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プロフィール・予定
在英ジャーナリスト&メディア・アナリスト。英国のメディア事情や社会・経済・政治事情を新聞業界紙、朝日新聞社「Journalism」、放送批評懇談会の「GALAC」、経済誌、WEBRONZAなどに寄稿。ニュースサイト「ニューズマグ」(http://www.newsmag-jp.com/)運営。著書は『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス (新書)』(共著、洋泉社)など。今年6月、一時帰国の予定です。取材執筆、講演などのご依頼は、ginkokoba@googlemail.comにご連絡ください。 ツイッター
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2009年 05月 17日
近くの図書館(都内)に行き、ある新聞に面白い記事があった。小さい囲み記事をコピーしようとしたら、申請(届け出?)書を書き込むように言われた。どの出版物の何ページから何ページをコピーするのかと名前を書きこむ。コピーをした後、随分厳しいように感じたけれども、図書館に数々の雑誌や新聞があり、やはりこれが売り上げを圧迫している、ということなのだろうか。著作権の問題もあるのだろう。知的所有権が守られていて良いのか、あるいは自由度が少ない(情報の流布を妨げる?)ということなのか、どちらか判別がつきにくかった。
**** アカデミー賞受賞の女優ケイト・ウィンスレットが、英語の発音と階級制度の深い結びつきを示唆する発言を、ある雑誌のインタビューで行った。熱い議論を巻き起こした発音と階級制度に注目した記事を、「英国ニュースダイジェスト」の5月14日号に書いた。以下はそれに若干足したものである。 7年ほど英国に住んで、最も困惑するトピックの1つが、自分にとっては階級制度(と発音)だ。口を開くと、その人のバックグラウンドが分かってしまう。多分、私の見たところでは、英国で階級制度(が存在すること)を忘れている人はいない。階級制度に対する強い自意識は英国南部で特に強いかもしれない。 著名女優の発言で議論沸騰 英語の発音と階級制度 ―「良い英語を話すから」差別された、とウィンスレット 今年の米アカデミー賞で主演女優賞と助演女優賞を受賞した、英女優ケイト・ウィンスレットが、先日、雑誌の取材の中で、周囲に中流階級と見なされることが多いと不満げに語った。そして、そう見られてしまう理由は「良い英語を話すから」と説明した。多くの英国人にとって、階級制度やこれと分かちがたく結びついている発音問題は大きな関心事で、テレグラフ紙(4月29日付)で紹介されると、「よくぞ言ってくれた。自分も迷惑していた」という支持派から、「巨額の収入がある女優ケイトは労働者階級じゃない」という批判派まで、多くのコメントがついた。 ―オーディションでの差別 雑誌「マリー・クレール」の取材に対し、ウィンスレットは自分が労働者階級だと人に言っても「信じてくれない。私が嘘を言っていると思ってしまう」と語っている。昔、あるオーディションに行ったところ、ウィンスレットのアクセントを聞いた監督は、出身地レディングの訛りがないので、ウィンスレットが嘘を言っていると決めつけた。「自分自身の人生に関して不誠実なあなたが仕事でも不誠実でないといいがね」と言われてしまった。当時10代のウィンスレットにとって相当に大きな衝撃だったのは想像に難くない。 ウィンスレットによれば、俳優だった父は一家を支えるのに苦労し、俳優の仕事が見つけられない時は郵便配達人やトラックの運転手として働いた。クリスマスツリーを売っていたことあり、「父は何でもやった」。両親は子供たちに愛情を注いでくれたが、貧しい家庭だったという。海外での休暇など論外で、ウィンスレット自身が地元のドラマ・スクールに入れたのも、チャリティー団体の奨学金を利用して実現できたのだった(それでも、私の見るところ、こうした貧しさがあったので=中流階級ではない、という見方は通らない感じもするけれども。生活に苦労する中流階級の人はたくさんにいるので。