ネット業界

英ブロガー、NightJackが実名報道でブログ断念

 ブロガーのプライバシーはどこまで守られるのだろうか?16日、今後の英ブログ界の一つの規範になってしまいそうな判決が出た。

 ランカシャー州の警官、リチャード・ホートンさん(45歳)――もう報道されてしまっているのだから、ここは実名でーーは、NightJackという名前で、自分の仕事に関わるエピソードなどをブログに書いてきた。約50万人の固定読者がいたという。今年4月には、優れた政治の著作に送られる「オーウェル・プライズ」という賞を受賞したぐらいで、大変人気があり、かつ内容も優れているというお墨付きがついていたといってよいだろう。

http://en.wikipedia.org/wiki/Orwell_Prize

 ところが、タイムズ紙の記者がホートンさんの個人名をブログの内容から割り出し、これを紙面で報道しようとした。報道を止めるため、ホートンさんは出版社に報道停止令を出すように依頼したが、裁判所の判断で、この願いは却下された。理由は、「ブログは基本的に、個人的な活動というより、公的な活動であり」、ホートンさんには匿名のままでいることへの(報道停止令が出せるほどの)「合理的な期待」はないと判断されたからだ。

 ブログの中で、ホートンさんは自分が関わった事件の捜査に関して(ただし具体的には分らないように)書いたり、政治家の数人を嘲笑したり、警察から捜査を受けている市民は、「司法体制や共に働く仲間に尊敬の念を見せない警察官には文句を言うように」などと書いた。もし実名が出れば、懲戒処分にあうことを理由に、ホートンさんはタイムズの報道停止を願っていた。

 今回の事件は、官庁や警察、病院などに勤務し、仮名を使ってブログを書くブロガーたちにとって、厳しい警告となった。

 現在、ホートンさんのブログは削除されている。また、ホートンさんは、書面での警告を上司から受け取ったという。これ以上の処分などはないと伝えられている。
 
 それにしても、こんなことがあっていいのだろうか?表現の自由に関わる問題ではないのだろうか?裁判官は頭が固いのではないか?タイムズの関連記事を見ると、「何で、報道したんだ?」、「おかげでブログが閉鎖された」など、怒りのコメントが多い。「何故?」といわれたら、やはり・・・お金か?どんな記者もスクープが欲しい。発行部数を増やしたい。オーウェル賞を取った人の実名なんて、かなりのスクープだ。しかし、下品なスクープでもあるだろう。おそらく、メディアの一部では、タイムズ以外に知っている人もいたのだろうから。あえて書かない、と。こういうことをすると、タイムズ=「やっぱり、マードックの新聞だなあ」と言われてしまう。

 実際のところ、一体、今後、お役所や政治家秘書で働いている人たちが、匿名でブログを書こうとしたら、やりにくくなるのではないか。既に匿名でやっていて、かなり人気のあるブログのいくつかが、これまた実名報道の後、閉鎖されるのでは、という懸念もある。

 もっと詳しく知りたい方は・・・。

http://www.guardian.co.uk/media/organgrinder/2009/jun/17/nightjack-blog-times-silenced

http://www.guardian.co.uk/media/2009/jun/16/anonymous-work-blogs
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Commented by yasuomi at 2009-06-19 09:26 x
難しい問題ですね。
「告発者」であれば、情報発信がリスクを伴う場合守られる必要があると思います。メディアから見れば「取材源保護」といえるのではないかとおもいます。
しかし「表現者」であるのならそれはpublicな圏内に身を置いたとみるというのは、少なくとも一般原則としてはアリだと思います。
今回はその両方の性格があるみたいですね。日本でも裁判官が匿名コラムを持っていることもあります。でも、独立した表現者としての性格が高まるほど、どこの誰かを隠すことは認められなくても仕方ないと思います。こんにちのブログが言論表現活動として認知され始めたことと表裏一体とも受け取れます。
だから、彼の場合どうなのか、私は今のところ結論づけるのが難しいと思っています。
なお、表現活動が露見して所属の警察組織から圧迫を受ける場合、本来、第一に批判すべきはその警察組織だと思います。危険を冒しての情報提供は保護されるべきですが、ただそれにとどまったのでは「社会への情報提供の多くが匿名での告発に頼られる」という構造を容認または拡大する危険をはらみます。
繰り返しになっちゃいますけど難しい問題です…
Commented by polimediauk at 2009-06-19 19:52
この問題は、いろいろ論点を整理しないといけないんでしょうね・・・。
ブログがこれだけ広まると、書く方としては、「いつまでも匿名は許されない」と考えるべきなのでしょうね。今のところ、ネット上での反応を見る限り〔全部見たわけではありませんが)、「どうして報道したのか?」という否定的な意見が目立ちます。

