小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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英地方メディア(4)放送㊦ 地方制作番組の縮小 

 東京の家でテレビを見ていると、画面の端に「アナログ」と表示されていて、これが消えない。アナログ放送であることを示すものだが、今使っているテレビは最近買ったものなので、2011年から完全デジタル化されるということを示すシールも貼られている。そして、時々、完全デジタル化となることを伝えるコマーシャルも、放送されている。

 アナログテレビを持つ人にとって、デジタルテレビを買うあるいはチューナーをすぐ買うようにというプレッシャーになりそうだ。さすが日本、というか、一斉にデジタルに進むよう、ありとあらゆる手段が講じられている。すごいなあ・・・と思うばかり。逆に考えると、こちら(テレビを見る人)の情報も通信の送り手にかなり掌握されていることになるのかな、と思ったりする。

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 英国地方メディアに関する最近の記事の最終回(新聞協会報5月19日付掲載)である。


存続の危機―英地方メディア〈4〉放送㊦
ローカル番組を縮小 
 経営難でITV,BBCと動画で提携


 2012年の完全デジタル化移行を目前に、英放送業各局は生き残りに懸命だ。民放のチャンネル4は資金難を解決するため、BBCのテレビ受信料(約30億ポンド、約4307億円)の一部を共有したいと交渉したがBBC側から拒否された。現状維持では存続の危機に瀕するため、民放のファイブとの合併やBBCワールドワイドとの提携も検討中だ。

 民放最大手ITVは3月決算で赤字に転落し、六百人の人員と番組制作費の一割を削減すると発表した。株価はこの2年で80%下落した。

 全国各地の放送局の集合体というルーツを持つITVは、「公共放送」枠で、地域に根付いた番組や地方ニュースの重視を義務付けられているが、07年、放送・通信監督団体オフコムに対し、「公共放送の義務から解放されたい」として、地方ニュース提供の放棄あるいは大幅縮小を申し出た。しかし、公共放送信奉が強い英国識者の反感を買った。

 公共放送枠の維持の困難さは他の民放にも共通する。1月末、公共放送の新たな枠組みに関する報告書の中で、オフコムは各局の地方番組縮小案を支持した。縮小しなれば各局とも経営が行き詰まるのは明らかだった。

 ITVは今年から11の地方の制作拠点を9に整理・減少するほか、週に5時間20分の地方ニュースを4時間に、またロンドン以外での番組制作を全体の50%から35%に減少する予定だ。

 英国の地方ニュースのほとんどは、BBCまたはITVの系列局が放送しており、ITVの縮小計画は地方ニュース全体の縮小に直結する。ITVの穴を埋めることができる民放は見当たらない。

 そこで、BBCとITVは3月、地方支局の共有や、BBCが制作した動画をITVが使えるようにするなど、地方ニュース部門での提携に合意した。

 BBCはまた、自局ニュースサイトの動画を地方紙が自由に使えるようにし、人気が高いオンデマンド・サービス「アイプレイヤー」の技術を競合他社と共有できるようにする見込みだ。

 BBCが地方メディアでの存在感をこれまで以上に強めれば、多様な視点の提供という公共放送の目的の一つを脅かす危険性がある。オフコムは報告書の中で、地方ニュースを専門に提供する独立団体の設置を提言した。これはBBCの地方ニュース独占化を防ぐ一手ではあろう。(終わり)
by polimediauk | 2009-05-21 09:57 | 放送業界