ニュースをどこで拾うのか+キャドバリーの買収劇
時事通信湯川さんのコラムを見ていたら、テレグラフ記事の紹介で、「ツイッターを使って英経済は13・8億ポンドの損失」というエントリーがあった。
10月27日付。
http://it.blog-jiji.com/
ツイッターを勤務時間に使っている間に、経済が損失を受けているという計算である。本当にツイッターが流行っている感じがするけれども、先の調査では十代の少年少女でなく、20代以上のいわゆる大人がやっているそうだ。
その前のエントリーで「一般ユーザーってブログを読むものなんだろうか」も興味深い。以下は引用だが:
ニューヨークのベンチャーキャピタリストのFred Wilson氏は、ブログが既にマスのメディアになった、とブログで書いている。
でも本当にそうなのだろうか。どうも自分の周りを見渡しても、ブログから情報を入手している人などほとんどいない。RSSリーダーが何であるかを知らない人も結構いる。さすがにネットでニュースを読むようになったとはいえ、読むのは新聞社のニュースサイトの記事くらい。
一般的な日本企業ってこんな感じなんだろうか。それとも自分の職場(報道機関のデジタル部門)が世の中の流れから取り残されているのだろうか。(引用終わり)
英国の一般ユーザーというか、自分も含めた多くの人がニュースに触れるのはラジオ、テレビが多い感じがする。放送局のニュースには信頼性が置かれている。私も、ツイッターでは目利きの人のフォロワーになることで、一歩先のニュースのネタを集めることができるという利点はあるものの、最も一般的な方法はテレビ・ラジオのニュース。生の声がでるし、分りやすい。特にラジオは何か別の作業をやりながら聞ける。BBCのラジオ4という放送局に周波数を合わせて、暇があればとりあえずスイッチを入れる・・・ということを多くの人がやっていると思う。私も定時のニュースにはよく耳を傾けている。ある種、楽である。ただ聞いていればいいのだから。テレビのニュースも、リラックスして見ているだけで刺激がある。
―キャドバリー
「英国ニュースダイジェスト」(10月8日付)に書いた分に付け足した原稿が以下である。英国はチョコレートが好きな人が多い。何せ、駅のプラットフォームにチョコレートなどの自動販売機がある(壊れていることも多いけれど。)
最大手キャドバリーが買収される話が最近続いている。調べてみると、大型買収がまた流行ってきている・・・という文脈で書いた分析が多かった。主にBBCやエコノミストを参考にした。また、10月上旬時点の情報を基にしていることをご了承願いたい。
世界製菓市場の覇権争い?
英キャドバリーに買収提案
チョコレート製品でおなじみの英大手製菓会社キャドバリーに対し、9月上旬、米食品大手クラフトフーヅが買収提案を持ちかけた。キャドバリーは提案額が低すぎるとしてこれを拒否。世界の製菓業界再編にもつながると見られる買収は果たして実現するだろうか?
―キャドバリー(Cadbury Plc.)とは
世界でもトップクラスの規模の製菓会社。1824年創立。2008年5月まではキャドバリー・シュウェップスが社名だったが、米国の飲料ビジネスをドクター・ペッパー・スナップル・グループとして独立させ、現在の社名に。デーリー・ミルク、ミルク・トレーなどのチョコ製品が特に著名。60カ国で約4万5000人を雇用。2008年の収入は53億84000万ポンド(約7700億円)。
ーキャドバリーの歴史
1824年:ジョン・キャドバリーが紅茶、コーヒー、チョコレート飲料の販売をイングランド地方中部バーミンガムで開始する。後,ロンドンでも販売。アルコール飲料を飲まないクウェーカー教徒であったジョンは、アルコールの代替物として紅茶などの嗜好品を販売したという説がある。
1854年:ビクトリア女王にチョコレートとココアを販売するメーカーに選ばれる。
1873年:ココア使用製品が好評となり、紅茶の販売を停止。
1915年:ロングセラーとなるチョコ製品ミルク・トレーが販売開始。第1次世界大戦中は衣服やチョコなどを前線に送る。
第2次大戦中:チョコレートはぜいたく品とされ、政府の管理下に置かれる。
1949年:チョコレートの配給制が解除される。
1989年:飲料会社シュウェップス社と合併し、キャドバリー・シュウェップス社となる。米国でシュウェップス・ビバレッジ社が設置され、キャドバリー製品はハーシー・ブランドで販売された。
