小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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英地方メディアの危機(3)放送業界の動き(上)

 BTが全従業員の約1割にあたる1万5000人を年内に削減することになった。昨年も1万5000人を削減していた。当初1万人削減の予定だったが、5000人増えた。

 http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/8049276.stm

 削減分のほぼ全員は英国内の従業員との事。グローバル部門の不振が一因だそうだが、どこも厳しいなという感じがする。

 英国の新聞、放送業界も収入、予算、人員削減などの合理化の波にさらされている。削減はその企業のサバイバルのためと見なすことができるが、ひるがえって日本ではどうなのだろう?日本の新聞の一部の販売料金は大体どこも同じようで、「広告収入減・経営難のため値上げした」ということは近年あったのだろうか?

 新聞業界の台所事情が苦しくなっても、販売価格の値上げや(大幅)人員削減などがないと、一般の国民の側からすれば、大変さが伝わらないような気がする。

 英国の新聞はインディペンデント、ガーディアン、フィナンシャル・タイムズ(FT)などが近年値上げをしている。値上げによってインディペンデントは一時読者が減ったと聞くが、外から見ていて、なんだか分かりやすいなと思う。

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 このところ、日英で共通の地方メディアの危機に関して書いている。新聞協会報(5月12日付)掲載分に若干付け加えたのが以下である。今回は放送業界となる。

存続の危機―英地方メディア〈3〉
地方ニュース削減の英放送業界―多チャンネル化、広告収入減少で
 

 英国では、デジタル・テレビの普及率が2007年で80%を超えた。多チャンネル放送の普及による競争の激化と広告収入の減少で、放送各社は厳しい経営状態となっている。公共放送最大手BBCの運営資金となるテレビ受信料を他社と共有する案や、民放同士の合併案などが取りざたされている。民放最大手ITVは、大きな広告収入が期待できない地方ニュースの制作を今年から縮小した。地方制作の番組をもっと見たいという視聴者の要求は強いが、広告収入の穴を埋める新たな収入源が確保されない限り、地方の声は縮小するばかりだ。

―公共放送の伝統

 BBCによる公共放送の伝統が長い英国では、BBCのみならず民放のITV,チャンネル4(政府が所有するが広告で運営費をまかなう)、ファイブなどが、一定の時間あるいは本数の「ニュース、時事、事実に基づいた番組、児童番組、ドキュメンタリー」を「公共放送」(PSB)枠で放映することになっている。視聴率や広告収入が低いあるいは制作費が高額と見込まれる場合でも、社会全体に重要と思われる番組が制作・放映されるようにするためだ。しかし、メディア環境の激変でこうした体制の維持が困難になっている。

 デジタル技術の発展や進む多チャンネル化で個別のチェンネルの視聴率は相対的に低下している。上記4社の主力チャンネルの視聴者数シェアは01年で80・5%だったが、07年には70%を切り、今年3月には約60%となった(視聴率調査団体BARB調べ)。BBCの主力チャンネルBBC1とBBC2の合計では01年で38%が今年三月で28・5%に、ITVの主力ITV1は前者が26・8%、後者が18・1%。ネットで番組を見る人も増え、各社はオンデマンド・サービスや番組の放映と同時にネットでもストリーミング放送を実施している。ネットを通じた番組配信が日常化した。ネットが生み出す収入は失った広告収入を補うほどには成長していないが、それでもネットに投資せざるを得ない状況がある。(最終回4につづく)
by polimediauk | 2009-05-14 18:38 | 放送業界