小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk

「新聞研究」12月号よりーBBCのメディア戦略の行方③「聖域」にメス

 元時事通信の湯川さんが、ライブドアサイトに「テックウェイブ」というブログサイトを立ち上げた。

 http://ow.ly/1n46Am

 以下、引用

 ライブドアの担当者さんは「広告でメディア事業が成立するという確信を持つに至りました」と自信いっぱいに語ってくれるのだが、実は僕自身はまだ半信半疑である。ほかの人、ほかのコンテンツなら成立するかもしれないが、僕が作り出すコンテンツ程度では難しいんじゃないか。僕の個人ブログもそれほどアクセス数が多いわけじゃないし。

 でも、とりあえずこのブログメディアを使って、ライブドアが確立した広告ノウハウの実証実験をしてみたい。当面は僕とオカッパ本田の二人体制。ゲストエントリーも入るとは思うが、とりあえず二人体制で半年以内に黒字化が可能かどうか試してみたい。

 半年後には、その結果をここで公開したい。われわれが身を持って実験するので、もし本当に成功すれば、フリーのライターやブロガー、メディア企業とその社員たちに、あとに続いてもらいたい。日本のネットを良質なコンテンツであふれるようにしてもらいたい、と思う。(引用終わり)
 

 期待大である。

 テレグラフ紙でデジタル部門にいた男性が、同社を去ることになった。以下の記事参照。どことなく、気概が似ているような気がしてならない。

 特に、この人が既存メディアを「でかくて単調なメディア」(平面でヒエラルキー的)と呼び、自分が作るメディアは「フラット度が高く、スリムで、開発力が高い」とする部分だ。また、こうも言っているー「未来はもっと多彩だ。未来は個々のジャーナリストの手にあるー大きなメディアではなく」。

 http://paidcontent.co.uk/article/419-telegraph-digital-dev-chief-quitting-for-more-entrepreneurial-future/

 ライブドアの広い意味での新メディア宣言
「プロの書き手に場を提供したい」――ライブドア、専門ブログメディアを横展開
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1001/15/news038.html

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 BBCの話の3回目(次が最後の4回目)。

「新聞研究」12月号よりー「1人勝ち」BBCのメディア戦略の行方③

―「聖域」にメス

 BBCに対し、他のメディアから改めて民業圧迫の声が2009年になってあがった。メディア環境の激変による他社・他局の地盤沈下が原因だ。慢性的に続いてきた読者と広告主の新聞離れとネットへの移動、多チャンネル化、ネット利用者の需要の洗練化(最新の情報を最新の形で出していかないと利用者が満足しない=例えば携帯電話への読みやすい形での情報提供)が起きていた。ダブルパンチとなったのが、昨年9月以降のいわゆるリーマンショックからの金融危機や広告の不景気度の悪化だ。特に打撃を受けたのが収入の80%ほどを広告に依存していた地方紙や地方ニュースの制作を公共放送枠で義務化されている民放ITVだった。非営利団体が運営するが活動費用を広告収入から得るチャンネル4も収入激減に悩んでいた。

 地方ニュースが手薄になれば「裁判報道が減少し、自治体の腐敗を監視する報道もできなくなる」「ジーナリズムの危機」ひいては民主主義の危機(ガーディアン紙アラン・ラスブリジャー編集長談)とする声はメディア界のあちこちで聞かれた。

 一部の放送局はBBCとの提携を模索した。広告収入源による資金不足で「調査報道ができなくなる」としたチャンネル4のアンディー・ダンカン最高経営責任者(当時)はBBCの商業部門との提携やライセンス料収入の共有の道を模索したが、BBC側から却下された。

 一方のBBCは、2008年、地方ニュースをカバーする自局のウェブサイト充実させることで、地方紙のウェブサイトを保管する計画を立てた。予算の見積もりまで立てたが、地方紙の複数の発行元からの大反対にあい、断念した。

 株価が過去5年間で80%以上下落した民放大手ITVが地方ニュース制作からの撤退の意向を通信監督機関「オフコム」に漏らし、状況の深刻さがあらわになった。地方局の集合体となるITVが「地方を捨てるほど苦しいのか」と衝撃が走った。

 2009年6月、政府のデジタル政策白書『デジタル・ブリテン』はブロードバンドサービスのユニーバーサルアクセス化など情報通信インフラの整備や国民の「デジタル参加」の推進などを定めたが、BBCにとって驚くべき提言が含まれていた。

 それは、デジタル化支援関連予算としてBBCが計上してきたライセンス収入の3・5%相当額(年間約1・3億ポンド)を、他局(事実上ITV)で放映する地方ニュースの制作・放映資金に回す、というもの。ニュースの制作は新設の「独立コンソーシアム(independently financed news consortia=IFNCs)」が手がける、とした。IFNCsの想定参加者は放送、新聞、通信業者など。

 ライセンス料はBBCが創設当時から独占してきたが、「聖域」にメスが入る動きだった。BBC側は「番組の質に影響が出る」と真っ向から反対したが、10月、スコットランドの放送局STVと英領北アイルランドのUTVが、それぞれ地方色を強化したニュース制作を公的助成を受けて開始したいと表明した。白書は2011年までにIFNCsによる地方ニュース制作の試験版をスコットランド、ウェールズ、イングランド地方で開始すると書いた。あくまで試験版で、ライセンス料自体が瓦解したわけではないが、瓦解への第一歩と見る人は多い。(続く)
by polimediauk | 2010-01-17 17:33 | 放送業界