放送業界

爆発的ヒットにならない「NHKオンデマンド」とダントツ人気の英BBCアイプレイヤー

(この中に、ソニーのプレイステーションの話が出てきますが、最初、「パワーステーション」と間違って表記されていました。また、任天堂WiiをWII表記しておりました。訂正しておりますが、間違った情報を出してしまったことを、お詫びします。)

 以下は「週刊東洋経済」のテレビ特集号(14日発売)に掲載された分に補足したものであるが、今回、NHKのオンデマンド放送を調べてみて、何故無料で提供されていないのかの根拠が、「放送法第9条第2項第2号」にあることを知った。〔先の段落に情報追加) 

 これによって、NHKオンデマンドサービスは受信料を財源としないことが定められている。そこで、いろいろ工夫をこらしながら、様々なお試しコースを設けて、なんとか利用者を増やそうとしている。

 何故、放送法のこの項目がそうなっているのか(受信料外の業務とされたのか)の背景が、よく分からなかった。これはつまり、「放送と通信の融合」が法律的に実現しなかったことと関係があるようだと推測したのだが、もしご存知の方は教えていただきたい。私が調べたところでは、新たな法律ができることになっていたが、「民主党への政権交代で」、結局法律は成立しなかった、なのでそのままになっている、ということなのかどうか。(総務省の担当部署にメールを送ったが、お返事はなし)。

 そして、何か放送業界〔民放?)からの圧力があったのかどうかー?(ネットでどんどん番組が配信されてもらっては困る、放送と通信は別々であってほしいーとか?)こうした事情に明るい方からのご一報をお待ちしています。

(追加)
放送法
第2章日本放送協会
第2節:業務―第9条2-2をご参照
http://www.houko.com/00/01/S25/132.HTM

放送法第9条第2項第2号の業務の基準

http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/netriyou/index2.html

総務省の基準ーー受信料を使ってやる業務と、受信料以外を使ってやる業務を規定している。
http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/netriyou/pdf/netkijyun2.pdf
この文書の「第2」の受信料以外の財源で行う業務として、見逃し番組サービスの提供など。


***
 
ネット対応優等生BBC -「世界制覇」へ挑む! 

 NHKの多メディア展開戦略の一つとして2008年12月から開始された、放送済み番組を有料で視聴できるサービス「NHKオンデマンド」。昨年12月末、PC会員(ブロードバンドにつながったPCでサービスを利用する人)数は57万人に達し、第3四半期(2010年10月―12月)の売上げ総額は過去最高の1億4176万円に達した。3期連続の上昇である(NHK「業務報告」)。

 しかし、いまだ「爆発的成功」とはいえないようだ。NHKオンデマンドの今年度の売上げ収入は昨年12月末時点で総額3億8500万円。今年度末までの達成目標額は11億円となっており、約3割にしか達していない。3月末までの目標達成は、逆立ちしても無理そうだ。

 一方、英国では公共放送BBCの番組再視聴サービス「BBCiPlayer(アイプレイヤー)」が大人気だ。

 アイプレイヤーへの番組視聴リクエスト数は、昨年12月で1億4500万回に上り、これまでで最高となった。前年同月比では27%増だ。民放局や有料衛星テレビのスカイが提供する同様のサービスの利用率と比較すると、BBCアイプレイヤーの人気はダントツだ。

 英国の放送局によるネットを使っての番組配信は2006年頃から本格的に市場に登場し、BBCは後発組。しかし、その後の巻き返しが目覚しい。実験配信の期間を経て、2007年12月、子供から大人まで幅広いファンを持つSF連続ドラマ「ドクター・フー」を再視聴できることを売りものに本格スタート。その後何度かの技術変更を経て、番組(テレビ及びラジオ)の放送から7日間の見逃し番組の視聴、30日間のダウンロードといった基本サービスに加え、連続番組のスタッキング(7日間を過ぎても、シリーズが終わるまで初回放送分から視聴できる)、フェイスブックやツイッターでお勧め番組の情報を友人たちと共有できる仕組みなど、サービス内容を拡充させている。バージン・メディアやBTなどのブロードバンド・プロバイダーと契約すれば、テレビの前に座って、リモコンを使って番組を楽しめる。ソニーのプレイステーション、任天堂のWiiなどのゲーム機、携帯電話からも視聴可能だ。