2008年5月:米国の飲料ビジネスが本体と切り離され、ドクター・ペッパー・スナップル・グループ社として独立する。本体はキャドバリーPlcに。
2009年9月7日:米食品大手クラフト・フーヅが102億ポンド(約1兆5600億円)で買収を持ちかけるが、過小評価していると判断したキャドバリー側はこれを拒否。
―買収をもくろむクラフトフーヅ(Kraft Foods)とは
1903年、米イリノイ州でチーズの卸売り業者として設立。1988年にフィリップモリス社に買収される。同社が2000年、ナビスコ社を買収し、クラフト・フーヅと合併させる。クラフトチーズ、フィラデルフィア、ナビスコ、リッツ、オレオなど著名ブランドが多数ある。食品・飲料会社としては、ネスレ、ペプシコに続き世界第3位。世界中に約170の製造工場があり、約9万8000人が勤務する。
ー5億ドル以上の大型買収の件数(資料:エコノミストより)
―2002年:15
―2006年:81
―2009年7月末時点:21
―最近の大型買収
-8月31日:米ディズニー社がマーベル・エンタテインメント社を買収
-9月1日:米eBayがスカイプ社の株65%を投資家集団に売却
-9月8日:仏ビベンディ社がブラジルの携帯電話会社GVTを買収
-同日:独テレコムと仏テレコムが傘下にある英国の携帯電話会社(Tモバイルとオレンジ)の合併を発表
駅のプラットフォームにもチョコレートの自動販売機が置かれているほど、チョコ好きの国民が多い英国。紫の包み紙でおなじみのキャドバリー・チョコを販売する、世界でもトップクラスの菓会社キャドバリー社が米食品大手クラフトフーヅ社から、先月、買収提案を持ちかけられ、大きな話題となった。
オレオビスケットやケンコー・コーヒー、フィラデルフィア・チーズで知られるクラフト社の提案額は102億ポンド(約1兆5600億円)。1株あたり745ペンス(提案直前の株価と比較すると30%増)の買収となる。しかし、キャドバリーは自社を「過小評価している」として、この提案を拒否した。
クラフトの買収提案の背景にあるのは、世界の食品・製菓市場の覇権争いだ。もし同社とキャドバリーが一緒になれば、合計売上高が500億ドル(約4兆6600億円)に達する巨大食品企業になれる。クラフトはキャドバリーが独占的位置を占める英国の製菓市場への進出はほとんどしておらず、逆にキャドバリーが弱いスカンジナビア諸国やブラジルなどでビジネスが繁盛している。キャドバリーが強い、欧州やラテンアメリカのチューインガム市場をクラフト社のビジネスに加えることができる点も大きな魅力といわれている。
また、ガムを製造するリグリー社を昨年買収して世界の製菓市場の14%を占めるようになった米マーズ社(マーズ・チョコレートが著名)に対抗できるのも、クラフト社の狙いとされる。マーズ社とリグリー社の提携で製菓市場のトップの座を奪われたキャドベリー側も、これを機に奪回をもくろむ。
9月30日、英国の買収に関する規制機関「買収委員会」は、クラフト社に対し、11月9日までに、正式な買収提案をキャドバリー側に提出するよう促した。期日までに提出されない場合、クラフト社はキャドバリー社に次の6ヶ月間、買収案を持ちかけることができなくなる。クラフト社は以前の提示案よりも高額の数字を提案するか、今回は買収をあきらめるかの二者択一を迫られている。どのような展開になるのか、予断を許さない状況だ。
―大型買収が戻ってくる?
今回のクラフト社によるキャドバリーの大型買収提案劇で、好景気時代に続いた巨額買収ブームが戻ってきているのではないか、とする見方が一部で出ている。キャドバリーは提案を拒否したが、他企業も提案を出す見込みを察知した株式市場は同社の株価を上昇させる反応を示した。
最近の注目買収・売却案件では、米プロクター&ギャンブル社が31億ドル(約2780億円)で薬品部門を売却、ディズニー社がマーベル・エンタテインメント社を40億ドル(約3590億円)で買収などがある。「現金が豊富な企業にとっては関心がある企業を買う最高の時」(英コンサルタント会社役員)ともなり得るのだ。
クラフト社が期日までに新たな買収額を提示できない場合、ライバルの製菓会社ネスレやハーシーズが買収額を提示してくる可能性もある。チョコレートをめぐる熱い戦いの行く末が見逃せない。