小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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「ダイジェスト」の英国経済のこれからとラシュコフ


 ポンドは下がり続け、企業の大規模な人員削減の話がよく報道される。モノが売れないそうで、通常はクリスマス後になるセールが今商店街でどんどん始まっている。景気は悪くなるばかり、という感じである。

 これからどうなるのか?こんな時こそ、じっくり今後のことを考えるよい機会だというのが、「英国ニュースダイジェスト」の経済コラム「Mr City Focus 世界経済」である。

http://www.news-digest.co.uk/news/content/blogcategory/7/98/

 金融関係者の人が覆面で書いているコラムだが、長期の視点があって、非常におもしろい。何故これほど激震が起きているのかというと、

 (引用開始)第一に英国経済がウィンブルドン方式において「メガ金融機関や外資サービス業にビジネスの場を提供することでその手数料を得る」という構造を土台としているため、金融動向に振られやすいこと、そして第二にその金融が実際に大きく振れたことの2点の組み合わせから生じている。金融市場の変化は、実体経済よりも非常に早いスピードで動くことが特徴なので、この変化はインフレ懸念で抑制されつつあった国民の消費や、ピークアウト感が出ていた住宅投資をソフト・ランディングではなく、ハード・クラッシュに導きつつあるということを意味する。(引用終わり)

 こんな時にはどうしたらいいのか(心の持ち方)も書いてある。「悲観することはない」と筆者が考えるのは何故なのか?是非読んでみていただきたい。

 20-21日のオフコム会議の最後を飾ったのはニューヨーク州立大学でコミュニケーションを教えるダグラス・ラシュコフ氏だった。以下本人サイトとウキペディア。どんな人なのか?は紹介しにくいが、「サイバーパンク」運動の一人とも書かれている。

http://rushkoff.com/2004/01/15/class-begins-all-are-welcome/
http://en.wikipedia.org/wiki/Douglas_Rushkoff

 今、「ライフ・インコポレーテッド」という本を書いているそうである。結構小さくきゃしゃな感じの人だった。しかし、レクチャーをすると迫力がすごい。ちょっと思想的にはヒッピーっぽいかなとも思った。「人間らしさを取り戻そう」という話だった。現在の金融危機は1930年代の大恐慌と比較するべきではなく、ルネッサンスのことを考えるべきだ、と。資本主義によって奪われた人間性を取り戻すべきー。現代社会の話になって、長い間、資本主義社会では、会社がある価値を作り、これを人々に提供して対価を得ることで成り立ってきた。しかし、1980年以降、人々は次第に自分たちで価値を作るようになった。つまらない価値でなく、本物の価値を。また、テレビなどのメディアは人々を「非社交的」にしてしまう。つまり、テレビ番組なり、広告なりは、それを人々に見てもらうことを目的としている。もしテレビなり広告なりを見ていなければ、友達と話したり、遊んだりすることもできるはずだ。「オンライン広告はひどいものだ。グーグルの広告もそうだ。なぜかと言うと、人々はネットで何かを見ている時、既にもうたくさんお金を使っている。それは接続費かもしれないし、コンピュータなどの設備費かもしれない。そして、何かをやっている。それなのに、広告が邪魔をする。興味を移動させてしまうのだ。こういうことはアリなのだろうか?広告なんか、見たくないんだよ、ネットで何かをやっている人はー」。

 「企業側からすれば、人々が(ネットを通じて)(お金などの対価が得られるような、あるいは人や社会の役に立つような)価値を生み出すのは脅威になる。価値を生み出すのは企業であるべき、と考えるからだ」。

  「このオフコムの会議は、実はリーマンブラザーズとの共催のはずだったんだ。でもみなさんご存知のように、リーマンはなくなってしまった。現在は、ドットコムバブルが本当に終わったことを意味するのだろう。実体経済はスペキュレーションの経済についていけなくなったんだ。モノを1つ作る間に、スペキュレーションはその何百倍にもなっていたんだから」
  
 「今コンピューターの教育というと、いかにコンピューターを一消費者として使うかの話になる。何故プログラミングを学ぼう、どうやってコンピューターが動くのかを学ぼうとならないのだろう?」、「デジタル社会と言うとデジタル経済と同義語に使われるが、違うのではないか?」

 結局のところ、自分で考えると言うか、「箱の外から考える」というか、様々なヒントがあった。ラシュコフ氏の思想がどうこうというよりも、このところ考えていたことと合うような部分があった。超ベストセラー作家勝間和代さんの「自分メディア」にもやや似ている。勝間さんは新聞やテレビなど既存メディアは基本的には重要視しないと書いていたと思う。それよりも自分の五感を大事に、と。

 ラシュコフ氏の話にぴんと思ったのは、私たちが乗せられすぎているのではと感じていたせいもある。情報を追っているようで、実は「ものを買わせられている」だけになってはいないか、と。(オンライン広告の話など、聞いていてすっとした。みなさんも実はそう思いませんか?「仕方ない」とあきらめているかもしれないけれど、実は広告を見たくない人っていませんか?)

 ネットを一切使わないとか、テレビや新聞に一切に触れないということではないのだが、今貴重なのは、ネット、テレビ、新聞などから離れ、街を歩き、季節の変わり目を感じ、人に会い、生の議論をすることではないかと思ったりする。情報の伝わり具合が遅いことが新鮮だったりする。
 
by polimediauk | 2008-11-22 17:16 | ネット業界