小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk

BBCアイプレイヤー、英ウェブテレビ、アップデート 

 ロンドン市長選は(個人的には残念ながら)保守党議員ボリス・ジョンソン氏が勝つ可能性が非常に高くなってきた。結果は真夜中でないと確定しないかもしれない。

 待つ間に、アイプレイヤーの記事の続報を出したい。

 おととい書いたのはすでに過去の話になりつつある、どんどんいろんなことが起きているからだ。

 まず、英テレビ数局が協力して作るオンデマンドのサービス「カンガルー」だが、交渉を詰めているうちに、スイス・米国に拠点を置くザツーZatooというところが、無線を使って地上波テレビ番組を見れるようにしてしまった。http://www.zattoo.com/

 高速ブロードバンドが入っていれば、見れる。番組のダウンロードはできないが。英著作権法の73条によると、無線の信号を使って公共放送の番組(民放チャンネル4やITVも、英国のカテゴリーの中では「公共放送」枠に入り、様々な規定の下にある。どうやって収入を得ているかとは別)を流すのは違法にはならないそうだ。(4月29日付FT記事によると。)この条文は現在のようにネットで番組が配信できる場合を想定していなかったのだ。今のところ、小規模なので違法の疑いがあっても許される、と言う部分がある、という見方をFTがしている。テクノロジーがどんどん進んでいるので、「灰色」の部分がたくさんある、という。

 Zattoo は既に、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、ノルウエー、スペイン、スイスでサービスを開始している。これに英国も加わった、というわけだ。サイトから番組を見るためのソフトをダウンロードして見る。(日本ではどうなのだろう?ユーチューブがあるからいらないのだろうか?)

Start-up bypasses broadcasters to offer live TV online
http://www.ft.com/cms/s/0/23aa30b6-1584-11dd-996c-0000779fd2ac.html

 それと、4月30日付のBBC発表によれば、人気のBBCアイプレイヤーが、有料接続サービス業者バージンメディアと結託し、バージンと契約していれば、テレビ受信機でもアイプレイヤーが使えるようになる。夏からが本格的稼動だ。(今でも赤いリモコンのボタンを押せば一部見れる。)

 これはバージンのブランソン会長対マードック(スカイ)の闘い、と言う面ももちろんあるだろう。ルパートマードックの息子ジェームズが、つい最近、アイプレイヤーは市場競争を破壊すると言ったばかり。バージンメディアは以前、テレウエストという有料接続サービスだったが、これを買収した時、それまであったスカイニュースのチャンネルが消えた。使用料金の折り合いがつかなかった、ということだけれど、ITVという民放の株取得を巡る闘いもあったし、常にマードックとの競争は続いている。

 アイプレイヤーとバージンメディアの提携に戻ると、アイプレイヤーの悩みがもしあるとすれば、その1つは「PCでなくテレビで見たい」という視聴者の思いをどうするかだった。バージンメディアに契約した人がアイプレイヤーをテレビ受信機で使えるなら、それがかなうことになる。ますます競争だ。視聴者にとって見やすい、使い易い方向にどんどんなってゆけばいい。

http://www.bbc.co.uk/print/pressoffice/pressreleases/stories
/2008/04_april/30/iplayer.shtml
by polimediauk | 2008-05-03 05:36 | 放送業界