NHK, 日刊ベリタ
私が記事を書いている媒体の1つに「日刊ベリタ」というオンラインの新聞がある。
課金制度をとっているので全文が読めないようになっており、申し訳ないが記事の紹介をすることができない。
しかし、日本のネット新聞がどうなっていくのかを知る良い材料にも思えるようなインタビューが毎日新聞に載っていたので、紹介したい。
編集長に聞く:
日刊ベリタ・永井浩さん 「ネット新聞」の目指すもの
フジテレビとライブドアの争いの中で、インターネットとジャーナリズムの関係が議論を呼んでいる。ネットは新聞に代わるのか。ネット上のジャーナリズムにはどんな展望と課題があるのか。元毎日新聞海外特派員で、インターネット新聞「日刊ベリタ」編集長の永井浩さん(63)に聞いた。【中島みゆき】
--ライブドア参入問題が波紋を広げています。
実は、ベリタもライブドアにニュースを提供しています。昨年11月から国際ニュース面に1日1本。他のサイトとの差異化を図るために、ベリタの記事に商品価値を認めてくれたと理解しています。
--ベリタ創刊の経緯は?
01年の米同時多発テロ後、ジャーナリズムに関心ある市民が集う「アジア記者クラブ」の有志を中心に設立されました。既存の大手メディアでなければ果たせない役割はあると考えていますが、既存メディアがジャーナリズム本来の役割を十分に果たしているかといえば、そうは思えない。マスコミ不信は確かにありますし、多様な言論・情報の提供という点でも横並びの要素が多分にあります。
現在の日本のマスメディアの状況が端的に現れたのが、9・11ではないかと思います。多くのメディアが愛国主義一色の米メディアの転電に終始した。別の角度からの報道があるはずだが、批判だけしていても仕方ない。そんな時、インターネットというメディアに着目しました。ネットを使えば、海外のさまざまなメディアや情報源にアクセスできる。特別のインフラを持たなくてもニュースを発信できる。大手メディアが伝えなくても必要とされるニュースがあるなら、その部分をオルタナティブなメディアとして発信しようと考えました。
--オルタナティブとは?
例えば、イラク戦争について、沖縄の米軍基地がイラクへの出撃拠点として機能しているという視点の報道はあまり見ない。昨年8月に米軍ヘリが宜野湾市の大学に墜落した時も、現地と本土のメディアには温度差があった。宜野湾市長の講演内容を掲載したところ反響があり『沖縄基地とイラク戦争』というブックレットを出した。昨年11月のファルージャ総攻撃についても、イラクのネット新聞と日本での報道は違う。イラクに息子を派遣される母親たちがブッシュ再選に反対しているという米国のベリタ記者のニュースも載せた。市民の目線で世界を見ることで、大手メディアが見逃しているニュースを拾い上げることが可能になると考えています。
--情報の送り手はどのような人ですか。
海外で仕事をしたり、海外のニュースに接する機会の多い人など100人弱が登録しています。プロとしての訓練を受けた人は少ないので、普通の新聞社でデスクと記者がするようなやり取りを綿密にします。原稿料が十分に払えない中で何度も直しを要求されて意欲を失う人もあるようですが、思いがけない記事が送られてくることもあります。
--韓国では「オーマイニュース」など市民メディアが政治にも影響を与えています。
韓国のネット新聞は民主化闘争の成果です。ハンギョレ新聞という市民の力で作り上げた新聞があり、その延長線上でさまざまなネット新聞が力をもってきた。日本でも見習おうという動きがあるが、血を流して民主化を勝ち取ってきた韓国とは土壌が違う。日本の風土に根ざした市民レベルのサイトを構築する必要がある。
--ベリタの目指すものは?
多様なネットワークが広がる中で、情報が集積する一つのハブになればと考えています。国内ニュースについても、大手紙の記者やフリーの人が組織を超えて書きたいものを書く共通の場にしたい。経済基盤の確立も大きな課題です。ネットはまだ始まったばかり。既存のメディアとの葛藤(かっとう)やせめぎ合いがあるのは当然だが、それぞれの特徴を活かしながら、ジャーナリズムが健全に機能してゆけばよいと考えています。
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◇日刊ベリタ
国際報道を中心としたインターネット新聞。02年6月試験版公開、03年3月有料化開始。購読登録者は約2500人。記事1本50円前後(4月から月額1000円の料金制に移行)。http://www.nikkanberita.com/
毎日新聞 2005年3月29日 東京夕刊