小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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アフガン、BBCとITV,中谷氏の「転向」を巡って

 アフガニスタンでまた英兵が亡くなったが、一体、アフガンへの英軍派遣の意義や目的は何なのか?タリバン征伐・一掃とか、民主主義社会にしようとか、汚職を一切なくしようとか、そういうでかすぎる目標はとりあえず捨てて、もっとリアリスティックなことを考えたほうがいいのではないかー?

 ・・・と言ったのは、アフガニスタンにここ数年関わってきた、ローリー・スチュワート氏。ロンドンの王立国際問題研究所で、11日、講演があった。会場には中東問題に関心のある人が多数集まり、元外務大臣(サッチャー政権時)だったダグラス・ハード氏も話を聞いていた。

 スチュアート氏は元兵士、外交官で、イラク戦争前後のイラクで、開発などのアドバイザーとして働いた。仕事以外でも、イラク、パキスタン、アフガニスタンなどを旅した経験がある。書いた本はベストセラーになり、現在はカブール在住で、アフガニスタンを再開発する非営利団体を運営している。

http://en.wikipedia.org/wiki/Rory_Stewart

 氏によれば、米国はイラクでの経験をもとに、増派して安定化させることを狙っているが、「目標が壮大すぎる」、「アフガニスタンではうまくいかない」と述べる。

 また、具体的には、アフガニスタン南部(ヘルマンド)に集中している米英の駐屯を「思い切ってあきらめ、開発が進む北部に集中する」、「リアリスティックな目標を立てる」などを提言した。つまるところ、「アフガニスタンをちゃんとさせないと、私たち(米英)の手で何とかしないと、世界は大変なことになる」という、かつての帝国主義的な考えを捨てることを勧める。

 しかし、果たして、「アフガンをあきらめる」こと、つまりは英兵の「緩やかな死」を止めて、基本的には撤退策(あるいは大幅削減)をとるというのは、果たして実現するのだろうか?

 アフガンで働いた経験を持つ、中東専門家ピーター・マースデンという人が会場にいたので、聞いてみると、「あと1-2年で、方向転換はあり得る。理由は、戦死者が増え続けるので、世論が派兵反対になる。これを政府は無視できなくなる」と。本当にそうなるだろうか?

 もちろん、米英兵の死と同時に、タリバンも100人あるいは千人規模で、殺されているわけである。

 先週、中東から帰還した英兵が街を行進したが、これに異を唱えるムスリムたちがデモを行い、ひんしゅくをかった。「せっかくお国のために戦った人を、どうして批判するのか」、「抗議をするなら、政治家にすればいい」、と。私も最初そう思ったが、デモ参加者のプラカードを見ると、イラクで殺された人に思いをはせた文面だった。BBCの深夜のニュース番組「This Week」で、元保守党議員のマイケル・ポーティロ氏が、殺された側の視点に触れていた。この点を取り上げた数少ない(唯一の)コメンテーターだったと思う。

 BBCとITVが地方ニュースの報道で協力することになった。前に「BBCの1人勝ち」に少し触れたが、やはり、そういう面がどうしても出てくるように思う。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/wales/wales_politics/7940063.stm

 ビデオジャーナリスト、神保さんのウェブサイトを見ていたら、中谷教授という人が、「転向」宣言をしていたことが分かった。

http://www.jimbo.tv/videonews/000507.php

 金融危機は確かに大事件だが、それにしても、いとも簡単に「転向」してしまったかに聞こえたので、「??」と驚いた。転向の経緯を本にしているそうなので、早速買って、読まないといけないが。

 今回の金融危機は規模はでかいが、似たようなことはこれまでにも何度も起きているし、唯一大きく違う面があるとすれば、金融テクノロジーの発展ではないかと思う・・・・ということをFTのジリアン・テット記者が書いていた。テット氏は前からそう言っている。

 しかし、アメリカ礼賛(もしまだあるとしたら)は、私のような年代(50代を回ったばかり)にとっては、何だかなあ・・・と思うことだった。丁度5歳から10歳ぐらい年上(つまりは55歳とか60歳以上)の年齢の人の一部が、これに(過度に)染まっていたような気がする。

 「ニューズ・マグ」で、元毎日新聞編集委員の永井浩氏が、「アメリカかぶれ」について、書いている。ご関心のある方は・・・。

http://www.newsmag-jp.com/archives/531

 また、村上春樹に関して、知人が「世界は村上春樹をどう読むか」(文藝春秋社)を送ってくれた。2006年に発行されたもので、村上氏に好意的で、真摯な内容だ。その中のほんの一部だが、四方田犬彦氏の文章が心に残った。「・・・『中国行きのスロウ・ボート』という短編には、どうしてお洒落な在日中国人への言及はあっても、日本社会にとってより悲惨でより深刻な問題である、在日朝鮮人の問題は登場しないのだろうか。わたしはこの問いに対する答えをまだ見い出してはいない。・・・」とあった。また、氏は90年代から村上氏の本を読まなくなったのだが、ハルキ本を書くと売れるという編集者の誘いにも乗らず、それは、「ひとつには80年代に、アメリカという社会と本格的につきあうようになったからである。彼が描いているある種のアメリカが、急速に陳腐で凡庸なものに思えてきたことを、わたしは率直に告白しておきたいと思う」。小説の中のアメリカの姿に関して、私もそういう風に感じたことがあったので、なるほどなと思った。
by polimediauk | 2009-03-15 21:59 | 英国事情