ウィキリークス

内部告発サイト「ウィキリークス」Wikileaksが、アフガン戦争機密書類公開:「戦争全体を現す」のが目的

 昨晩、ツイッターを見ていたら、「アフガン戦争の米軍機密書類が大量に公表された」「内部告発サイト、ウィキリークス(Wikileaks)が暴露」といったつぶやきが、ガーディアンやチャンネル4などのアカウントから続々と流れてきた。

 何でも、9万2000点という大量の米軍機密書類が、数週間前に米ニューヨークタイムズ、独シュピーゲル、英ガーディアンにウィキリークスを通じて渡され、26日に(月曜日付けに直しました)各紙が一斉公開したという。

 アフガン戦といえば、2001年に開戦したものの、タリバン勢力を制圧どころか、一人また一人とゲリラ戦で米英兵士が命を落としているのが現状の、にっちもさっちも行かない状態。参戦している政府側にとっては、さぞ自国民から隠したい情報が多いだろうと思わせる戦争である。

 さて、日本のメディアはどう報じるのだろうと楽しみになった。今朝、新聞社の電子版を見ると、ワシントン発のいくつかは、米政府の側に立って、「けしからんことが起きた」というスタンスであるーというか、新聞社の意見らしい意見は皆目見当たらないのだが(紙の新聞には出ていた可能性が大だが、私は無料サイトの速報のみ見た)、米政府の反応(=けしからん)をそのまま、そっけなく伝えることで、足場を米政府側に置いたように見えた。AFPは、情報を肯定的な文脈で伝えているようだった。

内部告発サイト、米軍機密資料9万2000点公表
http://www.afpbb.com/article/politics/2742943/6012373

内部告発サイト「ウィキリークス」とは?創設者が語る「使命」
http://www.afpbb.com/article/politics/2743297/6012826

 英国で力が入っているのが、情報公開の3つの新聞の1つに選ばれた、ガーディアンである。日本時間の午後9時(英国の昼1時)から、調査報道記者デービッド・リー氏がサイトを通じて読者の質問に答える、というコーナーまで作っている。(質疑応答は以下。)

http://www.guardian.co.uk/world/2010/jul/26/afghan-war-logs-david-leigh-webchat

 ウィキリークス創始者ジュリアン・アサーンジ(アッサンジ、Julian Assange)
氏の会見の様子が、昼ごろ、ユーストリームで配信された。(以下のウェブサイトで、後でも録画が見れるようになるかもしれない。http://frontlineclub.com/)
時々途切れがちになったので、ほんのメモ程度などで私が拾ったのは以下である。質問は会見場にいた記者で、答えがアサーンジ氏。答えの順序は若干入れ替わっている(メモの紙の順番がごっちゃになったのでー)。***

―公開した情報の信憑性は?
 これまでやってきたように、情報源や内容の信憑性を確認している(ので大丈夫)。

―低レベルの情報だったのではないか?最高機密は含まれない内容だが?
 今回の情報に含まれていないものは、最高機密=トップシークレット、特殊部隊に関わる情報、CIA情報などだ。通常の米軍の活動を公表した。

―あえて出さなかった情報があるか?
 ある。少なくとも1万5000の情報がある。

―米政府があなたに関わる情報を出身国であるオーストラリア政府から得ようとした動きはあるか?
 ある。オーストラリア政府は常に拒否している。

―今回の情報で、特にこれだ!という情報は何になるか?
 一つのこれだ!というのは、ない。しかし、戦争全体を現している。小さな出来事の積み重ねによる戦争の全体像だ。例えば、181人のアフガンの民間人が米軍による攻撃で亡くなった事件など。

―新聞社との協力体制を教えて欲しい。
 米ニューヨークタイムズ、ウィキリークス、英ガーディアン、独シュピーゲルと協力し合い、いつ情報を公開するかを決めた。ガーディアンで糸口になったのは、調査報道記者のニック・デービス。そして、各紙の編集長と話を進めた。

―英国はウィキリークスにとってどんな意味合いを持つか?
 英国はご存知の通り、監視社会だ。しかし、その一方では、活発な政治ジャーナリズムとこれを支える人たちがいる。西欧社会、そして英国で、自分がウィキリークスの活動のために逮捕される可能性はないと思う。