一定の数〔大きな)の読者がいるブロガーは「公人」なのか、「私人」なのか・・・・???
Commented by elmoiy at 2009-06-21 06:50 x
>タイムズ=「やっぱり、マードックの新聞だなあ」

小林さんにお伺いしたいのですが、The Economist、FTといった英国の高級誌(紙)は、80年代以降、発行部数を伸ばして世界中で読まれるようになりましたが、その代わりに質が低下したということはないのでしょうか?
バーバリーやウェッジウッドのような西欧の老舗高級ブランド企業は、生産コストを下げるために発展途上国に生産地を移転し(しかも生産地がどこであるか消費者には隠す)、コスト削減が限界に来ると品質を下げるようになりました。
サッチャー教育改革以後、英国の教育にも成果主義が導入されて、その結果校長が不正を働くという事件まで起きたそうですが、知的な分野でも
質の低下が起きているのでしょうか?

ttp://blog.goo.ne.jp/polyhedron-f/e/0d4a379924b2c158774897cc50c22b7d
破綻寸前 イギリスの全国学力テスト
Commented by polimediauk at 2009-06-21 08:30
elmoiy さんは鋭いですね。そういう視点から考えてみたことがありませんでしたがー。ただ、そう見る人はこちらの外国メディアにはいるようですね。エコノミスト編集長に対して、「米国の読者向けに、文章を分りやすいようにしている、あるいはおもねる書き方(米国の政府を支持するようななど)をしているのではないか」という質問をする人を良く見かけます。

学力テストの記事、じっくり読んでみます。
Commented by elmoiy at 2009-06-21 13:36 x
>米国の読者向けに、文章を分りやすいようにしている

やっぱりそうですか。日本でもこのような指摘をしている方がいますが。

ttp://www.the-economist.biz/archives/50897028.html
読みやすい英語で書かれている
ttp://www.the-economist.biz/archives/50891362.html
The Economistの発行部数
ttp://www.the-economist.biz/archives/50891216.html
たまに、情報源を確認していない

グローバル化はどんな分野でも、質の低下と画一化を招きますが、英国の大学までもがアメリカのように、実学志向、論文生産競争の場と化してしまったら哀しいですね。ちなみに現在の日本の大学は、戦前の産学協同が産学軍共同になって全体主義体制に突っ込んでいったという反省から、あえて産業界と距離を置いてアカデミックなものにしようとしたそうです。
Commented by polimediauk at 2009-06-24 19:54
elmoiy さん、

ー教育の記事、あたっている感じがします。
ーエコノミストの記事の指摘、ありがとうございます。今日のエントリーにも入れてみました。

 このエコノミストのサイトの方は、非常によく読んでいますね。1990年代から変わったとは思いませんでした!!「米国の読者向けに・・」というのは、米政権(ブッシュ)におもねる文章になっているのでは、という疑問もあるようです。

一種のグローバル化ですよね、おっしゃるように。しかし、これを悪いこととするか、良いこととするかはまた別問題かも。エコノミストの場合、「わかりやすく」なったとしたら、そのほうが良かった感じがします。アカデミック・大学は問題があるかもしれませんが、エコノミストの場合、あくまでも人に論旨を伝えることがもく的なわけですし。象牙の塔ではあってはならない部分もあると思います。
by polimediauk | 2009-06-18 18:03 | ネット業界 | Trackback | Comments(6)

ジャーナリズムの話いろいろ+欧州事情も


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