 アイプレイヤーの最大の功績は、英国の視聴者の行動を変えたこと。オンデマンド・サービスは他局もやっていたが、視聴率シェアが最も高いBBCが2007年末に本格市場参入したことで、サービスが一気に普及した。民放の「プラス・ワン」のチャンネル(あるチャンネルの放送内容を、そっくりそのまま一時間遅らせて放送する)も人気で、放送局側が決めた時間にテレビの前に座るのではなく、「自分の都合がよい時間に、見たい番組を取り出してみる」のが英国で普及している。

―簡単でタダ

 NHKオンデマンドと比較したときのBBCアイプレイヤーの最大の利点は、ズバリ、無料であることだろう。PC上から、アイプレイヤーの独自デスク・マネージャーを立ち上げて選ぶか、テレビの前に座って、リモコンを操れば好きな番組が難なく視聴できてしまう。アイプレイヤーは、とにかく楽なサービスなのだ。どれほど見ても全く懐が痛まない。貧乏人から金持ちまで英国に住んでさえいれば誰でもが視聴できる。

 残念ながらNHKは、国内法の制限から見逃しサービスの提供に受信料を使ってはいけないことになっている。「無料で放送された番組に何故再度お金を払うのか」という視聴者側の割り切れなさがいつまでも付きまとう。

 放送と通信の融合が刻々と進展する英放送業界で、今年最大の注目が無料ネット・テレビのプラットホーム・サービス「YouView(ユービュー)」の開始だ。BBCのほかには民放3局、通信業界からはBT,Talk Talk、 Arqivaが参加する。視聴者はブロードバンド・インターネットに接続された「セットトップボックス」をテレビの上に備え付けて番組を視聴する。高品位画像設定や番組の途中での巻き戻しや録画ができ、有料・無料のオンデマンド番組の視聴ができる上に、インターネットのコンテンツにアクセスできる。複数の配信サービスの一元化で、利用者にとっては、オンデマンドの利便性がぐっと向上することになる。インターネットにつながったテレビは現在英国で200万台ほどで、年内には700万台に増加すると言われている。

―運営予算削減の逆風

 BBCの目下の悩みは予算面での不透明感だ。緊縮財政を進める英政府は、昨年秋、2014年から4年間のBBCの受信料収入を「値上げなし」とする方針を決定した(BBCの受信料収入の値上げ幅は時の政府と交渉の末に決まる。)BBC試算によれば、値上げの凍結は、実質、年率16%の予算削減に当たるという。また、外務省が運営資金を出していたBBCの商業部門、BBCワールドワイドに対し、政府は資金の拠出を14年から停止と決め、BBCが自力で運営することになった。

 BBCオンラインの予算も13年度末までに大幅削減され、今後2年で360の職が消える。アイプレイヤーがどれほど国内で人気となっても、所詮は無料サービス。何とか収入を上げられないかと経営陣は頭をひねる。

 BBCは現在、アイプレイヤーで提供される番組を他のオンデマンド・サービスに組み込んだ形で提供する「シンジケーション」サービスを、原則許可していない(例外がバージン・メディア)が、アイプレイヤーから他局のオンデマンド・サービスに飛べるようにする「アウト・リンキング」の技術を開発中だ。これが実現すれば、トラフィック増大を切望する民放には朗報で、BBCに一定の収入が入る可能性もある。

 BBCが将来の大きな収入源の一つとして期待するのが、現在国内でのみ利用可能なアイプレイヤーの海外展開だ。商業部門BBCワールドワイドの手によって、有料購読サービスとして提供するのである。すでに、約1千本の個別の番組がアイチューンズなどを通して販売されており、2008-2009年で1000万ポンドの売上げとなっている。

 そこで年内に、まず米国で有料サービスを開始予定で、当初はiPadでの視聴のみとなるようだ。「お金を払ってもBBCの番組を見たい」という声は世界中で強い。ネットを利用して番組を視聴する時代となりつつある今、BBCは英国内のみならず世界のオンデマンド市場でトッププレイヤーになる可能性を秘めている。〔終)

 

 
 
 
by polimediauk | 2011-02-21 18:28 | 放送業界

ジャーナリズムの話いろいろ+欧州事情も


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