放送業界

アルジャジーラ爆破計画報道の波紋



 22日付の英デイリー・ミラー紙が報道した、ブッシュ米大統領が、2004年4月、ホワイトハウスでブレア英首相と会談をした際に、カタールの衛星テレビアルジャジーラの爆破計画を口にした、という「スクープ」は、昨日一日中英メディア内をかけめぐった。中東諸国のメディアでも即報道された、ということをBBCの報道で知った。

 当時は、イラク・ファルージャで、米軍が武装集団の攻撃を抑えるのにてこずっていた頃だった。「冗談で、ふとアルジャジーラ爆破を口にした」という説と、「本気だった」という説があることを、デイリーミラーが伝えていた。

 この会談内容は書き取られ、5頁に渡る文書になったという。英内閣府職員が、イラク戦争に反対していた労働党のトニー・クラーク氏に渡した。クラーク氏は、読後、「極秘の書類であり、もし内容が外に出ればイラク駐留の英兵の命に関わる」(BBC報道、おそらくファルージャの攻撃内容が書かれていたためと思われる)と思い、内閣府に書類を返したという。

 アルジャジーラは声明を出し(英語版ネットで読める)、これは後で日本語でも翻訳されるだろうと思う。

 英国内では、この件に関し、昨日二つのことが起きた。

 1つは、法務長官(政府に法律問題のアドバイスをする役目)が、各新聞社の編集長に対し、もしこの極秘書類を印刷すれば、政府機密保持法に違反したと見なす、とし、出版しないように、と警告した。この法律は通常国家公務員に適用され、政府機密を外に出した場合、訴追されることになる。ガーディアン、タイムズなどによると、新聞そのものに対して英政府が出版差止め令をだそうとしたことは過去にあるそうだが、編集長自身が政府機密に関連する書類の出版に関して訴追されたことはない。

 前代未聞のことといっていいのかもしれない。しかし、アルジャジーラの部分が外に出ないように、というよりも、むしろ、ファルージャでの軍隊の動き、攻撃計画など、軍事的にセンシティブな会話があったせいである可能性もある。新聞などが、アルジャジーラの問題に目を奪われているうちに、他の問題が隠されている可能性もある。一つの根拠は、機密文書を手にしたクラーク氏が、すぐに内閣府に書類を返したのは、「中身が外に出たら、イラクにいる英軍に使者が出ると思ったからだ」(先述)といっている点だ。

 もう1つは、メディア戦争で、「かわいそうな」アルジャジーラはこの機会に存分に自分たちの存在をアピールしているようだ。昨晩、ニュース解説番組「ニューズナイト」で、アルジャジーラアラビア語版のロンドン支局長と米政権に近い人物のやりとりが放映された。「メディア機関を爆破しようとするとは、表現の自由はどうなるのか。倫理の問題だ」とする支局長。米側の分が悪いように見えてしまったのは、人選のせいなのか、どうか?

 以下はその時のやりとりの抜粋

―この報道に関して、どう思うか?

フランク・ギャフニー氏(米レーガン元大統領の下で働いていた。現在はCenter For Social Policyのトップ。):この報道が本当かどうかは分からないが、もし真実味があるとしたら、驚くにはあたらない。我々は、自由を愛する人々のためにテロの戦争を行っているし、アルジャジーラは敵のプロパガンダを流し続けてきたからだ。害を中和させるにはどうするか?を考えるのは当然だからだ。

ヨスリ・フーダ氏(アルジャジーラのアラビア語版支局長):問題は、世界で最もパワフルな二つの国のトップが、こういう会話をしていたということだ。罪もないジャーナリスト達を殺そうと考えるなんて、どんな理由を持ってしても正当化できない。殺してしまったら議論は終わる。

ギャフニー氏:問題はそんなことではない。自称「ニュース機関」のアルジャジーラは、カメラやレポーターを使って人々を傷つけるために、敵のために働いている。自称ニュース機関は、アルカイダやビンラーディン、ザルカウイ、人の首を切ること、自爆テロ反の宣伝をしてきたのだ。だからターゲットにもなる。フェアゲームだ。

フーダ氏:プロパガンダをしているのは、そっちのほうだと思う。ブッシュ大統領は世界を二つに分けた。どちらかの側に入らなければいけない、と。でも私達はジャーナリストだ。中立の立場にいたい。それを許さず、こちらの側に入れ、というのはプロパガンダだ。

これは、倫理の問題でもある。

ギャフニー氏:アルジャジーラが報道する内容のおかげで、危険な状況が作り出されている。

―アルジャジーラの報道が嫌いだからといって爆撃するのは、表現の自由を含むイラクの自由化を進めようとしている部分と合致しないのではないか?

ギャフニー氏:爆破計画という報道が本当かどうかは分からない。しかし、自由なイラクを実現する上で、アルジャジーラが邪魔をしてきたのだ。「敵性戦闘員」のような役割をしてきたのだ。イラクの人々も、アルジャジーラが状況を悪化させているといっている。

―アルジャジーラはビンラーディンのテープを流したのだから、自分のやっていることを正当化できないのではないか?

フーダ氏;最初にビンラーディンのインタビューをしたのは米ネットワークだ。他のネットワークもどんどんこれに続いた。タリバンにも十分な放映時間をかつては米メディアは与えていたのだ。アルジャジーラは「もう1つの見方」を伝えることで、世界の目や耳になろうとしているだけだ。

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by polimediauk | 2005-11-23 19:16 | 放送業界 | Trackback | Comments(0)

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