小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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「GALAC」(ぎゃらく)4月号、英テレビ界の危機

 放送批評懇談会が発行する月刊誌「「GALAC」(ぎゃらく)4月号(6日発売)に、海外メディア報告として、英テレビ界の現状=ジョナサン・ロスの番組を中心にーを書いた。まだ実際の雑誌は手にしていないが、デジタル時代の放送批評を特集している。ユーチューブが人気になった今、どこからどこまでを放送批評とするのか、という問いである。

http://www.houkon.jp/galac/index.html

 英テレビ界では景気の悪い話が続く。民放最大手ITVが600人規模の人員削減を発表し、ファイブも87人ほどを削減する、という報道があった。

http://www.houkon.jp/galac/index.html
http://news.bbc.co.uk/1/hi/entertainment/7923563.stm

 チャンネル4も苦しんでおり、資金不足を埋めるために、BBCの受信料の一部をもらえるようかなりロビー活動を続けていたが、今のところ、BBC側の拒絶で実現していない。

 問題は、BBCの1人勝ち状態になりつつある点だろう。受信料の値上げ率がBBC予測よりは低かったとはいえ、とりあえず、毎年、一定の額が入ってくる。この中で、安心して予算を組めるのだ。

 ITVはどうもBBCと比べて低所得あるいは低クラスの視聴者をターゲットにしているように見える。切り裂きジャックをテーマにした刑事ドラマ「ホワイトチャペル」(1月放送)は、お堅い、アッパーかアッパーミドルクラスの上司と、ワーキングクラスの部下(年上)との確執を描いて見せた。あまりにもある意味では戯画化されていて笑ってしまうほどだったが、古臭い階級闘争をちらりと入れて、この年上の部下と同じクラスに属する人々(=大多数の人)を引き込みたいと思ったのか。

 BBCのプレスリリースによれば、日曜の夜放映されている、「Lark Rise To Candleford 」というドラマの3回目のシリーズの制作が決定されたそうだ。やや退屈な昔の田舎町のドラマだが、日曜の夜にはぴったりで、じっくり、かつくつろいで見れる。地味なドラマで、最初は人気が出るまでに時間がかかったが、今は評価が高くなっているようだ。最初は視聴率が取れなくても、地味なドラマでも続けられるのは、やはりお金があってこそ、だ。

http://www.bbc.co.uk/pressoffice/pressreleases/stories/2009/03_march/06/lark.shtml

 ITVもチャンネル4も、数年後には経営者が交代している可能性が高い。

 不況でBBCの1人勝ちという状況がエスカレートするのは、多様な視点を提供する、良い意味の競争という点から、良くない傾向だと思う。
by polimediauk | 2009-03-07 02:43 | 放送業界