小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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英新聞、有料化の動き+ブログの将来、朝日の「Journalism」

 サンデータイムズがサイトの購読有料化へ動いている、という噂がでている。チャンネル4が昨日報道したところによると、サイト運営のための人員を募集しており、念頭に置いているのは有料化らしい、と。

http://www.channel4.com/news/articles/business_money/is+paying+for+online+news+the+future/3294462

 また、フィナンシャル・タイムズのバーバー編集長が取材を受け、「10年ほど前に、新聞サイトは無料購読であるべきという誘惑にのったのは間違いだった」と述べている。FTは今11万人近くの有料購読者がいる。年間日本円にして2万5000円から3万円近くを購読料として払う(私も毎月払っているが、年で考えると結構大きいかもしれない。額が大きい割には、読むサイトの記事の本数が少ないことに。やはり紙のほうが読みやすいのだ、じっくり読むには)。

 一部有料化(記事ごとにチャージするマイクロ・ペイメント、月ぎめあるいは年間購読、特別なコラムなどだけにチャージなど)が少し増えるという動きが起きているのだろう。

 バーバー氏のインタビューで、チャンネル4の記者が「BBCのサイトは無料。それに若者層は特に有料でニュースサイトを読むという習慣がない。変えられるのか?」と何度か聞いていた。しつこいぐらいに。バーバー氏は、「ブランド化でできる」と答えていた。

 サイトのブランド化の強化、それでお金を取る・・・こういう論理や言葉遣いはこれまでに何度もいろいろな人から聞いてきた。番組の中に出ていた米教授は、「最終的には読者から見放される」と厳しかったが、エコノミストやFTの有料購読者である自分はやはりブランド・記事の内容などに対してお金を払っている。まさにブランド化がきいている。これが一般紙に通用するかどうか?やり方しだいではないかと思うーとバーバー氏が言っている。

 ところで、このブログを書き出して、ほぼ5年になる。英国事情と英国メディア界の業界話を主に書いてきたが、ここ数年で、ずい分とメディアに関する情報が出るようになった。ライブドア+ホリエモンがきっかけで、メディアに対する関心が、日本で非常に高まったと思う。ネットメディアや既存メディアのネット戦略に関しては「メディア・パブ」さんの情報が深く、早い。在英の日本の報道機関もずい分と直接情報を取るようになった。自分としては書き尽くしたような感がある。

 今後は、このブログでは私が書いた記事の紹介やちょっとした気づきなどを主にし、ある程度まとまったものは諸処の紙媒体あるいは市民メディア「ニューズマグ」や「日刊ベリタ」などに出していきたいと思っている。引き続き業界の動きなどにご関心のある方にはメールマガジン(あるいは単にメール通信)などで情報を出していくことを考えている。英メディア界の動きは在英日本人やメディアの将来を憂う人など、特定の読者が関心を持つトピックなので、そのほうがいいかなと思っている。

 早速だが、朝日新聞の月刊誌「Journalism」次号(8月10日ごろ発売)に、陪審員への取材を行った事例について、書いた。日本の裁判員制度では、裁判員への取材は事実上閉じられている。同様の状況にあるのが英国。何かしらのご参考になるかと思う。この中で、BBCの調査報道記者に取材した。彼自身が無実の罪で受刑していたという変わった人物。発言には迫力があった。どこかで見かけたら、どうぞ頁をめくってみてください。(インタビューは日を改めて「ニューズマグ」などに掲載予定。)
by polimediauk | 2009-08-05 18:12 | 新聞業界