小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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マンデルソンが下院に復帰? 労働党党首になるかもしれない・・・

 現在貴族院議員(一代貴族)で、企業相のピーター・マンデルソンが法律の改正により貴族院議員を辞職し、下院に立候補する可能性がある、とサンデーテレグラフ紙が2日付で伝えている。

http://www.telegraph.co.uk/news/newstopics/politics/labour/5955600/Secret-plan-for-Lord-Mandelson-to-return-to-Commons-in-Labour-safe-seat.html

 ちょっと読み出すと、「マンデルソンの友人」が言った話になっているので、マンデルソン氏自身か秘書がテレグラフ紙の懇意の記者に故意にリークしたように見える。証拠があるわけではないが、日曜紙のお気に入りの記者にネタを提供する、というのは1つのパターンになっている。なので、これもその一つに見える。自作自演・・・という感じである。

 秋に各政党は党大会をそれぞれ開くが、それまで現在のブラウン首相が継続するとして、その後の党首(総選挙の後かもしれないし、その直前かもしれない)は一体誰になるのだろう?いくつか既に名前が挙がっているが、どうも小粒である。また、今までのニューレイバー路線から現在の労働党が後退するわけにはいかないだろうから、これを次ぐ人となると、マンデルソン、というのがやはり少なくとも話としては非常におもしろい。ブレア氏が影で糸を引いているかもしれない。もしブレア氏がEUの大統領になれば、そしてマンデルソンが英国の首相になれれば、ブレア氏としては願ってもない素晴らしい状況となるの「かも」しれない。

 前に、新聞各紙が偽名を使いながら、通信社記事を自社記事として出す、という一つの習慣について書いた。その時は「めちゃくちゃ」だが、「そういうこともあるだろうな」と達観したようなことを書いたのだけれど、最近、「やっぱりおかしいだろう」と思うようになった。

 それは、「ニューズオブザワールド」紙をめぐる盗聴疑惑の事件を見てもそうなのだが、とにかく「お金儲けが最大の重要事」という感じが英メディア界にある(一説には、マードックがそうした、と見る人もいる)。

 例えば、日本から来て英国で暮らし始めると、どの人も英国の顧客サービスの貧困さに驚くと思う。どっちが客なのか分らない感じ。しかし、最近思うのは、このサービス精神あるいは客に対するまともな感覚の欠如が、果たして、小売業「だけ」の話なのだろうか?と。

 社会の木鐸として機能する、あるいは何か人のために役立つ情報を出す、正確な情報の提供に心砕く・・・そういうもろもろのことをおろそかにした場合の英メディア界は、とんでもないことになっていないのかな?と。

 この盗聴疑惑に関し、下院の委員会に関係者・当事者がメディア界から呼ばれ、議員にたくさんの質問を受けた。その受け答えを見ていると、「誰も本当のことを言っていない」感じがした。真実の追究をあまり重要とは思っていない人たちばかりに見えた。こういう感じはメディア界だけでなく、社会の様々な部分にもあるように思える。自分自身が英社会にどっぷりつかってしまった数年間。改めて、一体何が起きているのか、考えてみたいと思っている。
 
by polimediauk | 2009-08-03 03:08 | 政治とメディア