また、英国の中流は日本のいわゆる「中流」とも違うようで、「ちょっと上」という意味合いもあるようだ。) ―階級制度と発音 生まれ、教育程度、職業、富裕度など様々な要因から英社会はいくつかの社会的階層に分類できる。区分け方法には複数あり、「ナショナル・リーダーシップ・サーベイ」による、職業の種類でAからEに分類する方法や、業種をさらに細かく分けたONSによる8段階方式(下の説明を参照)などがある。一般的には、上流、中上流、中流、労働者階級、貧困層といったおおざっぱな分け方をすることが多い。 それぞれの階級は英語の発音・アクセントの面でも分かれる。貴族、紳士階級、土地所有者などが相当する上級は最も裕福な層で、「RP」と一般的に呼ばれる標準英語(下の関連キーワード参照)や、それよりもさらに音節をはっきりさせた歯切れ良い発音を使う傾向がある。上・中級は上流の発音や生活様式を模倣しようとし、中流はRPを基本に多少地元のアクセントを入れて話す。ブルーカラーの仕事に就く労働者階級は地元ならではアクセントを生かした英語を話す。 しかし、ここ数十年で、かつては主に中流家庭以上の出身者が占めていた大学進学が労働者階級出身者にも広がった。ブルーカラーの仕事を持つ両親の子供が大学に進学し、ホワイトカラーの仕事に就くといったことが珍しくなくなった。これによって人々の生活水準が上がると、教育程度、職種、富裕度で階級を定義づけすることが困難になっている。どんな発音・アクセントで英語を話すかでその人の階級や教育程度が現れてしまうのが常だったが、大学進学者の幅が広がると、地元のアクセントを残したままでも高学歴者である事態も生じてきた。発音と階級の結びつきがぼやけてきたのである。 また、かつてはイングランド南部のエリート層の発音を元にしたRPを厳守してきたBBCのアナウンサー職に、地域のアクセントも含めた様々な発音をする人が入ってくるようになった(私がBBCのアナウンサーの1人に聞いたところによれば、こうした変化は1970年代から徐々に起きてきたという)。RP=模範とするべき発音、という見方も薄れてきたのである。 ―なぜ労働者階級宣言をしたがるのか? それでも、標準発音やこれに近い発音をする人を一定の教育を受けた人物、あるいは中流階級(以上)の代名詞と見なす考え方は根強い。先のウィンスレットのオーディションの監督はまさにこういった考え方の持ち主だったと言えよう。 今回の「私は労働者階級なのに」とする発言は女優の一種の欺瞞と見る人もいる。巨額を稼ぎ、著名映画監督を夫に持ち、英国と米国に家を持つウィンスレットは本当に、旧来の意味で労働者階級と言えるのだろうか、と。 また、テレグラフの分析によれば(4月30日付)、俳優たちが労働者階級宣言をするのは、「労働者階級は地に足がつき、現実感があり」、経済活動を切り盛りし、「純粋、正直・・真実の具現」というイメージがあるからだという。労働者階級のルーツを忘れない俳優マイケル・ケインが他の俳優たちの間でうらやましがられるのはそのせいだ、と。 同紙のコラムニストは、同日付別の記事で、ウィンスレットは英国の既存の階級制度の分類を超え、有名人というカテゴリーに入ったのだから、異なる階級同士で卑屈感や嫉妬を引き起こしてきた階級制度のじゅばくから自分を解放するべきと書いた。英社会に深く根付くアクセントと自意識の関係を一考させる話題である。 ―関連キーワード: Received Pronunciation 直訳は「容認発音」。英国の伝統的な事実上の標準発音を指し、よくRPと略して呼ばれる。イングランド南部の教養ある階層の発音、英公共放送BBCのアナウンサーの発音(「BBC英語」)としても知られている。その元は19世紀、イングランドのパブリックスクールや大学で話されていたアクセントとされる。実際にこの発音で話すのは英社会全体の人口では2-3%だそうである。1920年代、BBCの初代理事長リース卿が英語には正しい話し方があるべきと考え、放送を通じてRPを広めようとした。現在までにRP自体及びBBC英語も変化を遂げているが、言語学者J.C.ウェルズ氏は外国人が英国で英語を学ぶ場合、RPをモデルとして学習するべきとしている。 ―ケイト・ウィンスレットのプロフィール 1975年生まれの33歳。イングランド南部バークシャー州レディング生まれ。