英国の名誉毀損がらみで、ツイッターに個人情報開示命令
http://www.telegraph.co.uk/technology/twitter/8544350/Twitter-reveals-secrets-Details-of-British-users-handed-over-in-landmark-case-that-could-help-Ryan-Giggs.html
この記事から、少々中味を紹介してみたい。
その前に、前回、サッカー選手ライアン・ギグスが女性と不倫し、ギグス選手の弁護士が、この件が報道されないよう、裁判所から差し止め令を勝ち取ったことを書いた。(現在でも、実は差し止め令は有効で、本当は報道してはいけないのだが、現実にはもう無効化しているので、どの新聞も放送局もギグスの名前を出している)。ギグスの名前をどんどん公的空間に出したのはツイッター利用者たちであった(あまり騒ぐので私もツイッターでキーワードを入れてみると、すぐに名前が判明した)。
ギグスの弁護士は、20日、英高等法院に向かい、ギグス選手の情報を暴露したツイッター利用者の情報を得るべく、ツイッター捜索令を求めた。
23日、ジョン・ヘミング下院議員が国会で「7万5000人がギグス選手だと書き込んでいる。全員を捕まえることなんてできっこない」と発言。(同氏は、議員特権により、差し止め令違反で逮捕されない。)翌日からは、「誰でも報道してOK」の雰囲気が作られた。
その後、ツイッターの欧州責任者が、法律を使っての要求があれば、ツイッター側としてはこれに沿って、個人情報を渡すことになるだろうと述べた。
サンデー・テレグラフによれば、ギグス選手の弁護士によるツイッターの捜索願いの期限は先週末までだったそうで、どうも情報は渡っていないようである。担当した裁判所が英国内であったため、米企業ツイッターには適用されないのだろうか?
一方、先のイングランド北部サウスタインサイド地区の区議会委員らは、ツイッターの本社所在地となる米カリフォルニア州の裁判所に、「ミスター・モンキー」のアカウント情報の開示を求めて提訴していた。
裁判長は名誉毀損に当たるツイートを発信してきた人物の個人情報開示をツイッター側に命令する判決を出したという。AFP通信の30日付報道によると、この判決を受けてツイッター社から代理人の弁護士に個人情報が開示され、現在、専門家が情報を分析しているという。
ミスター・モンキーは、2008年ごろから、サウスタウンサイド議会や議員らによる不正選挙、麻薬使用、経費流用などの疑惑をブログサイトなどを通じて発信してきた。2009年からはツイッターを通じても同様の情報を発信してきた。
区議員たちは米国の弁護士事務所を使って、名誉毀損となるような情報を発信してきた5つのツイッター・アカウントに関わる個人名、住所、電子メールのアドレス、電話番号、位置情報の開示を求めた。
この5つのアドレスの1つは、ツイッターからの情報開示以前の段階で、無所属の区議員アーマド・カーン氏のものであったことが分かっている。しかし、カーン氏は自分はミスター・モンキーではないと言っているそうだ。
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報道の自由の問題や、果たしてツイッター(あるいは、個人情報を持つフェイスブックなどのソーシャルメディア)が情報をこのような形で外部に出すべきなのかどうか、言論の自由との兼ね合いはどうかなど、この話はいくらでも広がるだろう。
私にはどうしたらいいのか、その判断がうまくつかないが、ひとまずはツイッター(あるいはソーシャルメディア)を、これまでのメディアや情報発信方法(直接誰かに話す、郵便で送る、既存メディアに手紙を書くあるいは出演するなど)と大きく異なるものだと考えないほうが良いのだろうな、と思う。
不特定多数の人に(あるいは公的空間に)出した言葉は、発信者に返ってくるーあるいはその可能性がある。最後は何らかの形で自分の言ったことを引き取る必要がある。
言いっぱなしというわけにも行かないのだろうな、特に誰かを傷つけるあるいはその地位を脅かすようなことを発信するのであれば。砂漠に穴を掘って、穴に向かって「王様の耳は・・」と叫ぶ限りはー。
それと、ツイッターを含むソーシャルメディアは、個人が特定しやすい特徴があるな、と。個人をベースに情報を交換して成り立っているわけだから、当然といえば当然だが、無限大の言論空間であるかのように自分は錯覚していて、実は窮屈な・狭い言論空間であるのかもしれないー。