小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「なぜBBCだけが伝えられるのか」(光文社新書)、既刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)など。


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ガーディアンが携帯アプリに購読制導入へ

 ネット上でニュースを無料提供する方針を維持してきた英ガーディアン紙が、携帯アプリに購読制を導入することになった。

http://paidcontent.co.uk/article/419-guardian-flips-iphone-app-to-subscription-model-except-in-u.s/

 英新聞の主要ウェブサイトは閲読有料派(タイムズ)と無料派(そのほかの大部分)に分かれているが、無料派の筆頭ともいえるガーディアンが、唯一、例外として昨年導入したのが、携帯アプリの有料化だった。これは一回こっきり、このアプリを購入すれば、その後、追加として料金を払うことがない仕組み。

 アプリの代金は2.39ポンド(約312円、現時点)で、アイチューンズで買える有料ニュース・アプリとしては(アプリは無数にあるが)、必ずしも安くはなかった。しかし、昨年12月の発売後、有料ニュースアプリのカテゴリーですぐにトップの座についた。

 このアプリを買わなくても、携帯でガーディアンの記事は読めるので、「ネット上でニュースを無料で出す」というガーディアンの基本原則は守っていた。

 しかし、ペイドコンテンツ(上のアドレスの記事)が報じたところによれば(ペイドコンテンツはガーディアンの一部)、一回限りの支払いで得られる収入の限度にそろそろ達していたようである。そこで、来月から、半年間で2・99ポンド(約390円)、1年で3・99ポンド(約521円)の購読料を課金することにしたのだそうだ。(円換算にしてみると、ものすごく安い感じがする。)

 デジタルコンテンツの閲読を購読制にして利益を上げる、というのはなかなかおいしいやり方のようで、経済紙フィナンシャル・タイムズが成功しているが、一般紙がウェブサイトに課金するというやり方は、どこも(タイムズ以外は)及び腰だ。

 しかし、ウェブサイトに有料購読制を導入するのは拒んでも、携帯での購読制なら「アリ」―。ガーディアンは自分たちなりのやり方で、このデジタル購読料(サブスクリプション)ビジネスに参入してきた、ということなのだろう。

 それでも、ガーディアンは「デジタル・ニュースを無料で提供している」という看板をすぐには下ろさないであろう、ウェブでもまた携帯でも、確かに無料でアーカイブも含めたすべてのコンテンツが読めるのだから。

 新規の有料購読アプリは、米国以外の世界各国で導入される。米国では広告収入でカバーする、つまり無料のようだ。
 
 ペイドコンテンツによれば、昨年12月に発売となった有料携帯アプリは20万5000回ダウンロードされた。これは48万9950ポンド(約6390万円)の売上げになるという。アップル社のコミッション分を取ると、34万2965ポンド(4470万円)になるそうだーあまり大きな収入ではない感じがするが、どうだろう?

 携帯電話での購読制アプリの販売は、先週、すでにメールオンライン(大衆紙デーリー・メールとその日曜版メール・オン・サンデーの内容が入る)が6ヶ月で4・99ポンド、1年で8.99ポンドの販売をアイフォーンアプリとして提供しだした。メールオンラインよりは、ガーディアンの予定アプリは値段が低いことになる。

 ガーディアン、あるいは、メールの記事が読みたい・・ということで、継続して読者が購読料を払い続けるかどうかー?ペイドコンテンツは、「ブランドへの忠誠心を試すテストだ」と書いている。


 

 
by polimediauk | 2010-11-05 20:33 | 新聞業界