小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

ロンドンに新しいフリーパーペーが参入か?


メトロのみの独占は解消へ


 ロンドンの鉄道・地下鉄駅構内には据え置きのスタンドが置いてあり、現在のところはフリーペーパーのメトロが独占的に置かれている。無料、忙しい通勤時でも20分ほどで全部が読めてしまう新聞と言うことで、大人気になった。特に、通常の有料の新聞を取っていないような若者、女性が読者層の中心だ。

 メトロを発行しているアソシエーテッド・ニューズペーパー社は、ロンドンの交通局に年間約460万ポンド(約9億円)を支払って、メトロが独占してスタンドを使用する権利を得ていた。ロンドン近辺で週日の毎日、約45万部ほどが出ている。

 午後から夕方になると、同じアソシエーテッド・ニューズペーパー社が発行する、有料の新聞ロンドン・イブニング・スタンダード紙が、別のスタンドで販売される。こちらのスタンドは有料なので販売する人が座る椅子がついている。

 無料のメトロの発行部数が増加する一方で、イブニング・スタンダードの方は部数が下落の一途をたどった。

 挽回するための策として、イブニング・スタンダードの無料版、「イブニング・スタンダード・ライト」を、ロンドン市内の中心地で、お昼を食べに外に出る会社員をターゲットに配布を開始した。こちらは部数が好調に伸び、現在は7万2000部ほどを配っている。

 新たな動きが出てきたのは、先月。ロンドン市長リビングストン氏が、アソシエーテッド・ニュース社だけの独占に疑問を呈した。また、英公正取引機関が、午後の新聞市場がイブニングスタンダードだけに独占される必要はなく、これを他の新聞にも開放するべきとする結論を出した。

 まだまだ広がると見られるロンドンの夕刊紙市場に(ロンドンの新聞はイブニングスタンダードを除き、全て朝刊紙)、新規参入がある日も近くなったようだ。

 ロンドンの交通局は、参入する新聞の入札を受け付け中だ。タブロイド紙のデイリーメイルを所有するリチャード・デスモンド氏が、新しいフリーペーパーを発行することが有力視されている。

 リビングストン市長は、朝のロンドン駅構内での販売独占権がまだメトロのみになっていることに、不満のようだ。イブニング・スタンダード紙、アソシエーテッド・ニューズペーパー社を嫌っている、とも言われている。「午後の市場が開放されたことで、競争原理が働くようになる。朝の市場も(メトロ以外に)開放されることを望む」と報道陣に述べている。
by polimediauk | 2005-04-08 08:00 | 新聞業界