小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


by polimediauk
プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る

英国で、電子書籍の印税を巡る戦い

 日本の書籍の印税は10%・・ということを、佐々木俊尚さんのツイッターか「電子書籍の衝撃」のどちらかで目にした。

 英国(米国も?)は著者取り分が50%だそうである。これを聞いて、私は非常に驚いた。例えば日本語と英語で本を書いた場合、日本語では本当にせっせと大量に売らないと、なかなかまとまった収入は期待できない。英語だと半分なのだから、非常に効率が良い稼ぎ方になるだろうーあくまでも仮定の話だが。(追記:8月7日:著者取り分や印税の話は、ここで言うほど単純比較できるものではないことが、コメントを残してくださった方のご指摘で分かってきました。まず①日本と海外では印税計算に掛かる母数が違う。日本の場合「印刷」部数×定価×著者印税率だが、海外の場合「実売」部数×定価×著者印税率、となるのが主流②比較の対象が違うのではないか③例えば卸値をベースにして計算すると、日本とほぼ同じとなる可能性がある、④個々の契約や販売体制が違うので、%の違いにのみ注目しても、あまり意味がないーなどが指摘されたことです。単純比較はできないと思いつつも、数字をやはり知りたいようにも思います。紙と電子本の価格体制、ロイヤリティー体制に関して、情報を整理して、近く改めて書きたいと思います。

 ところが、電子書籍の場合、これが25%に下がるのがザラなようだ。そこで、著者(そして作家のエージェントたち)が、これを何とか50%にあげようと、戦いが起きている。

 エコノミスト The Day of the Jackal
http://www.economist.com/blogs/prospero/2010/07/andrew_wylies_publishing_deal_amazon

 何でも、出版エージェントのアンドリュー・ワイリーという人が、アマゾンを通して、直接電子書籍を売ることにしたらしい。同氏が手がけた作家はフィリップ・ロス、サルマン・ラシュディー、ジョン・アップダイクなど著名な人がたくさんいる。ワイリー氏は、通常の出版社を通して売ると、電子書籍での著者の取り分が少なくなるので、電子出版専門の出版社を自分で立ち上げ、アマゾンと2年間の契約をした。これに対し、大手出版社ランダムハウスは、もうワイリー氏とは仕事をしない(問題が片付くまで)と言っている。

関連記事
http://www.thebookseller.co.uk/news/124047-agent-andrew-wylie-launches-e-book-list-on-kindle.html
http://www.thebookseller.co.uk/news/124089-page.html

 英国の「作家協会」のトム・ホランド氏は、英国の書籍市場で電子書籍は「まだ1%ぐらい」だが、今後どんどん伸びると見ており、「25%」という数字は低すぎるという。(メディアガーディアン報道、12日付)

 教育分野の出版社ピアソン(でもエコノミストやFTが傘下にある)のトップ、マジョリー・スカルディノ氏が、中間決算発表時にこの点について聞かれ、「現在は過渡期だが、印税は上がるだろう」と述べている。

 ただし、スカルディノ氏によれば、紙や印刷など経費は、本の価格の「25%」程度だそうで、電子書籍になったからといって、ものすごく大幅に経費がカットされるわけではない、と釘をさしている。それでも、電子書籍の「正当な印税」を払うべきだという考えを述べた。・・・ということはつまり、25%のままではない、ということだろう。

 さて、日本は一体どうなるんだろう?

                       ****

日本の印税の詳しい話:本の印税ってどのくらい?
http://homepage2.nifty.com/osiete/s653.htm

追加情報:紙媒体:50%、電子書籍:25%の該当箇所をペースト。
上のエコノミスト記事内:
In particular, in contracts for works produced since agents started discussing royalties for electronic books, publishers have at most been willing to offer authors 25% of net revenues on e-books, compared with the typical 50% split for printed books.

作家団体:オーサーズギルドの文章から「4」の一部
http://www.authorsguild.org/advocacy/articles/wylie-amazon-and-random-house-battle.html
Knowledgeable authors and agents, however, are well aware that e-book royalty rates of 25% of net proceeds are exceedingly low and contrary to the long-standing practice of authors and publishers to, effectively, split evenly the net proceeds of book sales.

by polimediauk | 2010-07-31 16:26 | ネット業界