小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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英メディアとツイッター

 ツイッターを使ってみると、どの人・媒体をフォローするかにもよるのだが、もし英メディアを選んだ場合、速報+自社サイトに誘導するツールとしてよく使われていることが分る。この分野に詳しい人はもう既に分りきったことではあろうけれど、メールよりも何故かつながりやすいツイッター(携帯版)から飛ぶのが簡単で、改めて「そうだったのか」と思っている。

 英メディアとツイッターという観点から、新聞協会報(9月1日)号に書いた文章に付け足したのが以下である。(このトピックにご関心のある方は、時事通信の湯川さんの「デジタルてんこもり」コラムのツイッターの項も参照していただきたいーーもしまだご覧になっていなければ。「リアルな情報が集まった」図書館としてのツイッターの可能性は非常におもしろいと思う。)

ツイッター取り込みに躍起の英メディア

 米国で2006年に始まったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「ツイッター」が注目を集めている。オバマ米政権が情報発信に利用し、6月のイラン大統領選挙では、市民の生の声を伝えるツールとして活躍した。利用者の急増やサイバー攻撃などで一時利用停止になる事態も生じたが、マーケティングツールとしての機能など、その利用方法が拡大している。英メディアは読者・視聴者を取り込む手段としてツイッターに注目している。

 ツイッターは140文字以内で日々の感想やつぶやきなどをつづる無料のネットサービス。ツイッターのサイトから名前やメールアドレスなどを入力して登録し、「今、何をしているの?」という問いに答える形で心に浮かんだことなどを発信する。他の利用者の発信情報に直接メッセージを送ることもできる。コンピューターや携帯電話を使って、短い文章や写真、動画などを特定の人に、あるいは不特定多数の人に向けて発信するいわゆる「マイクロブログ」の一つだ。

 ツイッターの投稿は短い文章が主であるため更新が容易で、ほぼリアルタイムの通信が可能だ。米コムストア社によると、6月時点でツイッター訪問者は4450万人。利用者は1000万~2000万人といわれている。日本では08年にサービスが始まった。

 オバマ米大統領や人気歌手、俳優など著名人もツイッターを利用しており、著名人や家族、友人とつながる社交・交流ツールとして人気が出た。

 キーワード検索が可能で、情報検索ツールにもなる。災害時の情報収集に役立つ上に、グーグルなどの既存検索エンジンと比較すると、瞬時の、そして生の情報が入る点が大きな違いだ。インド・ムンバイのテロ(08年11月)では、現場にいた市民が目撃情報を携帯電話を使って発信した。

 6月のイラン大統領選では、政治ツールとしてのツイッターの存在を内外に知らしめた。反政府デモの報道を嫌い、厳しい報道規制が敷かれたイランでは、外国メディアはほぼ取材が不可能になった。そこで活躍したのが、ツイッターを使った、市民による直接の情報発信だった。米英メディアはこれに飛びつき、ツイッターは新たなジャーナリズムのツールともてはやされた。

 しかし、送られてきたツイッター情報の信ぴょう性の確認が難しく、「当日撮影された動画」が実は数日前に撮影されたものであったことが判明した例が複数回あったと米ニューヨーク・タイムズ紙(6月29日付)が反省を込めて伝えた。同記事は「『情報源を確認する』というジャーナリズムの最初のルールが守られなかった」と書いた。

 英国では政府が官庁の情報発信力強化を狙いツイッターの利用を官僚に勧める手引きを作成している他、メディア界はツイッターを通じて視聴者・読者に逐次、情報提供を行い、自社サイト訪問や番組視聴につなげようと躍起だ。ガーディアン紙はニュース、スポーツ、教育、メディアなどの各分野をツイッター登録し、利用者に各分野の最新情報が流れる仕組みを構築している。フィナンシャル・タイムズやテレグラフ、経済誌「エコノミスト」、BBCなどの放送局も同様のサービスを提供する。BBCはツイッター利用者からの感想を適宜ウェブサイトで紹介する。「ツイッター利用者=テクノロジーへの関心が高く、流行を作っていく層」という認識が共有されており、メディア各社・各局は取り込みに力を注ぐ。

 ツイッターは現在、利用者の位置情報をつぶやきに埋め込むサービスの提供を準備中だ。実現すれば、地理情報に沿った広告や特定の地域に関するつぶやきを集めた超ローカルなブログの開設などが可能になる。企業向けに情報分析ツールを提供する案も計画中といわれ、黒字化へと歩みを進めている。
by polimediauk | 2009-09-06 19:06 | ネット業界