小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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議員経費問題で揺れる英政治界―小切手ジャーナリズム?

 英下院議員が特別手当制度を利用して別宅にかかった費用などを「不当に?」請求していたとする報道が、毎日、過熱化しているようだ。すでにキャメロン野党保守党党首が「必要以上に請求していた人は、その分を返すように」とお達しを出した。返却に応じない議員は党追放もありうるというから、厳しいが、BBCの政治記者ニック・ロビンソンがブログで書くように、

http://www.bbc.co.uk/blogs/nickrobinson/2009/05/my_shirts_hairi.html

 労働党と保守党の「どっちがより清いか」の競争になっている。BBCの13日報道分によれば、政府閣僚の一人はこれまでで最大金額の返却を決めたそうだ。「不当請求」報道があったために、議員個人の評判がガタ落ちし、返さざるを得なくなった。

 今回の騒動前にも、最近、議員の経費請求に不当な分が含まれているとして問題になっていた。

 大きなニュースとなったのが、スミス内相(女性)の件で、不透明な別宅手当や、本人が不在時に夫がケーブルテレビで観たポルノ番組の代金10ポンドを必要経費として計上していたことが発覚した。スミス氏にとって非常に決まりの悪い展開となった。スミス氏の一件、および今回の「不正経費請求の議員リスト」(テレグラフが5月上旬スクープ掲載)には、何らかの勢力の暗躍が垣間見える思いがする。

 たとえばスミス内相の件だ。問題となったケーブルテレビだが、私も使っているバージンメディアのサービスだった。

 バージンメディアはブロードバンド放送やネットの使用、電話など広い意味の放送・通信サービスを提供している。自宅でチャンネルを選んで映画を見ると、よく月に送られてきた支払い請求書には、視聴料金が表記される。この映画視聴料金なり、通話料なりといった細かい数字は、ひとくくりの数字(その月の料金合計)の一部として、請求書の下の方あるいは次のページに表記される。

 通常、いわゆる電話料金も含めたケーブル料金を経費としてどこかに請求する時、この合計をそのまま出すのが普通ではないかと思う。例えば高熱費を経費としてもし請求した場合、政治活動に関係ない分を引くというよりは、合計額そのままを請求するだろうと思う。細かくどこからどこまでが政治活動かは判別しがたいし、そこまで細かくはやらない。

 実際、多くの議員の経費請求で、バージンメディアと契約している人は、そのままの合計額を請求しているのではないか。

 そこで、ビデオ視聴分に注目して、しかもそれがポルノであり、しかも妻である議員がいない時に視聴されたものであること・・・・こんなことに気付く人、これをメディアに報告する人は相当であると想像される。内務省でスミス氏に逆恨みをしている人か、あらさがしをしている保守党系シンパの人か?いずれの場合でも、新聞やテレビで大騒ぎになるには、誰かがこれを政治的に利用しようと思っているに違いないと私は思う。

―小切手ジャーナリズム?

 BBCによれば、今回のスクープ合戦の勃発前から、NGOなどによる情報公開請求に応じるため、下院内では議員経費の詳細を調査中・取りまとめ中だった。その結果は7月頃、発表予定だったと言われている。
 
 しかし、その前に、テレグラフ紙が何らかの形でこうした情報を得て、報道した。テレグラフはお金を払って情報を得たのかどうかを明らかにしていないようだ。

 もし情報提供者にお金を払ったのなら「小切手ジャーナリズム」となる(小切手、つまり金で情報を買う)のだろう。果たしてこれは由々しきことかどうか?

 おなじみのメディア評論家ロイ・グリーンスレード氏がガーディアン紙上のブログで述べたところによれば、情報をお金で買う小切手ジャーナリズムを高級紙がやることは珍しいそうである。(しかし、ニック・デイビーズ氏の「フラット・アース・ニュース」によると、そうでもない感じがするけれども。例えば特にサンデータイムズ、あるいは時にガーディアンが間接的に人にお金を払って小切手ジャーナリズムをする具体例が書かれている。)それでも、かつて高級紙がやった有名な例は、睡眠薬サリドマイド事件関連の情報だったという。これはサンデータイムズ紙である。

 今回のテレグラフのスクープだが、グリーンスレード氏によれば、情報を盗んだのであれば窃盗とも言える。また、誰かがリークしたのかもしれないし、見返りとしてお金を払った可能性もあるだろう。しかし、新聞は1つのビジネスでもあるという面から、一定の評価をしている。

http://www.guardian.co.uk/media/greenslade/2009/may/08/mps-expenses-dailytelegraph

http://www.guardian.co.uk/media/greenslade/2009/may/13/mps-expenses-dailytelegraph

 実際、テレグラフはこれで随分と売上を伸ばしたそうだ。 

ーイブニング・スタンダード

 ロシアの新興財閥アレグザンダー・レベジェフ氏が買収した夕刊紙「イブニング・スタンダード」が思い切った販促キャンペーンを展開している。その内容の紹介は「ニューズマグ」に書いたが、

http://www.newsmag-jp.com/archives/1225

 おもしろいのが、「ごめんなさい」シリーズ。「読者をみくびっていてごめんなさい」というような文句の入った広告を次々と電車やバス向けに出しているという。賛否両論あるようだが、何だか愉快である。
by polimediauk | 2009-05-13 23:43 | 政治とメディア