小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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政治の嘘発見サイトと「裸のシェフ」


テレビで、ウエブサイトで、変化を起こす

 英国のテレビ局の1つ、チャンネル4がらみの動きが、30日、2つあった。

 まず、英国の総選挙の投票日が5月上旬に迫り(まだ正式発表はされていない)政治家の言っていることが嘘か本当かを検証するためのウエブサイト「ファクトチェック」FactCheckを立ち上げた。www.channel4.com/news/microsites/F/FactCheck/index.html

 2003年米国で開始された同様のオンライン・サービスをまねたもの。政治家がスピーチや記者会見、プレス・リリースなどで発言、公約した内容の信頼度を分析する。

 「選挙キャンペーン中、政治家による多くのコメント、スピーチなどが出るが、どれが真実なのか、一般国民には分かりにくい。ファクトチェックのサイトで必要な情報を提供したい」と、チェンネル4のニュース・時事番組のチーフ、ドロシー・バーンズさんはガーディアン紙のインタビューの中で述べている。

 サイトはチャンネル4にニュース番組を提供しているITNが担当するという。

 元のアイデアは昨年の米大統領選挙で活躍した米版「ファクトチェック・オルグ」FactCheck.orgだ。ディック・チェイニー氏がこのサイトについて言及した後からアクセスが急激に増えた。ワシントンにベースを置くチームが運営しており、かつてAP、ウオールストリートジャーナル、CNNなどのジャーナリストだったブルックス・ジャクソン氏が責任者となっている。

 もう1つは、日本でも料理番組「裸のシェフ」シリーズで知られる(シェフが裸になるわけでなく、新鮮な食材をシンプルに料理するなどの意味)ジェイミー・オリバー氏が学校給食の現場に入り、何とか子供たちに質の良い給食を食べてもらえるよう奮闘した番組「ジェイミーの学校給食」(今月上旬放映)の結果、政府が給食費の大幅増額を決定した。

 今後3年間で2億8千万ポンド(約560億円)の資金がイングランド地方の学校給食費として追加されることになった。現在子供1人に使われる学校給食の食材費は37ペンス(約74円)だが、これを小学校では50ペンス(100円)、中学校では60ペンス(120円)に増やすという。栄養基準のガイダンスも即導入され、秋からは実際にどのように運用されているかを政府が検査する。

 BBCのインタビューで、教育文化・スポーツ大臣のルース・ケリー氏は、「3ヶ月前の大臣就任以来、個人的にも学校給食に力を入れたいと思っていた」として、イングランド地方の学校給食の質を変えるために学校を訪ねたオリバー氏の番組が給食費増額の直接のきっかけではないと述べたが、ブレア英首相も英紙でオリバー氏の功績を賞賛するなど、政府は何らかの形で給食向上プランを出す必要に迫られていた。

 オリバー氏は、「増額はうれしいニュースだ。20年前に実行されていたらもっと良かったと思うが」と取材陣に述べている。番組放映後に立ち上げたウエブサイトfeedmebetter.comを通じて、加工食が中心の学校給食の質を上げることを提唱し、27万人からの賛同の声を集めた。これを官邸に提出。多くの議員らも賛同の声をあげており、あっという間の展開となった。

 野党自由民主党のフィル・ウイリス氏は、BBCオンラインのインタビューの中で、「労働党が政権を取ってから8年になるが、学校給食は改善されてこなかった。有名シェフの番組がないと政府が重い腰をあげることなかっただろう」と述べた。

 オリバー氏の番組は、今月末、再放映された。

 テレビの威力、ウエブサイトを通じての反応の迅速さ。放送とネットを組み合わせて何らかの結果を作り出した、おもしろい例となった。
by polimediauk | 2005-03-30 19:27 | 放送業界