小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk

BBCインターネット部門訪問記


 少し日にちが過ぎてしまったが、4月中旬、BBCのインターネット部門の人に数人で話を聞いたときのことを紹介したい。

 外国プレス協会から取材を申し込んでいたが、なかなかOKが取れず、実現までに数ヶ月かかったという。BBCは取材される側となると、なかなかOKがでない・・・私自身もこれが実感だ。情報をたくさん出しているようでも、いざとなると中々・・なのである。

 BBCニュース・インタラクティブ部門の副編集長ポール・ブラナン氏との一問一答。

―どれ位の人がニュースサイトにアクセスするのか?

 毎月のページ・ビューは数億から10億ほど。一日500万のユニークユーザーがある。英国のニュースサイトとしては最大。

―スタッフ数は?

インターネット部門はBBC内の様々な分野にコンテンツを提供する役目を持つ。ジャーナリストは200人。

―どのようなことを心がけているか?

 人々は様々な番組を様々な形で、様々な時に視聴したがっている。古い形の決まった時間に何かを出すというのは窓から投げ捨てだ。スーパーのようなものだ。何時にトマトやベーコン、パンを買ってもいい。そろっていなければ他のスーパーに行くのと同じだ。

 ニュースは様々な形で入手できる。だから、BBCとしては、オリジナルのジャーナリズムで勝負する。

 ニュースの制作は今どんどん変わっている。ユーザーがコンテンツを送る時代だ。そこで変化するのか、変化を無視するか。今が一番エキサイティングな時なのだと思う。すべてが変わっている。変化はとまらない。変化は早くなるだけだ。

 BBCも変わり時。受信料は希望額よりもかなり少なかった。政府から、英国をアナログからデジタルにする使命も受けている。BBCの制作をロンドンから移動する計画もあって、コストを切り詰める仕事を迫られている。

―受信料の将来は?

 今回の受信料制度はこれが最後。6年後にはもう受信料制度はなくなっていると個人的に思っている。

 もう人は受信料を払いたくないのだと思う。税金のようなものだと。払わないと牢獄にいくこともあるし、その人が払える能力があるかどうかは別にしても一定額を払わないといけない。最初の頃はそれでも良かったかもしれないが、今は選択の幅が大きい。他のチャンネルもたくさんある。何故BBCが必要なのか、と人は思うだろう。好きなサービスだけに払いたいと望むのが自然だ。

―他のサイトにBBCのニュースが出ることをどう思うか?

 ニュースは様々な形で提供している。デスクトップアラート、電子メール、RSS。ヤフーやグーグルでニュースを見たい人もいるだろうから、それもOKとする。こっち(BBCのサイト)に来てもらうようにするのと同時に、BBCは多くの人に見て欲しいから、こっちから視聴者のほうに行く。こっちにだけきてもらう、という考えはしない。

―ユーザーからのコンテンツをずい分と歓迎しているようだが。

 確かにそうだ。ユーザーからのコンテンツを使うとき、重要なのは、透明性だ。どのようにトピックを扱い、どのように編集するか、何を出すかをどう決定するかを説明する。思考過程を説明する必要がある。そこで、BBCの編集ガイドラインをウエブサイトに載せている。

―意見募集「ハブ・ユア・セイ」はどのように管理しているか?

 ハブ・ユア・セイは画面上に出るよりももっとたくさん来ている。今はどれぐらいの数の意見が送られてきたかを出すようになった。どれぐらいあって、どれぐらい出して出さなかったか。怒っているメールもある。最大では6人が送られてきたメールをチェックしている。

―意見は編集してから出すのかどうか?

 編集してから出す、つまり、プリ・モデレートは中東がらみのトピックとか、あらかじめ意見が大きく分かれるようなトピックのみ。ユーザーから訴えられたケースは今のところない。視聴者は今のところそういうことを考えてないようだ。

 プリ・モデレートではない時は、自由にコメントできる。侮辱的や違法でない限り。ユーザーはうまく自己規制していると思う。

―これまでの放送分、つまりアーカイブにアクセスできるサービスを拡充しているようだが?

 受信者は既にお金(受信料)を払っているのだから、過去の放送分にもアクセスできるべきだと考えた。しかし、昔はネットのことを考えていなかったので、権利の問題をクリアする必要がある。これは「クリエイティブ・アーカイブ」のプロジェクトだ。アーカイブを使いたいというリクエストは多い。

―7・7テロなど、ユーザーからのスクープになるようなトピックが送られたとき、支払いはどうしたのか。今後は?

 現在は支払わないことにしている。お金のためにいろんな行動をするかもしれない。警察を無視したのかどうかなど。責任が出てくる。ニュースの商品化は私たちの望む方向ではないと思った。

―ある情報がニセモノではないことをどうやって確認するのか?

 ある時、森林の火災という写真が送られてきた。実は本に使われた写真だった。スカイテレビに送られて、スカイテレビもガーディアンも使った。本物であることを確認する最善の方法は、撮った人に話しかけて、チェックすること。1枚しか撮っていないと言うならまず変だし、何をしていたのか、どうやって撮ったのかというと、本人に聞く。これで大体分かる。
by polimediauk | 2007-05-30 23:58 | 放送業界