小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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広告②、ティーンエイジャーとネット、ダン・ギルモア氏のメディアの未来

 前に英広告の話を書いたが、朝日の「Journalism」という月刊誌(私も時々書かせてもらっている)の9月号で、「広告はどこへ行った」という特集があった。ネットに広告が流れている、そして新聞テレビなどの既存メディアが広告収入の減少で悩んでいるというのは、米英そして日本でトレンドになっているけれども、その理由が具体的に分りにくかった。つまり、広告業界側の本音が見えにくかった。これを解明したのが、この特集だった。

 新聞・テレビメディアにいる人にとってはかなり手厳しいコメントが入っている。でも、本当にこれが広告業界の本音なのだから、こういう現実を前にどうするか?という頭で動いていかないといけないのだろう。

 最初の記事が日本アドバタイザーズ協会専務理事の小林昭さんの話だ。新聞広告に対して否定的な理由は、単価が高く、かつその効果が良く分らない点だという。「800万部、1000万部出ていますからといわれても、それでは納得できません」。マスメディアの広告料が高すぎると指摘して、「テレビも新聞広告も、ビジネスモデルというか商売のやり方がまったく変わっていません。これだけ世の中が大幅に変わっているのに変わっていない。変えようとしない広告会社も悪い。変えないほうが楽だからです。いいかげん、広告主もバカじゃないから気づきますよ」。
 
 マスコミへの注文として、「まずは単価を下げてほしい」という。「フレキシビリティーをもって対応してしてほしい」そして「できれば、伝わった相手のプロフィルまで分るデータがほしいですね」。

 次にあるのがトヨタの宣伝部長の話。ウェブが安いから、ウェブで広告を出す(自社サイトの拡充を含め)という。

 他にも、私自身が目からウロコのコメントがたくさんあった。

―十代のユーザーとネット

 前に、投資銀行ゴールドマンサックスに、15歳の英国人少年が自分たちの世代のネットの利用についてレポートを書き、これが話題になるという事件があった。多くのメディア関係者にとって驚きだったのは、ツイッターを十代の少年・少女たちがあまり使っていない・興味がないと言ったことだった。日々の出来事に関してつぶやきあうなんて、つまらないと。書きたいことがない、と。

 オブザーバー紙(25日付)のJohn Naughtonの「Surprisingly, parts of cyberspace are teenager-free zone」もこの点に注目した。この記事によると、米コムスコア社の調べではツイッターのユーザーの中で17歳以下の人は11%のみ。また、米ニューヨークタイムズの調べではSNSのマイスペースの14%、フェースブックの9%がティーンエイジャーたちだそうだ。

 ちなみに、オフコム(英国通信庁)が定期的に出す「通信市場レポート2009」によれば、2008年5月から2009年5月の間に前年同期比で73%利用者が増えたのがフェースブックで約1900万人へ。ツイッターは同時期で約150万人から260万人へ。SNSは25-54歳の利用者が特に増えているそうだ。

 さらに基本情報を付け足しておくと、英国のデジタルテレビの普及率は89・2%、インターネットのブロードバンド普及率は2009年第1四半期で68%、ロンドンではこれが78%に上昇する。(「英国ニュースダイジェスト」9月10日付ウイークリアイコラムを参考にした。)

ーダン・ギルモア氏によるメディア救済とは?

 少し前に、米コロンビアジャーナリズムの教授と元ワシントンポストの編集者が米国のジャーナリズムの将来に関して、100ページに渡るレポートを出したことを紹介した。このレポート、まだ最後まで読んでいないのだが、米ブログジャーナリズムの先駆者ともいえるダン・ギルモア氏が論評を書いている。(別件だがDan Gillmorは、ダン・ギルモーとやったほうが近い感じがするけれども・・・。)

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/cifamerica/2009/oct/19/leonard-downie-newspapers-local-journalism

 「ニュースに救済策はいらない」・・・という題のコラムだ。ギルモア氏が反対しているのは政府のお金を救済に使うこと。報告書は「地方ニュース基金」を作ることを提唱していた。通信業者やテレビ、ラジオの放送免許保持者、ネットプロバイダーなどからお金を集めて、これを地方ニュースの拡充に使う。「地方自治体にお金が流れ、自治体から特定のメディアにお金が配られる」・・・こんな展開にギルモア氏は反対だ。「一体誰がどの自治体にお金が行くべきと判断するのか、最終的には中央政府が決めることになるのでは?」とギルモア氏は問う。

 市場に任せる方を同氏は好むのだろうなあと思う。また、新しいタイプのジャーナリズムはもう既に作られつつある、というのが同氏の持論でもある。

 ギルモア氏は、どうせ政府がお金を出すならば(税金を使うなら)、光ファイバーを全米の隅々にまで走らせることに使ったほうがいいのではないか、と提案する。

 ここ2-3日、ギルモア氏の「光ファイバーをどこにでも」案が頭から消えない。例えば英国の家は殆どの場合、セントラル・ヒーティングがついているのが当たり前になっている。光熱費をどこまで払えるかにもよるが、非常に心地良い住空間ができあがる。メディア環境に目をやれば、どこの家庭のテレビもデジタル・・・というまでには行っておらず、BBCアイプレイヤーも見れない家庭だって多い。アイフォーンなどのスマートフォーンも誰でも持っているわけではない。ネット環境・住環境・一定のレベルの食生活とある程度の収入・健康・・こんな基本部分があるかないかでずい分と人の幸福度や思考の広がり具合が変わることがいくらでもある。いろいろ、考えさせられるコラムだった。
 
by polimediauk | 2009-10-26 20:50 | ネット業界