―米国防省は機密を公開したことで、国防に悪影響が出る、と言っているが。
 米政府が軍に関する情報を出したがらないのは、2つの理由があると思う。1つは、関係者が軍法裁判にかけられること、もう1つは不正を隠すためだ。日々の軍事行動に関わる機密情報は、消え行く存在(=古くなる)だと思う。今回の公表は2004年から2009年末までに関わる情報だから、悪影響はないと思う。

 私が今着ているTシャツには、ノルウェー語の文句が入っている。ノルウェーで雪が積もり、不正を隠そうと思ってその深い雪の中に入っていても、(いつか雪は消えて)真実が明るみに出る、と意味をあらわしている。

 今回の情報は、かつての「ペンタゴン文書」(ベトナム戦争に関する極秘文書、1970年代に公表され、物議をかもす)に匹敵すると思う。しかし、こちらのほうが情報量がはるかに大きい上に、(米国とベトナムのみではなく)はるかに大きな読者層を相手にしている。また、インターネットで公開しているので、人々はコメントを残せる。

―ウイキリークスと政治圧力との関係は?
 個人から集めた資金で運営されているので、政治勢力からは独立している。しかし、同時に、大衆にその活動の説明責任が生じると思う。

―情報の価値とメディアについて
 今回の情報はアフガン戦争の6年間の軌跡だ。例えば、米国の部隊ごとにアフガン人何人を殺害したのかの数字を作成し、これを政府発表の数字とを比較する手がある。大きな、戦略図を壁に描くことができるーやってみてはどうだろうか。

―米軍関係者からのリークが多いようだ。英軍関係者からはないのか?
 たくさんある。ちなみに、英国防省はリークを防ぐために、BTに頼み、同省内からウィキリークスへアクセスできないようにした。

 また、独の情報機関から、コソボでの汚職疑惑の情報を出すなと言われたことがある。裁判に訴えるぞ、と。「どうぞ訴えてください。どんな法律に違反したことになるのでしょうか?」と聞いたら、訴追は起きなかった。

―実際に、今回の情報公開のために、米軍などで犠牲者が出たらどうするのか?
 何故そうなったのかを見て、問題があったら、これを直したい。必要に応じてポリシーを変える。

―何故今回、新聞社だけに限って情報を公開しようとしたのか?何故放送業者に声をかけなかったのか?
 私はもともと、紙媒体のジャーナリストなのでー。今まで番組放送をしたことがないので。今後は考慮する。

―どれぐらいの人数で作業を行っているか?

 「非常に小さい数」といっておきたい。これに、800人のボランティアがいる。支援者は数万人規模だ。***

 ガーディアンの特集記事 Afghanistan war logs
http://www.guardian.co.uk/world/series/afghanistan-the-war-logs

 ガーディアンってすごいな、新聞ってすごい、新聞のウェブサイトってすごいな!と思わせる事件だった。いつもはウェブのみの閲読の私だが、早速、紙のガーディアンを買いに、近くの小売店に走った(一軒目は売り切れだった。)

関連過去記事:
ウィキリークス創始者の横顔
http://ukmedia.exblog.jp/14654443
ガーディアンの調査報道に関する原稿
http://ukmedia.exblog.jp/14423428

ところで「アフガン戦争って、何だっけ?」という人に、
「英国ニュースダイジェスト」のニュース解説によるアフガン情勢
http://www.news-digest.co.uk/news/content/view/6586/263/

日本語ウィキペディアの「ペンタゴンペーパーズ」もご参照を。 





 




 
トラックバックURL : http://ukmedia.exblog.jp/tb/14843968
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by 井上力 at 2010-07-29 14:30 x
日本のメディアは、手元に朝日、毎日、琉球新報、神戸がありますが、ご指摘のように米政府の意向を報じるのみで、「紙」のうえでもネット上と変わりありません。
なお、事後報告になりますが私のHP(www.inouetsutomu.jp/きょうの井上力)で、『小林恭子の英国メディア・ウオッチ』を紹介し少し引用させていただきました。貴重な情報、今後もよろしくお願いします。
Commented at 2010-07-31 09:25 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by polimediauk at 2010-07-31 16:43
三木さん、ありがとうございました。書き取りの企画、初めて知りました。ツイッター、早速フォローさせていただきました。
Commented by polimediauk at 2010-07-31 16:46
井上さま

ありがとうございました!こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。
by polimediauk | 2010-07-26 23:03 | ウィキリークス | Trackback | Comments(4)

ジャーナリズムの話いろいろ+欧州事情も


by polimediauk