小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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北京五輪 鳥の巣デザイン協力者の独白+BBC

 北京五輪のメインスタジアムは「鳥の巣」。この設計者と中国側との橋渡し的役割をした「芸術コンサルタント」のアイ・ウェイウェイ氏が、ガーディアンの「コメント・イズ・フリー」というコーナーで、自分なりの意見を述べている。

 昨日のBBCニューズナイトにちょっと出ていたが、ここまで言って大丈夫なのか?と思うほど、中国(政府)側を「独裁主義だ」と言っていた。このブログでは、開会式にも出席しないと言う。

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/aug/07/olympics2008.china

 ほんの抜粋だが

 「中国にとって(北京五輪の開催は)非常に重要だ。何十年もの間、鎖国状態だったからだ」

 「私たちはすべてが政治化される世界に生きている。五輪は政治とは別であるべきだと言う人もいる。スポーツが行われる2週間は、歴史や心理学とはとにかく切り離されるべきだし、理論や道徳とは関係ないし・・・と暗に言う。五輪を政治と結びつける人は、他の悪意を持った目的があるのであり、反中国的だ、と言うのだ。しかし、人々が政治を好まないのは、政治を議論すれば、誰が中国を世界から切り離すことに責任があったのかを、国民に思い出させてしまうからだ」

 「・・・カラフルな祭りは祝いの時であるばかりか、平和と友好の時でもある。将来を再発見するには、過去と決別しなければならない」

 「独裁政治には別れを告げなければ。どんな形であるせよ、どんな正当化の理由をあげるにせよ、独裁主義の政治は、常に、平等さを踏みにじり、正義を否定し、国民から幸福と笑いを奪う」

 「差別も捨てるべきだ。差別は偏狭で無知だし、人と人とのコンタクトやあたたかみを否定する。自分たち自身を向上させるという人間としての信念をむしばむ。誤解、戦争、流血を避ける唯一の道は表現の自由を守り、誠実さ、気遣い、善意で意思疎通をすることだ」

 「私が建設に協力したメインスタジアムの『鳥の巣』は、五輪精神の『公平な競争』を表したものだ。自由は可能だが、公正さ、勇気、強さが必要となる。この同じ原則に沿って、私は開会式から離れていようと思う。選択の自由は公平な競争の基礎になると思うからだ。私がもっとも大事にする権利だ(選択の自由の権利)」

 「もしそうしたければ、開会日の今日は、勇気と、希望と情熱の時になり得る。人間への信頼を、そして、より良い未来を築くという決心をテストするのが今日になるだろう」

(あまりよい訳ではないので、原文をご覧ください。)

 氏のコメントに、読者がさまざまな意見を残しているのもご覧ください。

 ニューズナイトでは、今週、在中国のレポーター(現地の言葉がたんのう)が足を使って取材するフィルムがあり、おもしろいのだけれども、この人は、前に、中国の一人っ子政策に関して取材をした人だったと思う(2006年放送)。子供を産む前に強制的に中絶させられた村の女性たちの顔がフィルムに映り、後で警察にこの人たちがつかまったのではないかと思うと、はらはらしたものだった。

 今日の放映の様子を見ていると、中国では地方取材をする時(テレビカメラを持って)、警察に届出をしなければならないのだろうか。取材中のレポーターを警察官が囲む。それでも、パスポートを見せると、おとがめはなし。レポーターによると、「これまでは、必ず警察署内に連れて行かれ、質問された。今はそれがない。ずい分自由になった」と言う。首都を離れて取材する場合、レポーターは当局から許可を得なければならなかったが、今は自由に取材できる、と語る。「3年前には行けなかったところにも今は行ける」。

 しかし、かつて不穏状態があった町を訪れると・・・誰も話してくれないのである。監視役のような人が、10人ほど、ぞろぞろくっつく。その中を歩くレポーターの様子を見ていると、本当にはらはらである。

 http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/newsnight/default.stm
(英国外では見れないかもしれないが・・・。)

 中国の人が見たら、一体どんな印象を持つのだろうか?と思う。

 このレポーターが見たことをそのまま放映したーー正直なフィルムだと思ってみた。
by polimediauk | 2008-08-08 07:12 | 政治とメディア