祖父母、両親、叔父、姉、妹も俳優。地元の演劇学校に通い、1994年「乙女の祈り」で映画デビュー。「タイタニック」(1997年)のヒロイン役で一気に知名度を高める。最新作「愛を読む人」(アカデミー助演女優賞)と(と夫の映画監督サム・メンデスが作った「レボリューショナリー・ロード」(同主演女優賞)でダブル受賞。前者作品ではドイツ人を演じ、役作りの一環として子供が寝る前にドイツ語訛りの英語で本を読んで聞かせ、「お母さん、それじゃ意味が分らない」と苦情が出たと報道された。上品なアクセントを使うコスチュームドラマに多く出演してきたせいもあって、中・上流階級出身者と見なされるそうで、不満を雑誌の取材で漏らす。 *アッパーな発音の代表者 エリザベス女王 俳優ローレンス・オリビエ 俳優ジョン・ギールガット 俳優・タレント、スティーブン・フライ ロンドン市長ボリス・ジョンソン *労働者階級アクセントを自負する著名人 政治家ジョン・プレスコット 俳優マイケル・ケイン シェフ、ジェイミー・オリバー *米国人アクセントでがんばる英国人 俳優ヒュー・ローリー(米ドラマ「ハウス」) ―階級の分類 (主にウキペディア英語を参考にしました。) http://en.wikipedia.org/wiki/Social_structure_of_Britain *20世紀を通じて採用されていた階級区分 (「ナショナル・リーダーシップ・サーベイ」による) グレード:地位:職業 A:上・中流:高級管理職、専門職 B:中流:中間管理職、専門職 C1:下・中流:その下の管理職、専門職、ホワイトカラー職 C2:熟練した技術を持つ労働者階級:熟練した技術を持つブルーカラー職 D:労働者階級:ブルーカラー職 E:最も低い階級:低所得者、年金生活者ほか *2001年以降、細分化された区分け(ONSによる) グループ:職業:旧分類 1:高度の専門職、管理職:A 2:それより低い専門職、管理職:B 3:中間職:C1, C2 4:中小企業経営者、自営者:C1, C2 5:低度の監督業務、技術職:C1, C2 6:セミ・ルーティンの仕事:D 7:ルーティンの仕事:D 8:長期失業:E ー階級の内訳と特徴 (以前の別記事での掲載の再掲載。英紙数紙の紹介を元に作成。実際には解釈が広いので、あくまで目安。) 上流: 貴族、紳士階級、土地所有者など。先祖代々の土地や資産を受け継ぎ、国内で最も裕福な層。BBCのアナウンサーなどが使う発音で英語を話し、パブリック・スクールで教育を受ける。狩猟、乗馬などを楽しむ。ビジネスを嫌悪する傾向も。 上・中流: 教育程度の高い家庭出身で自分自身も良い教育を受けた層。アッパークラスの発音や生活様式を模倣しようとする。弁護士、医者、軍隊幹部、学者、官僚、株式ブローカーなど。文化的リーダーシップを取る。 中・中級: 上の階級よりは教育程度がやや低いブルジョアジー。地元企業の経営者、大企業の中間管理職など。BBC英語に少々地元のアクセントを入れて話す場合もある。 下・中流: ホワイトカラーに従事するが、大学には行かなかった場合が多い。多少地元のアクセントが入った英語を話す。 労働者階級: 農業、鉱業、工場勤務者、ブルーカラーの仕事に就き、地元のアクセントの英語で話す。教育程度はあまり高くない。サッカーや大衆紙を好む層とされる。 貧困層:低所得者か社会保険を受給している層。 ―ビジネスで好ましいと思うアクセントとは? 64%:特定の階級を想定させない中立なアクセント ―ビジネスで避けたいアクセント 86%:労働者階級のアクセント 49%:上流階級のアクセント *ビジネスの成功の象徴と思うアクセント(地域別) 77%:イングランド南東部「ホーム・カウンティー」のアクセント 73% :米国人のアクセント 63% :スコットランド人のアクセント 25%:インド人あるいは他アジア系のアクセント *成功していないことを象徴すると思われるアクセント 64%:リバプールのアクセント 63%:バーミンガムあるいはウェスト・ミッドランド地方のアクセント 52%;コックニーのアクセント 48%:イングランド南西部「ウェスト・カントリー」のアクセント (資料:Aziz Corporationが企業の経営者を対象に調査。