ゲストコラム:谷口 誠(マッドマン)さん「米大統領選集計の疑惑とは?」
マッドマン谷口です。今月から英国で上映中の映画、舞台、音楽などの芸能について書かせていただきます。どうぞ、よろしく。
米国大統領選挙が数時間後に迫ってきました。
私は実は米国大統領がどのように選出されるのか、未だによくわからないんです。誰か簡単に説明してもらえないか、と常日頃思っているんです。
複雑で、全米の各州の色がひっくり返ったり変わって両党が陣取り合戦をするという、まるで日本の毎日放送系のあのクイズ番組『アタック25』みたいですよね(笑)。
ところが、その集計自体が正しくされておらず、操作されているという噂が昔からあるらしいんですね。いわゆる「陰謀論」というやつです。
Viictor Thornという米国人が2004年に書いた本で、幸いなことに日本語版では未だに入手可能です。次の本にくわしく書いてあります。「次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた」(徳間書店:副島隆彦訳2006年3月発売)。邦題はひどいですが名訳・名著です。
それから今年の5月にロンドン市内のICAシネマという独立系映画館でHBOという米タイムワーナーの放送局制作のドキュメント番組『RECOUNT』を見ました。これは衝撃的な番組で、2000年の米大統領選挙でブッシュが勝利した時に、正しく投票が集計されなかったことを実証しようという試みの番組。ブッシュの弟がフロリダで知事をやっているのですが、その彼が発注して(役員もしてたかな?)いるコンピューターメーカーの電子投票のシステムをフロリダ州では使っているのですね。だから、ブッシュに有利に集計されたと地元では言われています。
それでこの番組ではその会社を訪問して、プログラマーと一緒に実際に使われた機械で集計をするのですが、これがいくらでも総数が間違ってできてしまうことをその場で何度も実証するんです。日曜日の晩に1回だけ限定で1か月だけ上映したんですが、まわりの英国人の観客と一緒に「ええー!」とか「やっぱり!」って叫びながら見ました。
この映像はDVD化されないし、日本では上映されません。ネットでトレイラーを見つけたので時間のある方はご覧ください。
http://www.slashfilm.com/2008/05/08/recount-movie-trailer-2/
この映像で初めて知ったのですが、2004年に民主党の大統領候補だったジョン・ケリーはこの集計操作の不正を選挙期間中ずっと訴えていたようなのですが、米メディアが黙殺したようです。日本ではこの件は全く知られていませんよね。
日本でも映画「華氏911」で有名になったマイケル・ムーア監督もさんざんと「ブッシュ大統領は米国民が選んだ大統領じゃない。正しく集計されていないんだから」と長年言ってきましたけど、これはやはり、電子投票になっているから起きた(できた?)ことで、日本のように手書きで箱に入れていれば、さすがにここまでのインチキはできないですよね。ここ英国では地方で投票後の投票箱が夜中盗まれる、なんていう事件はあったようですけどね(笑)。
私のように在外投票として国際宅配便で日本に投票用紙を送る身としては、つくづく日本はアナログなやり方でよかった、と思います。今後はわかりませんが(不安)。
10月30日はそのフロリダに泣いた元大統領候補、アルバート・ゴア夫妻がフロリダを訪れたようだし、民主党のリーダーであるオバマとしては、ゴアの雪辱をフロリダで果たすというわけでしょう。フロリダというのは昔から米大統領選では重要な州です。
2000年、2004年の投票操作の噂を受けて、黒人暴動に備えているようで物騒な雰囲気の中投票がまさに今行われています。
前置きが長くなりましたが、今日紹介する映画は1か月前に全米で公開された同名ながら新作公開映画『RECOUNT』です。全米でヒットしてるのだろうか。
全米公開時にBBCの朝のニュースワイド番組「ブレックファスト」に主役で在英の米俳優ケヴィン・スペイシーが出てきてしゃべってまして、ここ英国での劇場公開を楽しみにしていたのですが、なんと、英国劇場公開前に11月1日(土曜日)9時(ロンドン時間)からチャンネル4で放映されました。
監督はジェイ・ローチ(『ミート・ザ・ペアレンツ』『オースティン・パワーズ』、ケヴィン・スペイシーが前副大統領アル・ゴアの主任のロン・クラインの役、疑義ゆえの最集計作業の監視役に超ベテランの社会派俳優ジョン・ハート、ジェームズ・べイカー長官役にトム・ウィルキンソンと豪華なキャスト。
この脚本は映画製作者が選ぶハリウッド映画協会による2005年のブラックリスト第一位で映画化の前に脚本が「たらい回し」になったようだ。ここまで徹底した「反ブッシュな映画」だから、そりゃ当然だろう。それでも制作が実現したのは、ハリウッドというのは伝統的に民主党やリベラルの温床だからでしょうね。各役者も気合の入った演技から趣旨に参加してることが伝わってくる映画です。
勝利確実だったアル・ゴアの票がコンピューターの画面から「奪われてしまう」。その行方を追う、というストーリー紹介だけにとどめておきます。パンチ式カードなんだよね、今の米国の投票用紙は。なるほど。映画には本物のジェシー・ジャクソン(黒人の元大統領候補)やパット・ブキャナン(米国で最も有名な保守派の政治家、評論家)もでてくる。
ケヴィン・スペイシーは「自分でも取材して調べたんだよ。この話を信じるかどうかは自由だよ。」と言っているが、こんなに反米なスタンスやコメントばかりしていて、この人は英国からいつか米国に帰れるのだろうか?
米国には昔から優れた政治映画がとても多い。米国の政治を理解しようと思ったら映画が1番である。
ロビイストの活動とか、メディアの裏、PRの仕方、弁護人(ATTORNEY)やユダヤ人の影響力など日本人にとっては書物ではなかなか理解できないことが今作でもはっきりと描かれている。映画を侮ることはできない、ぶ厚い学術書なんかよりよっぽど政治の仕組みや真実が描かれていたりする。それに日本には面白い政治映画がほとんどない。残念なことだ。
さて、マケインとオバマ、今回の大統領戦の結果はどうなるか。今回はちゃんと集計されるのだろうか?
(追記:英国でのテレビ上映情報は:http://www.channel4.com/film/reviews/film.jsp?id=169787 ご紹介いただいた映画はアマゾンUKによると、8月DVDで出ていましたが、米国とカナダだけで見られるバージョンとのことでした。残念ですね・・・。コメディー「オースティン・パワーズ」を作ったジェイ・ローチがこんな映画も作っていたなんて、驚きでした!こういう映画を本当は作りたかったのでしょうか。小林恭子)