小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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アフガン戦争への英軍派遣に反対は増えているか?

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 アフガニスタンへの英軍の駐留(今8000人ほど)で、死者が相次いだために、アフガンに軍を送ること自体への疑問、改めて意義を問う声が英国内で強まっている。メディア報道を見ればそんな論評が多いし、28日付のインディペンデント紙に掲載された世論調査でも、即時撤退を望む声が過半数(52%)。それでも、7月中旬頃のガーディアン紙の調査では、この戦争の支持者が反対者よりやや多く、また、継続したICM調査(この記事にある)でも、「アフガニスタンを好転させている(違いを作り出している)」と考える人が33%いる。

http://www.guardian.co.uk/uk/2009/jul/13/public-opinion-poll-afghanistan-war

 現時点で、「犠牲者が増えたので」+「アフガン派遣の反対の声が高まっている」・・・とだけ結論づけるとすると、「いや、まてよ」とも思う。「例え犠牲が出ても、やるべきことをやって、例えばタリバン征伐など、全うして欲しい」、「もう少しがんばって欲しい」と考える部分が意外と根強いのではないかと思うのだ。

 先日、英兵の遺体を棺に入れて運ぶ車の通過に追悼の意を示す儀式が注目を浴びている英南部の町、ウートン・バセットに行ってきた。そこでは、やはり、遺族や関係者、元軍人などが来るわけだから、アフガン派遣を支持する人が圧倒的に多い。しかし、全国各地から他の町の住民も詰め掛けていること、メディアが集まっているので、頭がクールなはずのほかのジャーナリストたちにも聞いてみたのだが、「犠牲者が出た=即撤退を」という声には必ずしも結びついていない感じがした。つまり、軍事行動に出る、という国の守り方が、もう何百年も続いていて、当たり前のことになっている。もちろん、日本生まれの私にとっては、ピンと来ない。しかし、そうなのである。戦勝国はすごいものである。ずーっと続いてきている。

 これがまた、イラク戦争の場合は、大量破壊兵器がない・なかった・ないのではないか、また、違法の戦争だったという認識があって、戦争の反対デモは非常に大きくなった。しかし、アフガンの場合、「テロ防ぐ」という大儀に関しては、広く認められているようなのだー世論調査を見る限り。

  アフガンの英軍死者――ゆっくりどんどん死んでいるーに関しては、もう何年も前から、英国内の一部で問題視されていたが、一般国民の間で強く認識されるまでにはずい分時間がかかった。やっと最近になって、人々の意識に上ったかな、という感じだと私は見ている。

 ウートンバセットの様子は「ニューズマグ」に今日明日、出す予定。

「アフガン戦争 英兵の遺体を見送る人々とともに①」
http://www.newsmag-jp.com/archives/1742

 
by polimediauk | 2009-07-30 20:03 | 政治とメディア