英国事情

グアンタナモ米基地の元拘束者の証言


c0016826_723755.jpg
(在英・米国大使館前での、グアンタナモ基地の拘束者釈放を呼びかけるデモの写真。2003年ごろ。オレンジのつなぎのような服は、基地に入ったとき最初にこれを着るようになっていたことから。)

 今、ロンドンで、非人道的な拷問による尋問をやめよう、と呼びかける会議が、21日まで開かれている。人権団体の「アムネスティー・インターナショナル」と「リプリーズ」というところが主催だ。

 目玉は、キューバ・グアンタナモ米軍基地を中心に、拷問を受けながら尋問を受けた人が世界中から集まって、証言をしている点だ。

 グアンタナモ基地というと、データーベースで探すと結構ニュース記事が出てくるので、日本でも頻繁に報道はされているようだ。

 2001年9月11日の米国大規模テロ後、米国は「テロの戦争」を始めたわけだが、アフガニスタンや世界の各地で様々な人々を「テロに関係するかもしれない人」、として捕まえ、2002年1月からは、グアンタナモ基地に送ってきた。現在は500人以上が拘束されている。

 英国ではかなり報道されてきたニュースなのだが、それは、英国籍の男性たちも拘束されてきたからだ。家族や人権団体がアピールを行い、何年もかかって、ようやく英国籍の9人が帰国している。長い人では3年半も拘束されてきた。現在、全員が無実となった。(一度も有罪になってはいないのだが。)

 グアンタナモ基地は国際的にかなり悪名が高い。拘束された人は、容疑が確定せず、弁護士の接見も長い間許されなかった。また、戦争捕虜ではなく、「敵性戦闘員」とされたため、捕虜の人権を守るジュネーブ条約も適用されなかった。そこで虐待や拷問疑惑が出た。

 実際のところ、虐待や拷問といっていい状態があったことが、少しずつ釈放された人の話から、分かってきた。

 結局、テロとは関係ない人が、突然捕まり、数年の苦しい拘束生活の後、国に戻された、という展開になった。(検索すると、かなりいろいろネット上で出てくると思う。)

 今回の会議では、英国籍の元拘束者9人全員が、初めてそろって報道陣の前に姿を見せた。(といっても、二人は会場の隣の小部屋から、マイク出演のみ。一人はビデオ出演。)互いに、初めて会った人同士も、いた。

 初日は英国籍の元拘束者が語り、二日目の今日は、ロシアの人、カナダの人の証言があった。「拷問は、経験した人でないと、絶対分からない」と、最初の頃の拷問の様子だけを話したカナダ人の証言に、会場は静まり返ったようになった。
 
 夕方、今日の日程が一通り終わると、元拘束者たちが一堂に集まり、主催者側が記念撮影をしていた。楽しそうに中央に集まって言葉を交わす元拘束者もいれば、輪には入らずに、じっと見守っている元拘束者もいた。

 英国籍の拘束者の一人、マーティン・ムガンバさんが、全員に囲まれて、中央に立った。つらい拘束を乗り切るために、よく詩を作ったという。詩といっても、ラップミュージックの歌詞だ。特に、看守の反感を買って独房に入れられたときには、「よく良い詩ができた」という。カメラのフラッシュがたくさんたかれる中、ムバンガさんはラップを歌い、歓声を浴びた。

 楽しそうな様子に心温まるのを感じながらも、他の気になる点もあった。

 それは、今目の前にいる、無実の、若いイスラム教徒の男性たちは、何年もグアンタナモ基地で拘束を受け、中には立つことができなくなった人も、一切外に出ることができなくなった人もいる。しかし、一方では、外見を見ただけでは、非常によく似たようにおそらく見えただろう、若いイスラム教徒の男性4人が、ロンドン・テロを企て、7月7日、実行に移してしまった。

 何という、皮肉なことだろう、と思う。無実の人は捕まり、テロを起こす人は何の網にもひっかからずに計画を実行して、50数人が命を落としたとは。

 会議が終わり、帰るため、地下鉄のリバプール・ストリート駅まで戻ると、改札口には、かなりの数の警察官が立っている。おそらく、注意を払ってみているのは、若いイスラム教徒風の、肌の色の黒い男性たちだ。テロ行為をしようなんて全く思っていないイスラム教徒の男性たちにとっては、ターゲットにされたようで、いやだろう。しかし、かといって、一体どうしたらいいのだろう。7月のロンドンテロの犠牲者の家族は、どう考えるだろう?

 最終日は中東諸国からの元拘束者の証言がある。
トラックバックURL : http://ukmedia.exblog.jp/tb/3101683
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
by polimediauk | 2005-11-21 07:28 | 英国事情 | Trackback | Comments(0)

ジャーナリズムの話いろいろ+欧州事情も


by polimediauk