小林恭子の英国メディア・ウオッチ ukmedia.exblog.jp

英国や欧州のメディア事情、政治・経済・社会の記事を書いています。新刊「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)には面白エピソードが一杯です。本のフェイスブック・ページは:https://www.facebook.com/eikokukobunsho/ 


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BBCのコメディー番組QIをどう考える?-私なら、笑って無視

 少し前に、ツイッターで、「QI」という番組の英国での評判を聞かれ、「?」と思っていたら、翌日、その意味がわかった。日本の新聞が一斉にこの番組について、書いていたのだ。

 ブログサイトBLOGOSでも、盛り上がっていた。皆さんも、もうすでにご覧になったことと思う。

BBCの二重被爆者嘲笑問題に対する反響について
http://news.livedoor.com/article/detail/5289579/
質の悪いエゲレスジョークとか笑い飛ばしてれば良いんだよ
http://news.livedoor.com/article/detail/5289342/
英BBCお笑い番組に激怒する日経社説
http://news.livedoor.com/article/detail/5288149/

 私はこの間、主にツイッターでいろいろ書いたり、考えたりしていたのだが、あっという間にこの番組の「問題」クリップの和訳が行われ、驚いてしまう。

BBC「QI」の出演者たちは実際に何を言っているのか? これが「被爆を嘲笑」?http://blog.goo.ne.jp/mithrandir9/e/5d8249376ac2592288a873dcbf11e412

 また、詳しい解説は、これまでに何度かご紹介させていただいている、メモ魔さんの

ポターズ・バー鉄道事故、the wrong kind of snow, そして「二重被爆者」――バラエティ・クイズ番組QIで何が語られ何が笑われていたか

http://nofrills.seesaa.net/article/182037095.html

 さらに、BBCとガーディアン記事もある
BBC apologises for Japanese atomic bomb jokes on QI quiz show
http://www.guardian.co.uk/media/2011/jan/23/bbc-apology-atomic-bomb-jokes

BBC apologises for Japanese atomic bomb jokes on QI
http://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-12260577

 ・・・と、ここまで多くの方があらゆることを議論して下ったので、私としては特に付け加えることはないのだけれどもーーもし良かったら、@ginkokobayashiで過去ツイートをご覧くださいーー、せっかく、通常英国のメディアを常に見ていること、在英の日本人であること、また、小林恭子という一人の人間として、どう見るか?ということを書いておいてもいいかも、と思った〔書いてみたら、長くなったことをお許しください)。
 
 QIはコメディークイズ番組で、問題のクリップはほんの3分ほど。そこで私が思ったのは


①自分は、笑ってしまった。
②被爆者や原爆を「嘲笑」しているどころか(一部の日本のメディアではそういわれていた)、「日本ってすごいね(鉄道がきちんと動く)」「被爆者の山口さん、命は助かって、良かったね」というメッセージが伝わってくる、むしろ日本に関してポジティブなクリップだと思った
③ある番組に関して、不満・苦情がある時、大使館(政府、国家権力)を通じてやるのはどうかな、と。もちろん、個人として何をしようと自由だけど、今回の場合、そんなハナシじゃないでしょ、と。
④日本の評判とか、名誉とか、いろんなものが侮辱されたとか、傷ついたとかと、日本人(のある人)が思って、集団として、大使館とか政府を通じて相手国に抗議するとき、気をつけたいのは、全く逆効果になる可能性があることを留意すべきではないか、と思った。
⑤BBC=英国、怒っている私たち=日本国、だから「日本の大使館へ」というのは、やや短絡過ぎないか、とも。BBC=英国じゃない。
〔以下は、すごく重要だと思うので、色を変えます。)

⑥上の話とはまったくの無関係な問題として、「もし」、被爆・原爆問題を外国のコメディー番組で、「どんな形にせよ」(つまり誉める以外は、ということだけど)取り上げること、これ自体が「けしからん」と思っているとしたら、これは1つの考え方だけど、これを相手(=自分ではない人物、自分とは違う価値観を持つ人物)に認めてもらうには、相当の覚悟が要るよ、と。
⑦現実的には、⑥は不可能だと思う。世界中の「懸念」を考慮に入れて、全部カバーして番組が作れるわけがない。
⑧もし被爆・原爆問題に関してのみ、ここで語るとすれば、被爆・原爆に関して、「特にひどい行為であった」と考える国は、世界中全部ではない、ということーこれが現実。
⑨⑧の一つの理由は、相手側の「知識が少ない」「無知」だから、では必ずしもなく、相手側が、つまりここでは例えば英国側が、「原爆投下の犠牲者」としてこちらが発言をしたり、相手に譲歩を求めたりすれば、「じゃあ、戦時中の日本軍による捕虜の取り扱いはどうなのか」と考える人も結構いるから。つまり、歴史や戦争の解釈はその国によってずいぶん違うのであるー当たり前のことを言って、すみませんがー。自分の痛み(=原爆のひどさ)が、他者にストレートに「分かってもらえない」(いくら知識を得てもらっても、感情的に認めないことも含め)場合も、世界ではある、ことを知ったほうがいいような気がしたーもう知っている人はたくさんいると思うが、あえてー。
 

 ・・・で、結局、どうしたらいいのか、今回の件は?

 先のガーディアンの記事でも紹介されていた、「アワ・マン・イン・アビコ」ブログが言うことと、私の結論は似てくる。(以下のブログは英語だが、そのうち誰かが訳してくれると思う。)
http://ourmaninabiko.blogspot.com/

 そして、上のコラムと「質の悪いエゲレスジョークとか笑い飛ばしてれば良いんだよ」と同じ考え。

 つまり、「ガハハ」と笑って(笑いたければー)、あるいは「フン、バーカ!」と思って、さっさと前に進むことである。

 このジョークで気をもんで、抗議していたら、体がいくつあっても、たまらないーそれが英国である。(といって、「英国ジョークを分かりなさい」とあなたに強要しているのではありません。)

 まじで、英国のもろもろのことを自分の目と頭を使って判断して、今回は「気にしなくてもいいレベル」と私が判断している、ということなのです。(あくまでも私の見方です。)

 最後に:このジョークの意味合いは、文章だけ読んでもぴんと来ないかもしれない。また、意味が細かく分かっても、それでもぴんと来なかったり、不愉快に思う人もいるかもしれない。でも、もしあなたが「被爆・原爆をコメディー番組のトピックに選んだこと」自体を問題視ししているのでなければ、ほんとーに、ほんとーに、このクリップはたいしたことではないのことなので、意味がぴんと来なくても、無視して、次に進むことが幸せへの近道だと思う。
by polimediauk | 2011-01-24 09:06 | 日本関連