小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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サイト記事の印刷で収益を得るインディペンデント

 風は(かなり)冷たいが、まだまだきれいな秋の日が続く。

 インディペンデント紙の記事をウェブで読み、プリントアウトしようとしたら、いくつかの選択肢が出た。(以下のアドレスから、試しにどれかを印刷しようとしてみていただきたい。)

http://www.independent.co.uk/

 「print」を選択すると、「どんな印刷をしたいのか?」と聞く画面が出てくる。いくつかの選択肢の中で、1つ目は「5枚以上印刷したい人」用で、これを選択すると、10枚までは一枚1ポンド(約160円―200円)で販売する、とある。枚数が増えるほど単価は下がる。この場合は、紙に広告が載らない。

 「再印刷」として、ビジネス用に使う、新たな資料を作るなどの用途が想定されている選択肢は、自分の連絡先をインディペンデントに送るようになっている。後でインディペンデント側から連絡があり、値段の交渉をする。

 3番目が印刷料がタダのオプションだが、広告が入る。そして、印刷は5枚まで、とある。使うコンピューターを変えればどうなるのか分らないが、印刷してみると、確かにトップに広告が印刷されるものの、あまり気にはならない。広告主にとってはありがたいだろうし、インディペンデントからすれば、どっちに転んでもお金を稼げる方法を見つけたことになるのだろう。(日本ではやっているところはあるのだろうか?)

 どこの新聞社もウェブサイトから収益を上げるのに必死なようだが、また新しい方法を一つ見つけた、ということか。これが英新聞のウェブサイトの標準になるのかどうかは分らないが。

 このサービスを管理しているのが著作権ライセシング会社iCopyright だ。著作権ライセシングを初めて自動化した会社、と書かれている。
http://info.icopyright.com/about.asp

 前に、コメントを書かれた方に「何故新聞業界(=死んだ木の産業)のことを何度も書くのか?」と言われた。新聞や活字メディアのことを業界出版物に書いてきたということが直接の原因だが(前に新聞業界にいたということもあり)、ラジオやテレビ同様に、新聞は単純に「気軽に入手できておもしろい」という要素がある。また、良い意味でも悪い意味でも世論を動かす一端になっていることは確かであろうし(ただその意味合いは昨今希薄になっているのかもしれないが・・・)、知的なコンテンツを蓄積してきた(紙の)新聞媒体が、「これからどうやって変化していくのだろう?」という部分に大きな関心を持っている。

 何十年か先のメディアの様相がどうなっていくのかは分らないが、紙・新聞はどんどん変貌していくのではないかと思っている。「紙」部分はかなり縮小してゆきネットの比重が高まるであろうが、人が絡むドラマというか、さまざまな事象の動きの報道はこれからも何らかの形で続くだろう。もう媒体は何でも良いだろう。新聞業の崩壊あるいは変貌は時代を映し出すであろうし、これはこれでおもしろいのではないかと思っている。 

 既に近未来と言うか、次の時代の方向に進んでいると思えるのが英国新聞業界である。・・・という結論は、主にネットでの言論や紙媒体での記事を読んでそう思ったのだが、ひょっとしたら、新聞業界にだまされている可能性もあるだろう。つまり「進んでいる」部分のみが報道され、遅れている部分は外にほとんど出ないから、全体からするといかにも進んでいるかのように見えるが、実は・・・という可能性もなくはない。

 しかし、はっきりしているのは、英新聞に限っては、「新聞=紙が本体」という考えはすっかり廃れてしまった。前に、ガーディアンのラスブリジャー編集長が、「ネットのガーディアンと紙媒体のガーディアンのどっちが『本体か』と聞かれたら、どちらかというと『ネットの方』」と答えていた。数年前の話で、「ずい分思い切った言い方をするなあ」と受け止められていたように思う。

 今は何だか切れ目がなくなった。ネットも紙も同様に重要で、広告媒体としての位置づけや認知度などの意味からはネットの方が重要になっていると言っても言い過ぎではないかもしれない。

 で、今までは「主」だった紙媒体の編集とネットの編集を一本化する、つまり同じ一つの編集室で作る(インタグレーション、コンバージョン)動きが広がっている。英国だけでなく、米国や日本でもこの動きは注目されている。業界以外の人からすれば、「それでどうしたの?」的にも見えるだろう。ところが、これが結構大きい。それは、編集統合の過程で、例えば英新聞界の組織が変わっているし、紙媒体の新聞記事の書き方にまで影響を及ぼしているからだ。

 この経緯を書いた記事を次回、出したい。
by polimediauk | 2008-10-26 07:48 | 新聞業界