小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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ロンドン無料紙戦争の終わり?

 ロンドンの無料夕刊紙「ロンドンライト」が近く廃刊となる見込みだ。経営陣が27日、スタッフに伝えた。編集スタッフにとっては寝耳に水だったようだ。

 ガーディアンやプレスガゼットなどが伝えたところによると、

http://www.pressgazette.co.uk/story.asp?sectioncode=1&storycode=44526&c=1

http://www.guardian.co.uk/media/2009/oct/27/london-lite-associated-newspapers

http://www.guardian.co.uk/media/organgrinder/2009/oct/27/london-lite-closure-newspaper-market

 ロンドンライトの廃刊見込みのニュースは夕刊有料紙だったイブニング・スタンダード紙が無料になってからほぼ2週間後、そして、ライバルだった夕刊無料紙ロンドンペーパーが廃刊となってからほぼ一ヶ月後となった。ロンドンの無料紙市場は残すところ朝のメトロと夕刊のイブニング・スタンダードだけになってしまう。もともと、無料紙戦争はロンドンライト(アソシエーテッドニューズペーパーズ社)とロンドンペーパー(マードックのニューズインターナショナル社)との間の戦いを指していたので、無料紙戦争は事実上終えんにむかう。

 両社の経営陣は、経営が成り立たなくなった、見合うだけの広告収入がないなど、やはり経営上の理由で廃刊を決めたようだ。プレスガゼットによれば、ロンドンライトの赤字は毎月1000万ポンド(約14億8000万円、ただし新聞が赤字と言うこと自体は珍しくないが)。

 ロンドンペーパーは約50万部を配布スタッフが路上で道行く人に配っていた。ロンドンライトは約40万部。まず先の50万部が消えた。次に40万部が消える。一方のイブニング・スタンダード紙は有料(1部50ペンス)では25万部ほど売っていたが、無料にしてからは60万部が配布されている。

 ロンドンのウオータールー駅でスタンダードの販売スタンドにいて、約1300部を毎日売っていた男性がいた。この駅に来るたびに売れ行き具合などを聞いていたが、ここ数週間で姿が見えなくなっていた。そして、無料になることが発表された。人員削減の対象になったのかもしれない。無料だから特に販売のスキルはいらないし、ただ手渡すだけなんだから、お金の管理がいらなくなった。こんな仕事では今までの販売員はいらないだろうし、有料で売ってきた販売員からしたら、おもしろくないというか、ただの配布人なんて、いやだろうな。

 イブニングスタンダードはまた有料になる・・・という噂(陰謀説)がツイッターで流れたらしいが。
by polimediauk | 2009-10-28 19:13 | 新聞業界