あることを指摘し、政府による地方紙の支援は「1つの試みとして意義がある」と述べた。

 会場からは「地方紙がなくなっても構わないという人は多い」との指摘もあった。これに対してグリーンスレード氏は「たとえ少数でも重要な意見がある。地方紙は民主主義社会の基礎であり、その記事は社会の歴史の記録でもある」と答えた(続く:次回は放送業界)
by polimediauk | 2009-05-10 23:58 | 新聞業界

ジャーナリズムの話いろいろ+欧州事情も


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