エコノミストの安倍首相批判記事 メディア分析
安倍首相の慰安婦問題に関する発言とエコノミストの記事を巡る論点は、今日位までに大体出たような気がするが、どうであろうか。慰安婦問題に関して、私自身の歴史解釈などをビシーっと出すことが出来ず、恐縮である。最後は、自分自身堂々巡りになっていくような気がしてならない。
関連記事をウエブで追うと、米国の新聞でここ数日間にずい分と安倍批判が出ている。安倍バッシング状態になっているようだ。下院での決議案があるからだろうけれども、一体米国がこの問題で日本に何をさせたいのか?何か他意が(決議案の件を抜いても)あるのかどうか?大いなる疑問だ。
ここでメディアの話そのものに一回戻る。慰安婦問題の中身でなく、メディアの問題として、見てみたい。
改めて考えると、エコノミストの「恥を知れ」発言は、ある意味エコノミストらしいが、もし自分が英メディア界で働いていて、この記事を読んだら、厳しすぎる、と思うかもしれない。自分が日本人でなくても。
安倍首相の発言を批判・非難するのはもちろん自由だが、慰安婦問題の重要性に関係なく、それとは別問題として、論調が変に厳しすぎる。
言葉尻を取り上げて論評するのもなんだけれども、もし「恥を知れ」というのだったら、ジンバブエのムガベ大統領に言うとか、もっと適当な例があるのではないか。
私は、最初、エコノミストが慰安婦問題を重要と考え、そのために厳しい発言になっているのかなとも思ったが、しばらく時間が経ってから言葉遣いを考えてみると、厳しすぎる感じがした。
結局のところ
(1)自分(自分たちが)、世界の事象を判断してやる、という態度
(2)「過去を反省していない」日本にここで一回カツを入れておきたい
(3)売れ行きが良い米国読者におもねった??
などがその背景に考えられる。
これは思い付きではない。
(3)は、エコノミスト記者に聞いても、否定するだろうと思う。しかし、エコノミストが下院で決議案が出ている米国と価値観を共有している部分がある、と考えるのは自然ではないだろうか。エコノミストは、私のこれまでの印象では親米である。だからといって、全ての見方が偏っている、というわけではないが、それでも、こういう要素も一応考えておいてもいいかと思う。
(2)は具体例を出すのが難しいのだが、英国に住んでいると、こういう論調がすごくあり、常に紙面の底を流れていると言っていいと思う。これはエコノミストだけではない。
(1)は、具体例として実際に働いている人から直接聞いた。かつてエコノミストノの記者だったアンドリュー・マー氏も言っているし、現在の記者の一人もそう言う。他の新聞も、エコノミストをこのように評する。実際、読んでいてもそうである。
そこで、(1)、(2)、(3)から言って、「エコノミストは傲慢だ」という言い方もできなくはないのだが、私は、むしろ、「これがエコノミスト、エコノミストのスタンス」と思う。
調査・取材に関しては、エコノミストはずい分細かくしているような印象を受ける。データや様々な視点を、私も他の読者同様、大いに参考にする。
こちらの考え付かない視点が書かれてあるので、目からウロコの時もある。
結論として、今回の記事にせよ、他の記事にせよ、最終的には、「エコノミストはこう考えるんだな、こう見るんだな」と思って、読み、参考にしたり、あるいは無視したりすればいいのだと思う。「英国知識層はこう見るんだな」ということではないか。(もちろん、エコノミストは英国の全知識層を代表するのではないが。)
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来週、新たなコンピューター制度を取り入れた、デイリーテレグラフのオフィスを初めて見に行く。写真はきっと撮らせてもらえないだろうが、週中ごろに報告したい。