フィナンシャル・タイムズも生き残りで苦戦+英ネットサイトのアクセス数
ところが、つい最近また読んでいると、これが月10本になっている。ちょっと調べ物をすると10本はすぐだ。20本から10本へという激減振りに「?」と思っていた。
販売価格も2007年6月時点ではウイークデーで一部1ポンド(約140円)だったが、数回に渡り値上げをし、昨年11月からは1・8ポンドに。倍まではいかないが、ほぼそれに近い数字になった。
昨年末辺りから人員削減の噂が出ており、今年に入って80人の削減が決まった。このうちの20人は編集記者だ。FTの編集人員は550人なので、全体からすればそれほど大きな数字ではないが、働く側からすれば衝撃である。削減は3月から実施される予定で、ジャーナリスト組合(NUJ)がFTの経営陣との話し合いを行なっている。
今月に入り、週に3日の勤務体制を含めた「フレキシブルな勤務案」を経営陣が出してきた。6月から8月の間に週に3日から4日働く案や給与の30%を支払う代わりに1年間の長期休暇を取ってもらう案など。こうした休暇をとっても、「将来の雇用にマイナスの影響がない」ことが確約されている。また、3万ポンド以上の給与を貰っている場合、今年は賃上げなしとなる見込みだ。
マードック一家が経営するニューズ・インターナショナルも景気は良くない。サンデータイムズ紙が20人、タイムズ、サン、ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙がそれぞれ15人を削減する予定だ。
もっと厳しいのが全国紙ミラーに加え140以上の地方紙を出版するトリニティー・ミラー社だ。過去1年でほぼ1200人を削減している。地方紙の合併や、統合編集室を作って余分になった人員を削減した。1200人は昨年初頭時点での従業員全体の約13%にあたる。今年1月と2月の2ヶ月間で、トリニティー・ミラー社の地方紙の広告収入は、前年同時期よりも37%減少し、全国紙の場合は16%減少した。昨年の営業収入は前年よりも22%下落した。コスト削減もやっているが、収入の減少のスピードに追いつかない。
新聞の販売部数は長年下落気味だったが、広告収入の減少はいつかは底をつくという希望的観測から、とにかく現在の不景気を乗り切ることをどの新聞社でも主眼にしているようだ。
不況になったら人を斬る・・・残酷だが、これが良い意味の経済の活性化につながればいいのだが。収入が減っても人材を抱え続けたら、企業は倒産に陥ってしまう。といって、一定のスキルのある人を手放したら、人材としてもったいない。それでも、メディアで働きたい人は山ほどいる。いつでも人材確保には不自由しないのではないか。ある意味では、人気業界のメディアだからこそ、人をどんどん削減できるのかもしれない。別の見方では、メディア企業モデル(大きな設備投資、巨大な本社、大規模な人の配置など、とにかく大きさで勝とうとする)が崩壊しつつあって、今が過渡期ということもできるかもしれない。-将来はもっとスリム化した存在に?しかし、「人がコンテンツを作る」という部分は欠かせない。どうやってこれを経費をかけずに維持するのか?これはFTの悩むところでもあろう。
(上記の情報源は主にガーディアン紙、プレスガゼット紙他。)
一方、唯一、各紙が威勢がよいのはウェブサイトの人気ぶりである。
http://www.guardian.co.uk/media/2009/feb/26/record-traffic-for-guardian-website
ガーディアンサイトの1月のユニークユーザーが約2980万人(内英国内のユーザーが38%)、で、テレグラフが2500万(同36%)、タイムズが2289万(36%)、メールオンラインが2287万(32%)、サン・オンラインが2100万(37%)、インディペンデントが1000万人(43%)である(ABC調べ)。海外からアクセスする読者が圧倒的に多い。