政治とメディア

英国やNATOが、今後、どこまでリビアに関わるか?

(見出し部分のつづりが間違ったまま、見苦しい状態が続いていたことをお詫びします。)

 今、英国にいると、「ここは中東か?」と思うほど、リビア情勢に関する報道が多い。

 特に反体制軍が首都トリポリに入ってからは、「反体制側の勝利」、「英国及びNATO側の介入が功を奏した」という、勝利感みなぎる論調が続いた。ところが、カダフィ大佐がなかなかつかまらないので、次の山場が見つからず、新聞各紙は1面の見出しをいかに劇的にするかに頭を悩ませているようだ。

 英エコミスト誌は、「デービッド・キャメロンの戦争」と題するコラムで、キャメロン首相のリビア戦での決断に一定の評価をしている。
http://www.economist.com/node/21526887

 国連決議の「リビアの国民を守る」という範囲内での軍事行動(空爆のみ)を維持しながら、反体制軍のトリポリ掌握まで実現させたからだ。また、空爆は米国の協力がなければ成功しなかったとしながらも、ブレア政権のときのように、米国のために他国で軍事行動を起こさなかったキャメロン首相。この「成功」には「偶然」という要素も介在していたが、今後も、(ほかの地域で)同様の介入がありそうだ、と締めくくる。

 NATOあるいは英政府が、今、避けようと(あるいはそのふりをしている)している事態とは、リビア国内に軍隊を送ること、そして新政権樹立までの混乱期にリビア政治に深く関わり、状況が泥沼化して抜け出られなくなることだ。2003年のイラク戦争、あるいは2001年に武力攻撃を開始したアフガン戦争のような状態は何としても避けたい、と(あるいは、「避けたいと思っている」と英国及びリビアの国民に信じさせたい、と)思っているのである。
 
 そこで、ヘイグ英外相など、閣僚などは「リビアの今後はリビア国民の手で行うべき」という言葉を繰り返すことになる。

 しかし、本当に「一切関与しなくなる」かというと、大いに疑問である。トリポリでの反政府派と政府派との戦いの様子が大々的に、かつ延々と報道されると、「治安維持のためには、やはり現地に軍隊を送らなければ」という論法が出てくる可能性がある。「リビアの新政府(あるいは反体制派による暫定政府)から、強く依頼されたので」軍隊を派遣する、という説明も出てこないとは言えない。

 「もし」そうなると、リビアの状況は、英国が関与したことで、関与しなかった場合よりも悪化する可能性があるーーイラクやアフガニスタンのように。いつまでも英国の関与が続き、それ自体が中東諸国から反感を買うばかりか、英兵の犠牲者が出て、かつ軍事費負担が増える。英国にとっては、良くないことばかりなのである。ただし、「国際社会で英国の力を示したい」(あるいは「利権を拡大させたい」)と考える、英国の一部の政治家などは、むしろ関与したい、と考えるだろう。

 リビア情勢の注視どころの一つは、「近い将来、リビアにNATOや英国あるいはフランスなどが深く関与するかどうか(つまり、地上に軍隊を送るのか、送らないのか)」になってくる。

 私自身は、英仏が主導した、リビアに対するNATO軍の空爆の様子を、恐ろしさを持って見ていた。反体制軍に武器を提供していた、という報道もあった。8月26日付のテレグラフ紙報道によれば、国連が、凍結されているカダフィ政権の資産の中で、10億ポンド分を反体制軍・反体制政治勢力に提供することで合意した、とあった。すでに、反体制の政治勢力をリビアの正統な政府と見なす国が30カ国以上あるという。カダフィ大佐の周りがどんどん固められていることが見えてくる。

 もちろん、私はカダフィ大佐による圧制が続くべきだと思っていたわけではない。しかし、政府シンパの人が「内政干渉だ」というのも一理あるように聞こえるほど、国際社会という名がついた他者の手によってリビアが支配されてゆく様子は、かつての欧米列強による植民地の分割競争に重なって見えた。

 タイムズのコラムニスト、マシュー・パリスが、「私たちは何とか切り抜けた。向きを変えるときが今だ」と題する記事を書いている。(有料購読制の記事。)
http://www.thetimes.co.uk/tto/public/profile/Matthew-Parris

 要旨は、最初の段落にある。「目をそらせ。理解しようとはしないことが大事だ。私たちはリビア情勢に関して何の支配力もなく、リビアの最善の将来が何であるかを推測する力もなく、最も残酷で最も危険な状況を生み出すことへの影響力があるだけだ」。

 パリスは、これまでに、多くの専門家がアフガニスタンの政治及び軍事状況に関わる予測をたくさん出したが、結果的には完全にずれていたこと、唯一当たっていたのが、「最終的にはひどい壊滅状態になる」ということだけだったと指摘。リビア情勢では「全てが変化し続け、長くは維持しない」ので、「誰がベンガジやトリポリでどうした、あるいは政治勢力の名前や読み方を覚えること」に躍起にならなくてもいい、と主張する。

 もしリビア(の新勢力が)英国からアドバイスがほしい、どうやって民主主義体制を作り上げるのかを教えてほしいというならば、「アドバイスを提供するべきだが、資金援助を頼まれたら、きっぱり断るべきだ」。もし「(軍事)介入を請われたら、ノーというべきだ」。リビア情勢が悪化すれば悪化するほど、NATOも英国もリビアから「背を向ける時期なのだ」、と書いている。
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Commented by 島田 at 2011-08-30 22:41 x
タイトルがNAOTになっていて間違っていますよ。
Commented by polimediauk at 2011-09-01 02:00
すみません、ご私的ありがとうございます。長い間、恥ずかしい間違いが続いておりましたー。
by polimediauk | 2011-08-27 16:34 | 政治とメディア | Trackback | Comments(2)

ジャーナリズムの話いろいろ+欧州事情も


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