小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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予算、金融問題で騒ぎすぎる英メディア

 22日、ダーリング財務大臣が下院で予算案を発表した。成長率や財政赤字見通しを述べたほか、超リッチな人々への課税額を50%にまで上げるなど、もろもろの案があった。今日までに、メディアはほぼこの件で持ちきりだ。どこもトップニュース扱い。しかし、テレビやラジオにひんぱんに目・耳を傾ける自分が悪いのか、どうもなんだか騒ぎすぎている感じがする。

 予算案の発表後、メディアがかなりの紙面・放送時間を割くのは毎度のことなのだが、今回は、やれ赤字が増えた、成長率見通しが前と全く変わったなどなど、ここぞとばかりに野党・保守党が攻撃することに加え、ブラウン政権+金融危機の影響に不満を持つ国民におもねようというのか、批判のオンパレードだ。昨日も、BBCの朝のラジオ番組「TODAY」で、司会のエバン・デービスがダーリング氏に質問をし、じっくり聞かずに反論ばかりする。これはTODAYのスタイルではあるのだけれど、「生煮えの予算案ですな」と言い出し、ばかばかしくて、スイッチを切ってしまった。デービス氏は元々経済記者で、知識が豊富なのは分かるが、財務省もかなり時間をかけて予算案を作っているはずで、ジャーナリストであるだけで、けんもほろろに斬ってしまうのは、なんだか傲慢な感じがした。「本当に分かって言っているのだろうか?」と。

 夜はBBCのテレビ「ニューズナイト」で、経済専門記者が、いかに赤字が増えて、将来の世代が苦労するかを説明する。口からつばでも飛んできそうな勢いで、数字を連呼する。今晩の「ニューズナイト」でも、司会のカーシティー・ウオークが、ある議員に、予算案の細かい部分や、財務相の予想の数字がおかしい、「これでは誰も信用できない」とするのに、相手は一生懸命答えようとしていた。この議員が「今、重要なことは、経済が大変な状態にあること、そしてここからどうやって抜け出せるかだ」と言っても、どうも話が通じない。「予想はあくまで予想」という議員の説明が、すっと通じないのだ。

 「誰も将来のこと(経済の行き先)はわからない」-この単純なことを、どうして一部のメディアが分かろうとしないのか、不思議である。揚げ足取りばかりに熱中している。

 日本では経済に強い人が多いだろうから、こんなばかばかしいことは起きてはいないとは思うけれど、英国では、ついこの間まで(昨年秋以前)、金融+経済はほとんどトップニュースにはならなかった。現在のような事態が生じるとは誰もわからなかったし、予測していた人は「口を封じられていた」のである(英中央銀行の幹部が、チャンネル4「ディスパッチ」で証言、20日放送)。現在も、「本当は誰も予測できないだろう。これが本音だ。でも、何とか来年までにはかなり持ち越しているはずだ」ということを、データか、直観かで「感じている」人は結構いるのかもしれない。でも、そう言う人の声は、表に出てこないのだ。メディアの一部が過度にヒステリックだから。
 
 テレビやラジオを消して、一人でじっくり経済関連の本を読んだり、周りの人の雇用状況を静かに観察したり、ショッピングに出かけて売れ行き状況を見る・・・そんな行動のほうがよっぽど真実に近づけるのだろう。
by polimediauk | 2009-04-25 07:07 | 英国事情