新聞業界

「『ニッポン社会』入門」を読んで 

 イラク戦争開始から5周年のドキュメンタリー番組、ニュース特集が続いている。現地に入って、様々な人に取材するが、状況はひどく、隣国シリアに逃げたが、資金がなくなってイラクに戻らざるを得ない人もたくさんいる。

 シーア派とスンニ派の住民が誘拐したりされたり、殺害される。フセイン時代に押さえられていたものが、一気に噴出しているのかもしれない。

 英メディアは「イラクがいかにひどいか」を描写するが、見ているほうは、どうしたらいいのか?という思いがする。誰にもなおせないほどひどくなっている状態では、どうしたらいいのか。英軍の完全撤退を英国民は望んでいるが、それで手を洗っておしまいというわけにもいかない。本当にひどいことになったが、シーア派とスンニ派の戦いをどうにかして止められないのか、同じ国民同士で(国民意識よりもそれぞれの宗派への帰属意識のほうが高いのだろうが)殺し殺される場面が、想像を絶する。

 話は変わるが、テレグラフ紙に、時々日本発で記事を書く人がいて、コリン・ジョイスという名前だった。誠実によく見て、書いている人だなあという印象があった。それでも、1つか2つは変だな?と思うものもあった。何故日本の面白おかしい面ばかりを強調するのかな、と。それでも、東京特派員の中では誠実な方の人、という印象があった。

 書店で、彼が書いた本を見つけた。すでにテレグラフは去ったようで、フリージャーナリストになっている。日本語はかなりできるようだが、本向けに翻訳をしてもらっている。それが「『ニッポン社会』入門」だった。(生活人新書。)時々、ほろりとしながら読んだ。

 メディアの面から言うならば、もっともお勧めが14章の「イギリス人が読みたがる日本のニュース」の項である。ここを読んで、初めて、何故多くの特派員記事が「おもしろおかしい日本」を強調しているのかが分かった。特派員記事に不満を持っている方は特に読んでいただきたい。

 最初に驚いたのが、ジョイス氏が(そしておそらく他の英新聞のほかの特派員も?)面接なしで採用されたことだ。履歴書を送り、サンプルの原稿を書き、電話で話しただけで採用となった、と。

 そして、自分が書いた記事は本社のデスクによって改ざんされてしまう。補足情報を要求され、出だしが変更され、段落の順序が並べ替えられる。「日本社会の一面を明るみに出すことを意図して丁寧に書かれた原稿は、編集の段階でわずかに修正を加えられるだけで、ただ面白がって詮索しているだけの気恥ずかしいまでに冗長な記事に変わってしまう」そうだ。

 こうしたことが起きるのは、日本に関してあまり知識がない読者に向かって書かねばならないのと、日本に関する報道の重要度がテレグラフ内であまり高くないことが原因、としている。

 やっぱりなあ・・・と思ってしまった。そうすると、例え英新聞で日本に関する奇妙な記事が出ていたとしても、書いた本人が奇妙な人なのではなく、頭がおかしいわけでもなく、編集体制全体の中で、そういった記事が求められているから、ということなのだろう(か)。読者がかわいそうである。(だからまともなのはFTの日本発記事しかなくなるのだろう。奇妙さが少ないという意味だが。)

 英国で外国のニュースというと、まず中東、米国だ。それにほんの少しの欧州だ。最近は中国、アフリカも多い。しかし、まるで自分が中東の一国にいるような気がするほど中東のニュースが多い(イラクやパレスチナの話が主だが)し、米国のニュースも本当に多い。本当は隣国欧州のほかの国のことが個人的にはもっと知りたい。

 ジョイス氏の本も、記事同様、誠実さがにじみ出るものだった(と言ってもまじめな本というよりは、一種の洒落だろうけれど)。今どうしているのかな?

 
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by polimediauk | 2008-03-19 17:30 | 新聞業界 | Trackback | Comments(0)

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