新聞業界

児童性愛主義者のドラマ、テレグラフ雑感


 昨晩、チャンネル4で、「Secret Life」というタイトルで、児童性愛主義者のドラマがあった。元水泳のコーチで、7歳から12歳ぐらいの少女達をレイプしていた男性が、刑務所に6年間いて、社会に戻ってくるという話。欧州では児童性愛主義者というと最も忌み嫌われる存在の1つ。タブーのトピックでもある。社会に戻ってきてもなかなか受け入れられず、自分の心の闘いとも格闘する主人公。遊園地にいた12歳の少女と話す場面では、身体が身震いするほど怖い感じがあった。最後は悲劇的に終わるけれども、誰か日本のテレビがこれを買って日本でも放映してくれないかと思う。日本ではあまりなじみが無いトピックかもしれないが、欧州でいかに大きな問題になっているか、その背景が分かる。

 見ている間に思ったのは、実際の被害者やその家族はこのドラマを見ないだろうし、ドラマが作られたことに怒りを感じているだろう、と。私がもし被害者かその家族だったら、見ないし、怒るだろう。どうしても、主人公に同情的な描き方にならざるを得ないからだ。それでも、例え視聴者の一部に不快感を与えるとしても、この問題に関して一般の人がいろいろ考え、児童性愛主義者の社会復帰やあるいは量刑などに判断を下す時などに役立つ意味もあるだろう。テレグラフの番組評は、「良いドラマとは言えないが、価値あるドラマ」と、今日付けの紙面で書いていた。

 例の米国の学校射殺事件で、NBCが犯人のビデオを放映したことで、英国ではちょっと批判的な視線があるのだが、これこそ本当に遺族にとってはいやな、つらいことだったろう。この事件のビデオを出すか出さないかの件、私はまだ考えがまとまっていないのだが、もしNBCで出さなかったとしても、ネットで流れることはあるだろうし、少なくとも「止められない現実がある」ことは認識せざるを得ない。

 オーマイニュースで、この件にからんで、海外特派員の話がある。かなり手厳しい!!

http://www.ohmynews.co.jp/news/20070420/10331

 一つ感じたのは、特派員は(日本に限らず)限られた人数の配置が多く、いざ事件が起きても、いろいろな理由から飛べないことも多い。実際に現地に入るかどうかは本社の決定によるだろうけれども、現地の新聞や通信社の報道などを使うのは、1つの報道の方法だと思う。これ自体は悪くないと思う。複数の情報源を使った場合、特定せずに「現地情報によれば」と入れてもいいだろうし。特派員が書いた記事は(日本だけではなくて)、必ず、情報源がどこかを入れていると思う。ただ、ルポもの、あるいは一対一のインタビューものなど、「実際に記者が現地に行って、誰かに会った・取材した」記事の場合、もし記者が実際には行っていなかったらこれはダメだと思うけれど。それ以外だったら、情報源を入れて、「今、xxではこんなことが起きている」というのを、読者に分かりやすいように書いてもいいと思うのだけれど。・・というか、そうなっているはずだけれど。

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 テレグラフのオフィスを見学させてもらった話を少し前に書いたが、編集内容などは、新体制(昨年秋から新オフィスに移転し、編集長も新しい人に代わった)の下で、一体どうなのか?という部分を、テレグラフでずい分長いこと働いている知人に聞いてみた。

 新しい所有者(今詐欺罪に問われているブラック卿から、金持ちの兄弟バークレー兄弟に代わった)になってどうなのか、新編集長はどうなのか、と気軽に聞いてみたが、結構熱い答えが返って来て、驚いた。

 今デイリーテレグラフの発行部数は約90万部で、100万だった時から比べると落ちているけれども、高級紙の中では最大だ。また、過去数ヶ月の部数の伸びを見てみたのだが、ほかの高級紙が数パーセント単位で下がっているのと比較すると、微減というだけでも、悪くはないように見えた。

 それでも、働いている側からすると(特に年配のスタッフからすると)、めちゃくちゃなような思いがある、という。

 まず、あくまでこの知人の見たところでは、新たな所有者のバークレー兄弟は、「これまでのテレグラフのスタイルが大嫌い」という。テレグラフのメインになる読者層は、「白人、保守党支持、中流、高齢」。(現在でも、編集長自身によると、50歳台が多いという。)そこで、これまでのスタイルを踏襲する、勤務経験の長いスタッフを中心に、人員削減。(実際、新オフィスに移転する前に300人ほどが削減、移転前後では60人近くが削減あるいは希望退職。)

 そして、ネット中心の新メディアに力を入れ、若者層にもアピールすることを主力にしたそうだ。それで、マルチメディア戦略(紙、オンライン、音声や映像クリップを同時に作る)を重視したオフィスの配置などをした。

「 穏健、じっくりとした分析・解説記事」というスタイルは現在では好まれず、今までよりももっと「右」。そして、dumb down, つまり何でも分かりやすく噛み砕く、あるいはレベルを下げる。

 テレグラフのライバルは、もはや他の高級紙ではなくタブロイド紙「デイリーメール」なのだと言う。張り合ってさらに「右」に受けるように、と。

 うすうすそうだろうとは思っていたけれども、中で働いているスタッフから聞くと、やはり衝撃だった。

 昨年秋から現在までに、外報や国内ニュースなどの、いわゆる「面デスク」がほとんど全員変わってしまったという。「こんなこと、あってもいいのだろうか?」

 新編集長のウイル・ルイス氏は36歳―37歳。最近テレグラフに勤め出したばかりなのだ。ルイス氏は一体どんな感じか?「若くて、良い青年だし、みんなとうまくやっていると思う。でも、何かが足りないように思う」。

 「何か」とは?

 「テレグラフに限らず、どの英国の新聞の編集長も、それぞれ、自分のアジェンダーー議題、目的、主義主張いう意味かーーがある。こうしたい、こういうことを強く信じる、という部分が。情念のようなものがあるべきだと思う。新聞を引っ張っていくような。今の編集長は、保守党支持という意味ではこれまでと同じだと思うけれど、強い思いがないように思う・・」。

 ルイス編集長のことは新聞で読むだけだが、バークレー兄弟あるいは新経営陣からすると、使いやすいのかなあなどとぼんやり思っていただけだった。「情念・アジェンダ」の話で、知人の見方が当たっている・当たっていないにしろ、一つ一つの新聞のスタンス・主義主張が全く異なる英新聞界で、編集長となるからには、自分自身の「何か」「思い」があるべき、という見方は、なるほどな、と思った。つまり、会社員(だけ)であってはいけない、ということも意味するのだろう。
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by polimediauk | 2007-04-20 21:50 | 新聞業界 | Trackback | Comments(0)

ジャーナリズムの話いろいろ+欧州事情も


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