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小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

北アイルランドの日曜紙に写真掲載差し止め令

 英領北アイルランドの日曜紙「ベルファースト・サンデー・ライフ」に対し、7日、裁判所が性犯罪者ケネス・キャラハンの写真を生涯掲載しないようにという命令を出した。報道の自由の侵害を危惧する人もいる。

 ベルファーストテレグラフ紙(昨年2月11日付)、インディペンデント紙(8日付)、またガーディアンのロイ・グリーンスレード氏のコラム(7日)を総合すると:

 1987年、キャラハンは当時21歳の女性に性的暴行を働き、殺害した。刑期を終えて刑務所から出ることになっていたが、保釈中に撮られた写真がサンデーライフ紙に出ることが分かり、これを阻止するため掲載差し止め申請をしていた。昨年2月、ベルファーストの高等法院が仮の掲載禁止令を出している。写真が掲載されることで男性の身に降りかかるかもしれない危険を防止するためだった。今回の写真(ピクセルをかけないもの)掲載禁止は「生涯」と言うのだから、徹底している。

 サンデーライフの編集長マーティン・ブリーン氏が7日、BBCアルスター・ラジオで語ったところによれば、予定していた写真掲載で、市民が男性の顔を認識でき、接触を避けることができる、つまりは公益がある、という主張だ。同じ番組に出ていたグリーンスレード氏はそんなことをすれば、男性が市民から追跡されると指摘した。ブリーン編集長は「そんなことはない」と否定。しかし、裁判官はもし写真が出れば男性の命があやうくなる、と判断した。

 裁判官は、男性の写真だけでなく、住所、勤務場所や旅行(移動)情報などの報道も禁止した。米国には、性犯罪者に関する一部情報を市民に対して公にする「ミーガン法」という仕組みがあるが、裁判官は、掲載で「サンデーライフは自分たち自身がミーガン法となる」、掲載が「公益に適うのかどうか」をまったく考慮に入れていないと批判した。

 ブリード編集長は市民には知る権利があり、写真掲載への支持を読者から得ていると語っている。判決は「厳しすぎる」、「メディアへの影響は大だ」。

 グリーンスレード氏のコラムについた読者コメントの中で、ベルファースト市民が、こう書いている。「近所に性犯罪者とされる人がいて、2-3ヶ月前に抗議集会があった。集会から2-3軒先の場所で、ある男性の家が焼かれた。『レイピスト(性的暴行者)』と家の前にスプレーで書かれてあった」。

 1993年、当時で11歳の少年2人が幼児を殺した事件があった。2人は2001年出所したが、名前も変えられ、今どこに住んでいるか分からない。身元情報に関する生涯の報道禁止令が出ている。今回は、21年前の犯罪、しかも一人の女性の殺人で生涯報道禁止とは確かに厳しい感じがするが。この件は、続きがあるかもしれない。

http://www.independent.co.uk/news/uk/home-news/paper-banned-from-printing-killers-photo-1232063.html

http://www.guardian.co.uk/media/greenslade/2009/jan/07/pressandpublishing-law

メディアへの影響を懸念するベルファースト・テレグラフの記事(昨年2月)
http://www.belfasttelegraph.co.uk/opinion/callaghan-ruling-could-set-dangerous-p.htmldent-13383829.html
by polimediauk | 2009-01-08 20:39 | 新聞業界