小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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「孫娘をやっちゃいました」で謹慎措置を出したBBC

 BBCのラジオ2という番組の不祥事がずい分大きなニュースになっている。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7696714.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7694989.stm

 若者たちに人気のラッセル・ブランドというタレントの番組(10月18日放送)に、別の人気者・放送番組のプレゼンター、ジョナサン・ロス(日本のアニメのファンとしても知られる)が登場した。

 番組が収録されたのは16日で、2人は「フォルティー・タワーズ」という往年のテレビのコメディー番組で、英語の分からないスペイン人のウェイターを演じた俳優アンドリュー・サックスの家に電話した。サックスが不在だったので、留守番電話にメッセージを残し、「ブランドが孫娘さんをファックした」と言った。ブランドは孫娘でダンサーとして働く23歳の女性と前に会ったことがあった。

 電話のメッセージは数回に渡り、途中でブランドがサックスに謝罪しようとするが、ロスがいつもまぜっかえす流れになった。書き取った部分を読んだだけだが、悪ふざけの少年2人が78歳のサックスの電話にメッセージを残し、遊んでいる雰囲気が分かる。もし私が聞いていたら、きっと笑っていただろう。「あなたの孫娘とやっちゃいました」と言ってしまうなんて、とても恥ずかしいし、ショッキングだ。「笑っちゃいけないのだろうけど、笑ってしまう」という人は多かったのではないか?まともな神経の持ち主なら言わないことを、言ってしまうのがコメディアンだし、それも台本なしみたいな感じで、大先輩となるサックスに非常に失礼なことを言ってしまう・・・タブーだらけの行動だからこそ、大笑いになる。もちろん、笑ってはいけないのだろうけれど。

 しかし、このニュースを最初に聞いたとき、非常に不快だった。サックスもスタジオにいて、一緒に馬鹿なことを言っているならフェアだと思うけれど、プライベートな空間にいる時のサックスに不意打ちを加えるなんて(そしてそれを放送するなんて)、おかしい感じがしたのだ。

 事の次第をBBCのサイトで知ると、結局のところ、コメディアン2人のおふざけだったんだなと思い、やや気が楽になった。それにしても、プラクティカル・ジョークというか、そういうことであっても、「何故これが番組の制作デスクの承認のもとに放送されたのだろう?」と疑問になった。

 まさにこの「何故どのように」という部分が現在調査対象となっている。

 BBCによれば、当のサックスは、「番組収録の日に、問題の箇所を放送していいかどうかと制作側から聞かれた」そうだ。サックスは「その箇所がよく聞き取れなかった」、「次の週、スタジオに行くから、今週はその部分を放映しないでほしいと言った」。

 昔の「どっきりカメラ」のように、芸能人に不意打ちをかけ、狼狽振りを見る・・・というのは1つの番組の形であろうけれども、今回のBBCの番組ではきちんとサックスの合意を取っていたのだろうか?何だか、よく分からない。

 ブランドとロスの行為が「けしからん」という人の声は大きくなり、BBCに対して不満の声が2万件は送られたようだ。新聞も書きたてるようになり、とうとう、29日、BBCのディレクター・ジェネラル、マーク・トンプソン氏が、2人を一時番組作りからはずすという発表をした。ロスは、毎週金曜日に放映される対談番組を持っている。通常であれば水曜日(29日)、これを録画するはずだったが、流れた。金曜日、何が放送されるのかはまだ分からない。

 どうもBBCの対応が遅すぎる感じがするが(こういうことが起きると、BBCは直ぐに自社内の調査を開始するが、こうした調査にいつもものすごく時間がかかる。決定権を持っていた人や関係者はそれほど多くないはずだが、数週間かかるのはざらである。弁護士との交渉に時間がかかっているのかどうか)、トンプソン氏の手紙を読んでいると、組織を守ることばかり考えているように見える(当たり前かもしれないが)。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7697354.stm

 たくさん視聴者から不満の声が出されたので動いた・・・という感じである。「騒がれたから動く」のでなく、コトが変な方向に行き出した22日、23日頃からすぐに赤信号が点くべきだったように思う。

 メールオンサンデーなど右派系メディアが騒ぎ出し、何とブラウン首相までもが「不適切」と発言している。通信・放送業の規制団体オフコムも調査に乗り出している。

 何だかものすごく大事に発展しているが、巨額の報酬でBBCの番組に出ているブランドやロス(特にロス)へのバッシングというか、ねたみ感情も国民の一部にはあるようだ。

 回りまわって、結局はBBCバッシングにつながってゆく。「貴重なテレビライセンス料をこんな人たちを雇うのに使っている」と・・・。


 ・・・と書いていたら、ラッセル・ブランドが担当してきたラジオ番組をみずから降りる宣言をした。ジョナサン・ロスも謝罪文を出した。しかし、ここまで神妙にされてしまうと、度が過ぎる感じがしないでもない。「非国民!」といわれて、謝罪したような。とにもかくにも、制作側が悪い感じがするのだが。後で謝罪するような番組を放送するのがおかしいのでは?と。BBCには編集方針規定もあるのだから。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7698417.stm

 まあ詳細はまた段々明らかになるだろう。

(新聞の話の続きは後日。)
by polimediauk | 2008-10-30 03:09 | 放送業界