小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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新しい高級紙i(アイ)創刊

新しい高級紙i(アイ)創刊_c0016826_209416.jpg 新しい高級紙i(アイ)が、今日から発売になった。インディペンデント紙の軽量版、といった位置づけである。(以下のサイトからアイとインディペンデントの紙面が一部見れる。)

http://www.guardian.co.uk/media/gallery/2010/oct/26/the-independent-i-newspaper#/?picture=368056284&index=0

 アイを開いてみた感じでは、雰囲気が無料夕刊紙ロンドンペーパーやロンドンライト(どちらも今は廃刊)に似ている。どことなくポップな色使いや、画像・イラストで見やすく、読みやすい。「軽さ」が強調されている。

 内容は、親(あるいは兄貴?)となるインディペンデント紙から記事をピックアップして、これをアイ用に味付けしている。同じ記事でも、レイアウトがインディペンデントとアイではまったく違う。別々のレイアウトデザイナーが見ているのかもしれない。

 高級紙でありながら、忙しい人がサット読めるように軽くしてある、しかしかといって、中味の質は高い=というのが、最大の売り。その「軽さ」が最も顕著なのは、価格である。本紙となるインディペンデントは1ポンド(130円ぐらい)だが、アイは20ペンスなのだ(27円ぐらい)。

 忙しい人が朝、外で読む新聞としては、無料紙メトロがある。メトロと比較すると、アイはデザインがもっと洗練されているし、元ネタがインディペンデントから来ているということで、読み応えがある(はずである)。無料経済紙CITY AMも、アイのライバルにはならないだろうが、とりあえず、朝、無料で読める。

 午後になると、無料の夕刊紙イブニング・スタンダードがある。スタンダードは、ロンドンライトやロンドンペーパーが存在していた頃は有料(1部50ペンス)だった。無料になった頃から、特に著名人のゴシップ記事が多くなった感じがする。

 私がもし毎朝通勤するようだったら、何を買うだろう?20ペンスというアイの価格は非常に魅力的である。いまどき、20ペンスで買えるものはほとんどないーちょっとしたスナック菓子でも40ペンスぐらいはするのである。

 芸能ゴシップ記事を増やさずにいれば、高級紙としてアイは一定の位置を持つような気がする。ただし、今度は本体のインディペンデントがどうなるか?という問題になるのだが。
by polimediauk | 2010-10-26 20:09 | 新聞業界