それぞれ複数回答。 2005年) ※このブログはトラックバック承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
面白いですね。学校英語のせいか、私は労働者階級の英語は全く理解できず、途方にくれます。また、アクセントは財産の有無よりも教育の有無の方により関係しているではと思っていました。親の教育度とでもいいましょうか。 日本でもかなり階層分離が生じ始めてているような気がしています。できちゃった婚のごく若いお母さんと、一昔前までマル高と呼ばれたキャリア組のお母さんたちの話す言葉が全く違います。このままで行くと、その子供たちも全く違う言葉を話すようになるのかなと…一億総中流時代からの決別が言葉という形で表れているようです。 ところで、日本人の話す英語はどのように判断されているのでしょうね。 英国にいたとき、聴き取りで苦労した1人です…。 そのころの春先、木蓮(マグノリア)の花を見ていたら庭師のおじさんが話しかけてきたのですが、なんて言ってるか全く分からず、移民なのかな?と思って何度も聞き返して「なんて言う花か知ってるか?」という極めて単純な言葉、それも英国人のアクセントに違いないと分かったときはショックでした。 ジャッジ・ジョン・ディードを見ていて、強欲な建設会社社長のしゃべり方がwageを「ウヮイジ」、payを「パイ」というような雰囲気でしゃべっているのを効いて、ああ強調してるんだろうなあと思ったこともあります(正しい理解でしょうか?) 英国で言う「ミドルクラス」は、どうも文脈上かなり上の方な気がしますよね。 ところでRPは、BBCではたしか10年か20年前に標準としての地位を下げられ、むしろ多様なアクセントも尊重する方針になったと、ラジオかなんかで聞いた記憶があります。 さなえさん、 アクセントは教育の有無がやはり大きいですよね。お金がある=高等教育を受けられる・・・という意味では財産と教育が結びついていましたけど。 英国に行って、最初のころ、最も落ち着いて聞けたのは議員の英語でした・・・。これではいけないと思い、テレビやラジオもたくさん見たり聞いたりしましたが、お店の売り子の英語が分かりにくかったですね。今は開き直っていますが、分らないことは山ほどあります …日本人の英語は、一般的にですが、日本語の音の残りがありますよね、自分も含めて。おおざっぱには日本人はあまり英語がしゃべれないという受け止められ方をしている感じがしますが。印象論ですが。あるいはシャイでなかなか言えないとか。日本人で英国に住む人は他の移民に比べると少ないので、例えば中国人コミュニティーみたいな感じに特色あるグループとしては見られていない感じがします yasuomiさま ー簡単な英語がわからなかった時、本当に冷や汗+はずかしい感じがありますよね・・・。そういうことの連続体験の日々でした。 ーその建設会社の社長は、話がロンドンだったとしたら、コックニー系だったのかなあなんて思います。(あるいはオーストラリア系?)ペイがパイに近く聞こえたり、とか。 ーミドルクラスは日本で言うところの中流よりは上というか、感覚として「気取ったやつら」というイメージもありますよね。 ーBBCとRP.そうです!そう私も聞いています。地方のアクセントを生かすというか、社会の中の多様なアクセントを、公共放送として反映する方針に変わっていますね。英南部にいる私は北部の発音には日常あまり接しないので、やや耳にひっかかる感じがしますが。地方のアクセントが十分に分かるようになったら、もう「プロ」ですね。 英国英語の発音の仕方の研究を長年してきました。友人が英国でも話す人が3%だというRPを話すので、彼女の英語を研究したので、つまりはRPを研究しました。しかし、今では王室でも河岸英語(Estuary)を話すメンバーがいるくらいなので、RPはそうとう気取っていると感じられるようです。しかし、やはりRPは美しい英語です。当サイトの音声はすべてRPでその中でもposhと言われる発音なので、貴重です。 河岸英語(Estuary)を、わざと使うPRの話者もいるように観察しています。
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