小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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核兵器が消える日?―BBCラジオから

 世界中の核兵器が撤廃される日は果たして来るのだろうか?

 1月30日、BBCラジオ4の「ワールド・トナイト World Tonight」という番組を聞いていたら、核兵器を隔絶するための動き・運動が再燃していることを知った。

 以下の文字情報をご参考に。かなり反論が出ている。番組自体は撤廃支持論が強く出ていた印象がある。

http://www.bbc.co.uk/blogs/worldtonight/2009/01/is_it_time_to_ban_the_bomb.html

 他参考

http://www.globalzero.org/

 1月30日の放送分の番組にはレーガン政権時代に国務長官だったジョージ・シュルツ氏が出てきて、核兵器ゼロとなる時代が来るべきだ、と語っていた。

 一方、2月4日付けのタイムズ(紙)で、オバマ大統領が核兵器削減に向けてロシアと交渉する、という話がトップニュースになっていた。

http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/us_and_americas/article5654836.ece

 オバマ氏は核兵器削減を重要な政策目標の1つとしており、この記事によれば、米国とロシアが保有する核弾頭を80%削減することを狙っている。今年12月に失効する、1991年の米ソの第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる条約を締結するため、2国間で協議を開始する方針だそうだ。

 ブッシュ前政権時代、米国とロシア間で不信のもとになったのが、米国が計画を進めてきたミサイル防衛(MD)東欧配備だった。ブッシュ前大統領は「イランや北朝鮮のミサイルから欧州を防衛するのが目的」と説明してきたが、ロシア側はこれを対ロシア(ロシアの東欧における影響をけんせいする)と見る向きが多く、しこりとなってきた。オバマ氏はこの配備を保留そしてゆくゆくは中止する見返りに、ロシアが(核兵器保有を目指していると言われる)イランに対し、原子力発電所あるいは核兵器製造に必要な材料を提供することをやめて欲しい、と持ちかけるつもりだ、とタイムズ紙のブロンウェン・マドックス氏が書いている(何故かネットでは記事は検索できなかった)。

 しかし、お金がかかるミサイル防衛の東欧配備は、ロシアとの交渉有無に関わらずオバマ政権が望んでいたことで、果たして友好な交渉ツールになるかだろうか?とマドックス氏は懸念している。

 一方、先の番組に出演したミリバンド英外相は全廃には否定的だった、4日、英外務省が核軍縮へのステップを発表している。先のオバマ氏の核軍縮のニュースを合わせると、米英でタイミングを合わせてニュースを出した可能性もある。

http://www.fco.gov.uk/en/fco-in-action/counter-terrorism/weapons/nuclear-weapons/nuclear-paper/

 ラジオ番組の中でも、ミリバンド外相はいかに英国が過去核削減に成功してきたかを強調していた。

 英国は2007年、核弾頭の搭載可能な潜水艦発射弾道ミサイル「トライデント」に代わる次世代核兵器の開発を推進することを決定している。その後の金融危機に続く経済危機の発生以前から現在までに、核保有国でありながらイランに核兵器を持つなというのは説得力が弱いから英国自ら核兵器を持たないようにするべきだ、実際にもう必要ない、という声をよく聞く。(といっても、核ゼロになる日がすぐ来ることはないが。)
by polimediauk | 2009-02-05 02:50 | 政治とメディア