小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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6年前のブログで番組出演をキャンセルされた神田敏晶さん

 ツイッターで元気の出るつぶやきを発信しているジャーナリストの神田敏晶さん @knnkanda (著書「Twitter革命」など)が、ある番組への出演をスポンサー(東京電力)からの依頼でキャンセルされていたことが分かった。そして、なんとその理由は、神田さんが6年前に書いたブログ(らしい)のである。

 この経緯を神田さん自身がブログで書いている。

 6年も前のブログでニッポン放送?東京電力?からドタキャンをくらう話。
http://knn.typepad.com/knn/

 ブログによると、年末に番組出演依頼を受け、これを承諾。今月11日、出演のために出かける直前、放送局から電話をもらい、キャンセルの件を聞いて驚愕する。放送局担当者は、キャンセルの件を留守電に残していたと説明する。その断り方自体がすでに悪い感じだが、後にメールを受けたところ、「スポンサーの東京電力さんから、過去の発言のチェックが入りまして今回のゲストは見合わせてほしいという要望がありました」といわれる。

 過去の発言とは6年前の自分のブログの中での、劣化ウラン弾に関する部分だったらしい。

 神田さんのブログで、次の箇所にほろっと来た。

―こんなブログのエントリを書くことによって、従来のマスメディアからはクライアント保護の立場から、ボクを使ってもらえなくなることも覚悟しなければならない。(中略)幸い、ボクには失うものなど何もない。そして、ジャーナリストである。常に、自分の信じる真実を公表していきたい。―

 それにしても・・・こんなことが起きるなんて、まったく驚きである。日本はなんとすごいのだろう。英国でもこういうことは起きているのだろうか?もし英国でこういう類の話が表ざたになったら、新聞の1面で大きく批判されるだろう。報道・表現の自由を侵すことになる。第一、「6年前の」「個人のブログ」での、しかもブログ内の記事を読めば分かるが、東京電力を名指しで批判しているわけでもないのに、こんなことになったのである。スポンサーの力が、なんと強いのだろう。(なんだか、報道の自由がないと悪名高き別の国の話のようだ・・・どの国かはご想像にお任せします。)

 これは東電だけの話ではないだろう。「東電なるもの」の尻の穴の小ささ(失礼!)+官僚主義的発想+スポンサーとしての振る舞い(何をしてもよい)というのは、一種のパターンではないのだろうか?

 というのは、日本で会社に勤めていたころ、多かれ少なかれ、こういう体験をした。つまり、「東電なるもの」的振る舞いは常に蔓延していた。

日本の新聞やテレビが、この一件を大きく扱って(批判して)ほしいものだ。

 追加:以下の記事の担当者が東電に取材したところ、一切キャンセルしてほしいというリクエストを出していないことがわかりました(のようです)。するといったい誰が嘘をついたのか?ニッポン放送担当者?何だか錯綜してきたようです。(付け加えると、こういうことはよくありそうですーつらいですね。)

http://getnews.jp/archives/44291
by polimediauk | 2010-01-11 22:50 | 日本関連