英コラムニスト、ブログの将来に震撼
「ブロガーがやってくる」
アメリカでは、ホワイトハウスのブリーフィングにもブロガーが入った、と最近ニュースになったが、イギリスでは、ブログはまだそれほど大きな動きにはなっていない。特に、日本で花開いている個人のブログも大きくは広まっていない。
何故イギリスでブログがアメリカ型、あるいは日本型のように流行にならないのか?
あくまで私見、推測だが、アメリカ型のような、メイン・ストリームで出ている議論とは、違った点から物事を見るという形でのブログ・ジャーナリズムで言うと、イギリスでは既存のメディアが既に「他の視点」を提供している、という要素があるようだ。まず、BBCが英国最大の公共放送機関として、様々な視点を紹介する番組を提供している。テレビの討論番組などで人々が思い思いの意見を述べる機会も多い。商業放送(といっても、衛星放送以外は公共放送となる)が、BBCの番組に挑戦するような様々な時事番組、ドキュメンタリー、参加番組を放映している。
日本の朝刊紙にあたる新聞は、中立であることを目標としておらず、それぞれ独自の論の展開をするので、これもまた、読者が様々な視点に触れて自分自身の意見を形作るのに役立つ。
日本型のブログがカバーする領域の中で、裏の話、本音、悪口も含めた言いたいことを言う・・といった内容の部分は、大衆紙と呼ばれるタブロイド紙がカバーしている。
ブロガー同士がつながる・・・といったコミュニティーの部分はどの英メディアでもカバーされないことになるが、この部分のニーズが出て広がるのか、あるいは既に存在しているメディア報道をさらに深くするための動きが出てくるのか、この先は、私自身、つかめていない。
いろいろなメディア関係者から聞いたり、コメントを読んだりする限りでは、アメリカ型ブログ・ジャーナリズム(既存のメディアが扱っていない真実を明るみに出す)の必要性、緊急性を、感じている人は、少ないようだ。ブログで暴露されるような真実、事実だったら、ネタを買ってくれるタブロイド紙に売るか、競争の激しい既存メディアの誰かがもう既に報道している、ということのようだ。
・・と思っていたら、3月11日付けタイムズ紙のコラムニスト、サイモン・ジェンキンズ氏が、ブログの衝撃を書いていた。
おもしろいと思ったのは、自分自身(大手新聞のコラムニスト)が、ブロガーとどこが違うのか?と自問自答をしている点だ。自分自身も、ブロガーと同じこと(その時々の時事トピックに関して、自分の独自の意見を述べる)をしている、と気がつく。自分だって、うかうかしていられない、と思いだす。
日本で、大きな新聞に毎週コラムを書いている人で、ブロガーの存在に脅威を感じる人がいるだろうか?そしてそんな脅威を正直に書くだろうか?
そんなことを思いながら、記事を読んでいた。http://www.timesonline.co.uk/article/0,,1059-1520138,00.html
一部を、紹介してみたい。(若干言葉の補足をしてあります。)
「明らかになったことは、既存新聞の世界をブログが一時的に嵐のように乗っ取ったということだ。」
「確かに、紙としての新聞のタイムズは一日70万部売れているが、世界中で、ネットでタイムズを読む人はこの5倍もいる。私や他のコラムニストが読者から受け取る手紙も電子メールの方が多くなった。新聞を作る作業が、スクリーンとキーボードを使っての電子的な会話、になってしまった。オンラインだと新聞をただで読める時代に、新聞を買うというのは贅沢なことになったのだろう。」
ジャーナリズムを教える学校では、既存ジャーナリズムの原則(事実の確認、調査)をネットのジャーナリズムにもあてはめようとしている。「しかし、ブログの魅力は、こうした原則から逃れることができる点にある。」
「既存のジャーナリズムの問題は、情報収集、信頼性といったものが、(ブログの)意見の叫び声よりも価値があり、お金を出して買ってくれる根拠になる、と思っている点だ。」
「(既存メディアの情報は)誰かが確認したり、書いたり、編集したものだ。既存メディアはお金を稼ぐ必要があり、そうでないとブロガーたちの情報の元(リソース)がなくなることになる。新聞の発行部数が減少し、海外支局が閉鎖される動きが世界中で起きているので、いつまで既存メディアが利益を出し存続できるのか、見通しはあまり良くない。意見を言うのは無料だが、事実(を集めるのには)はお金がかかる、というのは本当だ。」
「(自分にとっては、ブロガーの存在は)地面が動いたぐらいの衝撃だ。私の職業の中心部分と関わることが起きている。(ブログは)意見を売る。自分が(ブロガーより)高い位置にいるふりをすることはできる。シェークスピアの引用をすることだってできる。」
「しかし、実際、私自身もブロガーなのだ。発生するニュースからあるトピックをとりあげ、そのトピックに関しての自分の意見を、読者を説得するために書いているのだから。そして、自分はそれでお金をもらってもいる。ブロガーは、無償でやっている。」
ブロガーの存在に、コラムニストとして自分も全力で書こうと思う、という意思表示をしている。