新聞業界

新聞の関係性+コンテンツ有料化と英新聞界(上)「新聞協会報」より

 新聞社のウェブサイト有料化導入に関する議論が百出だ。アップルのアイパッド(iPad)の発売が英国(米国以外の世界数か国)では4月末となり、電子端末機器を通じての有料化にも大きな期待がわいている。このトピックは非常に話の流れがはやい。先日も、ニューヨークタイムズ(2011年から有料化導入予定)が、書評記事を有料配信するというニュースがあったばかりだ。

 英国の新聞について言えば、以前はあった大きな抵抗感が今はなくなったのが、不思議と言えば不思議。「有料化もありだぞ」という論が随分と出たからだろうか。

 このトピックに関して、新聞協会報に書いた記事を下に貼り付けようと思うのだけれど、その前に、協会報の3月2日付におもしろいコラムがあったので、紹介したい。
 
 「週刊メモ」という1面下のコラム。マーケティング調査会社MIFTの調査を紹介している。この中で、MI世代(20-34歳男性)は「活字を読むの好き」だが、新聞をあまり読まないという。新聞離れの理由は「料金がかかる」「読むのに時間がかかる」「他のメディアから得られる情報で足りている」「余計な情報が多い」=つまり、新聞を非効率な情報源ととらえているからのようだ。ところが、新聞を読む人に聞くと、新聞を効率的な情報を得られる存在と見ていた。

 筆者は、「欲しい情報だけを効率的に検索してくる、そんな情報行動に親しんだ若者が閲読習慣から離れ」たことに目をつける。つまり、効率良い情報源と見なされたら、対価を得る可能性がある、と。

 最近、私は新聞のことを考える時、そして、大人気のソーシャルメディアを考える時、「関係性の高さ・低さ」(relevance 、irrelevance)という言葉が浮かんでくる。

 ソーシャルメディアが何故人気になったかの分析は、既に詳しい人がたくさんいらっしゃるのだけれど、私はある情報が「自分に関係あるか、ないか」ではないかと思う。「自分の」趣味、発言、友達、ネットワークー。よく、「つながりたいという感情があるから、人気が出た」と言われるけれど、これを私は、人と人とが手をつなぐ、つまり、広い意味の友人を作ることととらえていたので、ピンとこなかった。

 しかし、自分に関係のあること、つまり身近に感じられることだと、人は興味を持つものなのだと思う。例えば、事件・事故のニュースにしたって、自分が行ったことがある場所や、住んでいるあるいは通勤している場所・建物だったら、興味の具合がグンと違う。

 自分に関連することが書かれてある新聞―。主義主張に同感できて、その新聞独自の切り口による世情分析がある新聞―。「私の」新聞と言える新聞―。それならお金を払うだろうな、と思う。

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 以下は新聞協会報3月9日付の掲載記事に若干付け足したものである。

コンテンツ有料化と英新聞(上)

 インターネット上の記事を原則無料で提供してきた英新聞界が、有料化導入志向を強めている。昨年8月、米メディア大手ニューズ・コーポレーションが英新聞数紙を含む傘下の新聞サイトに有料閲読制を取り入れると宣言したのが一つのきっかけだ。英各紙サイトの有料化への動きと、新たな収入源になると期待がかかるスマートフォンや電子書籍閲読端末への取り組みに注目した。

 英国の新聞社サイトは、有料で電子版を提供する経済紙フィナンシャル・タイムズを除き、原則として過去記事も含めて無料でニュースを提供してきた。テレビ受信料で活動費をまかなうBBC(英国放送協会)が無料で提供するBBCニュースの存在やグーグルニュースをはじめとするニュースアグリゲーターサイトの人気が背景にあった。

 しかし、メディア環境の激変と不景気による広告収入の縮小から、有料化が現実味を帯びてきた。ニューズ社による傘下英紙サイトへの有料制導入宣言や、米ニューヨーク・タイムズの有料化案も刺激となった。

 大手紙の中で有料化導入を明確に表明しているのは、ニューズ社発行のタイムズ、サンデー・タイムズ、サン、ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙。早ければ4月末にも導入予定だ。各記事ごとに課金するマイクロ・ペイメント方式ではなく、24時間使える「一日パス」や月額購読料の徴収を検討している。

 ガーディアン紙は有料化反対派だが、同紙のサイトのコンテンツの1つで、デジタル・メディアにかかわる情報を配信する「ペイドコンテント」を年間249ポンド(約3万3800円)で提供する案を視野に入れる。

 テレグラフはニュースの有料化を現時点で想定せず、サイトを使っての物品の販売や特定の趣味を媒介とする「有料会員制クラブ」の会員になってもらうなど、eコマースの開発に力を入れている。

 一部の地方紙ではすでに試験的に有料化が始まった。昨年11月末からは286の地方紙を発行するジョンストン・プレス社傘下の新聞6紙がウェブサイトの有料購読の試験提供を始め、220の地方紙を発行するティンドル・ニューズペーパーズ社は、昨年夏の試験提供が好評だったため、40紙のサイトで有料制の導入を計画している。

 欧州他国では、独出版社アクセル・シュプリンガーが傘下の2紙で2月から、また仏フィガロ紙も同月から有料制を開始した。オランダ、デンマーク、ノルウェーなどで300紙を発行するメコム社も近く導入予定だ。いずれの場合も、無料(フリー)記事を残しながら、プレミアム・コンテンツは有料という「フリーミアム」方式をとる。

 有料会員サイトのノウハウを提供するサブハブ・サイトの経営者エバン・ルドウスキー氏は、「有料の壁」導入には有料・無料の二者択一ではなく、無料記事と有料記事の「バランスを上手にとる」ことが成功の鍵とする(ペイドコンテント、2月22日付)。(「下」につづく)

こんな話も:
 ニューズ社の幹部が、ペイウオールと無料は共存できる、と発言
 News Corp executive: paywalls and free model can co-exist

http://www.guardian.co.uk/media/2010/mar/10/news-corp-paywalls-coexist
by polimediauk | 2010-03-11 02:42 | 新聞業界

ジャーナリズムの話いろいろ+欧州事情も


by polimediauk