小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


by polimediauk

英総選挙がブログの流行を作り出すか?

答えは「イエス」?

 イギリスではブログがそれほど人気になっていない。

 私の推測では既に様々な意見を表明する機会がたくさんあるので・・と思っていたが、フリーのジャーナリストで季刊誌ブリティッシュ・ジャーナリズム・レビューの編集メンバーでもあるマーク・ホリングスワース氏によれば(年齢は30代後半ぐらい)、「アメリカ人や日本人と比較して、イギリス人は新しいものに対して抵抗がある」という。連絡先を書いてもらうと、名前と電話番号だけを書くあたり、ホリングスワース氏自身が、ネットの利用では奥手である可能性もあるが。ブログのことを話していたら、「ところでブログって一体どういうもの?ホームページとは違うの?」と聞かれたせいもある。

 4月8日付けのフィナンシャル・タイムズ紙に、フィナンシャル・タイムズ・マガジン誌(毎週土曜日発行)の編集長ジョン・ロイド氏のコラムが載っていた。

 ロイド氏は5月5日の英総選挙がブログが広がるきっかけとなる、と見ている。ブログのジャーナリズムの役割をオックスフォード・インターネット・インスティテュートの教授スティーブン・コールマン氏にインタビューし、列挙しているのを読むと、まだまだイギリスのブログが発展途上段階にあることを逆に示すように思った。

 一つ付け加えると、イギリスのメディアは、政治家に対し、政策ばかりでなく性格や私生活に関しての揶揄など、かなり追求が厳しい。ブログが盛んになると、これに輪をかけての報道になり、政治家にとってはさらに厳しい環境となりそうだ。

 一部抜粋を紹介すると:

 「総選挙でイギリスでもブログが広まるようになるだろうが、これはいいことか悪いことか?答えはイエス=いいこと、だ。政治が現在以上に個人的なものになるべきだと思っているならば、だが。」

 「オックスフォード・インターネット・インスティテュートのスティーブン・コールマン教授は、ブロガーは3つのタイプとして広がってゆくとしている。一つは政治オタクで、『自分以外の誰も信じちゃいけないよ』というタイプ。2つめは政治家自身やアドバイザーたちで、普通の人たちとコンタクトを取っていることを示すため、3つめは通常の報道では言いたいことが書けないジャーナリストやジャーナリスト志望の人たちだ。例えば、(野党保守党の党首)マイケル・ハワードのあの声には我慢がならない!といったことが書ける。感情の表現であり、裏づけのない観察だ。決まったルールもなければ制限もない。自分がどう考えるか、どう感じたか、が常に中心になる』」

 「『もしイギリスのブログがアメリカ型として発展していくとしたら、政治家だけでなくメインストリームのメディアもトピックになる。ブロガーたちによれば、真実を語ることを恐れ、本当の話を落とし、事件が過ぎ去ってから記事を書く、とみなしている人たちだ。ブロガーたちは既存メディアのコンセンサス(こうあるべき、というライン)を嫌う。』」

 「ジャーナリストたちがますます政治家を強い調子で批判し政治家の性格から大きな問題を解き明かそうとする報道を続ける中で、ブロガーは、自分にとって物事がどうなのかを問題にする。政治家や政治によって自分がどんな影響を受けるのか、が重要と考える。」

 「コールマン教授によれば、『ブロガーは、ブログを書くことで、自分の考えには人々が耳を傾けてくれるほどの価値があることを確認する。ブロガーは、観客でなくプレーヤーになれるのだ』」。

 「ブログをやっている政治家はあまりいないが、労働党のクライブ・ソーリー氏やオースチン・ミッチェル氏、野党自由民主党のリチャード・アラン氏、保守党のボリス・ジョンソン氏など。ミッチェル氏は、ブログは政治家個人の意見を表明する場所だとしている。」
by polimediauk | 2005-04-09 23:10 | ネット業界