電子書籍を考える+落ち込みが激しい、英新聞
電子書籍の話が日本でずいぶんと盛り上がっているようだ。いろいろ、出版社のほうでも(大手は)どうやって利益を上げるかなどで苦しんでいる(?)ようだが、読み手としては「早く、さっさと、どんどんととりあえずやってほしい」、と思ってしまう。アイパッド用とか、キンドル用とか、リッチコンテンツにするとか、あるいはフォーマットがどうだとか、すごく乱暴な言い方かもしれないが、「どちらでもいいから、早く」という思いが強い。
もちろん、すでに電子書籍はどんどん出ている途中であるけれども、自分が買いたいような本がなぜか入っていないのだ。そう思う方は、結構多いのではないだろうか。普通の本が(アマゾンで買えるような、普通の本)、「常にPDFでも、即ダウンロードできる」のがデフォールトになって欲しいものである。これはそんなに難しいことなのだろうか?無料にして欲しい、なんて言わないから、普通に定価を払って、すぐに本が読みたいのだがー。電子書籍の話は満載なのに、いざとなると、自分が買いたいような本がPDFなど、非常に簡単な形式で買えないのがつらい感じがする。後どれぐらい待てばいいのだろうー?
私が今、電子版で購読しているのが、「プレス・ガゼット」。すでに年間の購読料は払ってある。毎月、「できましたよ」というお知らせメッセージが来るので、間を取り持つエージェントのウェブサイトに行って、自分のメールアドレスとパスワードを入れると、雑誌のPDF版に毛がはえたものが開けるようになる。実にシンプルな作りで、音が出たり、クリックするとどこかのサイトに飛べたり・・といったことはできない。これぐらいシンプルでいいのにな、と思ったりする。
ところで、今日、英新聞の発行部数の数字が出た。(英ABC調べ)。ガーディアンの部数を見て、愕然とした。なんと、20数万部になっている。ついこの間まで、35万部ぐらいだったのに。4大高級紙の中で、一番ビリがインディペンデント(18万部)。これではインディペンデントを笑えない。
そして、各紙の前年同月比の比較をみると、減少が二ケタ台がざらだ。例えばガーディアンは14%減だし、タイムズも同様。テレグラフは18%減なのだ。なんだか涙が出てきそうである、もし編集部で働いていたら。どんどん、発行部数がこれほど大きく減少しているとは。この下落傾向が止まるかどうか?止まると見ている人は内部ではいないはずだ。なんと、意気消沈な状況であろうか。紙媒体があまりにも急激に下落しているので、本当に生き残りレベルになってきたな、と思う。
前に、出版コンサルタントのダンカン・クロール氏に話を聞いたとき、もし電子版を提供するなら、「電子版を有料にして、紙媒体は無料にすること。紙はおまけにする。そうしないと、電子版の価値があがらない」と言っていた。
タイムズの有料版を支持するわけではないが(新聞のウェブサイトはすべて無料閲読が原則であることを望んでいるので)、一般的に、「電子版にまともにお金を払う・買う」という風に段々、なってゆくのだろうー音楽や携帯アプリのように。電子版を過度に安く提供してはいけないのだろうと思うー今はお試し・トライアル期間としても。
お金のことは横に置いておくとしても、少なくとも、「電子版=本体である」ということが、しっかりと認知されるようにならないと、だめなのかなーと思う。もしそういう意味だったら、紙はなくなるとは思わないけど、「電子版=決して紙の付録ではない=本体そのものです」となるのは近いと思う。
ー英国の主要新聞の発行部数
2010年6月の発行部数と、前月比(%)、前年同月比(%)の順です。
ー平日・日刊有料紙
サン
2,979,999, 1.50, -1.60
デーリーメール
2,902,643, 0.10, -4.93
デーリーテレグラフ
681,322, -2.45, -18.45
タイムズ
503,642,-2.28, -14.77
フィナンシャル・タイムズ
391,864, -2.00, -4.88
ガーディアン
286,220. -4.74, -14.82
インディペンデント
187,135. -3.79, -6.62
ー日曜紙
ニューズ・オブ・ザ・ワールド
2,828,800, -1.05, -6.27
メール・オン・サンデー
1,908,995, -0.50, -7.29
サンデー・テレグラフ
508,706, -0.80, -17.41
サンデー・タイムズ
1,085,724, -2.87, -10.30
オブザーバー
326,821,-3.95, -20.28
インディペンデント・オン・サンデー
157,135,-4.30, -3.29
(英ABC調べーフィナンシャルタイムズは世界中での数。他はほぼ英国内。)